「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛・企画SS集

●『バレンタインの約束』・後編(2012バレンタインSS)

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「だってぇ、まなぶがお約束守れなくても、みはる、まなぶに“針せんぼん”のませたりしないけど、ゆびきりしてお約束を守らなかった子は、かみさまに指を切られちゃうんだよ? まなぶ、かえってこられなかったらどうするの? まなぶが指切られちゃうのイヤだもん……。だから、ゆびきりしないもん……」

 学は絶句する。
 そしてエリは「ウチの子、純真っ! 可愛いっ!」と思いつつも、噴き出してしまいそうな口を慌てて手で押さえた。

 笑ってはいけない。
 美春は必死だ。

 学が居ないのは嫌。帰って来て欲しい。でも、約束の指切りは出来ない。
 小さな美春の心は大混乱だ。 
 その大混乱を表す様に、いつまでも涙の小川は流れ続ける。

 だが学は美春の手をとり、もう一度小指を絡めた。美春はビクリと身体を震わせて驚くが、学は理知的なその顔に満面の笑みを湛えたのだ。
「じゃぁ、信じて? 美春」
 優しく優しく。彼は美春に言い聞かせる。
「僕が、絶対バレンタインデーには美春の傍に居るって、信じて。そうしたら、指切りも不安じゃないだろ?」
「ぜったい……? ずっと? おっきくなっても?」
 今回の事で不安になったのかもしれない。美春は今年の場合だけではなく、これから迎え来る全てのバレンタインデーが一緒である事への確約を求める。
 もちろん、学は笑って即答した。
「絶対。大人になっても。ずっと一緒だよ」

 学の言葉に、美春の涙が止まる。小川を作っていた頬は、ほわりとピンク色に染まった。
 繋いだ小指が小さく揺れる。再び学の綺麗な声が指切りの歌を口ずさみ始めると、美春の可愛らしい声が後を追った。
 声を合わせて約束事を歌う二人を、エリは嬉しそうに見詰める。しかし、歌の最後を聴いて再び噴き出しそうになり、掌で口を押さえた。
 歌の最後に「ゆびきった」で締めた学に対して、美春は大きな声で叫んだのだ。
「ゆび、ぜったい切らせない!!」

 指を放し、美春は力一杯学に抱き付く。

「まなぶっ、だーいすき!」

 バレンタインデーは絶対に一緒。
 成長しても、大人になっても。

 小さな二人が交わした“ゆびきり”は、きっとずっと繋がったまま、守られ続けて行く……。


*****


「考えてみると、バレンタインって、いっつも一緒にいるよね」
 恍惚に冷めやらぬピンク色の頬。薄明かりの中で確認するその色は、見ている方にも新たな欲情の火を落とす。
 白いシーツに栗色の髪を乱して横たわる美春を見詰めながら、学はその頬を撫でた。
「いるよ。当たり前だろ。俺は昔から、美春にチョコを貰わなきゃバレンタインじゃないって思ってたしな」
「今日も?」
「もちろん。朝から仕事よりチョコ優先だったし」
「嘘っ。バレンタインのプレゼントに『エッチな恰好して』とか要求したくせに」

 社会人になって初めてのバレンタインデー。専務室で少々盛り上がってしまった二人ではあったが、終業後無事ホテルへ移動。
 美春からチョコも貰い、学は“バレンタインのプレゼント”を堪能した。――ベッドの上で。

 頬を撫でる学の指をくすぐったがり、肩を竦め笑う美春は、悪戯をしてくる彼をちょっと冷やかす。
「昔からそうだよね。学生時代も、バレンタインデーって、学、一番に私のところ来てチョコレート奪って行ったでしょ。で、夜も私の部屋に遊びに来てて、絶対夜遊びしに行かなかったよね」
「行く訳ないだろ」
「どうして行かなかったの? あの頃って学くんは超モテてて、ぶぃぶぃ言わせてた頃じゃない。あ、モテ過ぎてパニックになるからかなぁ?」
「おまえなぁっ」
 調子に乗ってからかってくる美春に覆いかぶさり、学は悪態をつく唇を塞ぐ。

「覚えてないのか?」
「何が?」
「いや、いい」
 彼女の唇を啄みながら、学は幼い頃の思い出を胸に仕舞った。
 幼稚園年少の頃交わした思い出。覚えていなくても無理はないのだ。

「でもね、私は嬉しかったのよ?」
 美春が口を開くと啄む唇が止まる。美春は目の前にある学の瞳を見詰めながら、藍色の瞳を幸せそうに潤ませた。
「好きな人に『好きだ』って伝えられる日に、毎年学は一緒にいてくれた。片想いだと信じ込んでた昔も、私には最高に幸せなバレンタインだったわ」
 両想いなのに、お互い片想いだと信じ込んで過ごしていた頃の思い出は、今になってはあまりにも焦れったくて、くすぐったい。
 そんな頃を幸せだったと感じてくれている美春が可愛くて、学は彼女の白い肌をきつく抱き締めた。
「バレンタインに、好きな女の傍にいたいのは当たり前だろう」
「これからもずっと一緒よ?」
「当たり前だ。一生一緒だろう?」
 美春は学の身体の下で小指を出す。
「学、指切り」
「ん?」

 随分と子供っぽい事をすると思いつつも、幼い頃の思い出が頭をよぎるが、それは決して嫌な事ではない。
 学は美春と身体を重ねたまま、出された小指に応えた。
 学の深いバリトンが可愛らしい童謡を口ずさむ。美春の声もそれを追った。
 最後のフレーズで、学は目を見開いて美春を見る。彼女は言ったのだ。楽しそうに。

「指、ぜったい切らせないっ」

 重なるのは幼い頃の思い出。
 学を信じて結んだ約束の指切り。
 
 一生一緒にバレンタインデーを過ごそうと約束した、指切り。

「みはるっ、おまえっ、覚えてるんじゃないかっ!」
「忘れる訳ないじゃないのぉ、いやーねぇ」

 クスクス笑う美春をもう一度抱きしめてキスをすると、思い出の中の無邪気さを漂わせ、大人の彼女がバレンタインデーにピッタリの言葉を囁く。

「愛してるわ。学」

 大人の二人が交わす“指切り”。

 愛の言葉と共に守られ続ける、約束のひとつ――――。





  『バレンタインの約束』

     <END>






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~ Comment ~

す・て・き!!!

玉紀先生!!!!!
やっぱメインは最高ですね!
このままこの二人は永遠に激アマ状態ですね!!!
だから素敵なんです!
だからこの二人なんですよね!
いろんな試練を乗り越えた、また乗り越えている二人だからこそ・・・
これからも楽しみにしています!

Re: す・て・き!!!(hiromiさんへお返事です2/14)


 hiromiさん、こんにちは!

 メインは一生、永遠に激甘ですとも!!

 例えこの先、どんなとんでもない事が起ころうとも!……おこるんかい?(笑)

 一生二人は離れないんです、って感じさせるお話を書くのが大好きです。^^
 また書いちゃった時は、二人の激甘を感じて頂けると嬉しいです。^^

 有難うございました!


直さん、こんにちは!

ご無沙汰しちゃってすいません<(_ _)>オボエテルカナ?
毎日拝見してるのにー、なかなかコメントできなくて…。いや、言い訳ですね。すいません。


リトルの美春チャンはホント可愛いですよねー
エリサンの気持ちが解るわぁ~
この二人はずっとこんななんだろうなぁ~。激甘ですね( ´艸`)コノママデイテ

大人な2人のバレンタイン。無事に予定していたホテルに行けてよかったです(笑)


本編はいよいよ第3章ですね。一番読みたかった章だと思います。終わりが解っていても多分辛い。ハンカチ用意しなきゃー。
本編の方も各章にコメントしたいと思っております。気づいたら読んでくれると嬉しいです。


ではではまた(*^-^*)ワスレナイデネ

みわさんへお返事です2/21


みわさん、こんにちは!

 あああっ、みわさん、なんて事をっっ。
 「覚えてるかな?」なんてっ。
 私の方が「捨てられちゃったかな」(;_:)ってうじうじしてたのにっ!(笑)

 バレンタインSS,読んで頂けて嬉しいです。^^
 迷ったんですよ~。リトルでやろうか、大人バージョンでやろうか。
 リトルは可愛いけど、やっぱりバレンタインだから艶も欲しいし。(笑)
 結果、こんな感じに……。
 専務室で盛り上がってた二人も、どうなったか書きたかったですしね。^^

 今日から、本編の第3書が始まっています。
 ちょっと辛い事の多い章ですが、楽しんで頂けるように頑張りますね。^^

 有難うございました!!

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