「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

第2章≪禁戒の愛≫・15 *R18

 ←第2章≪禁戒の愛≫・14 →第3章≪婚約破棄≫・1

 ――神様が咲かせる藤。――
 辻川家の温室に造られた大きな藤棚は、そう呼ばれている。
 この藤は、枯れる事が無い。一年中花を咲かせ続けているのだ。
 設備が整った温室に有ると言う理由だけでは、ここまで見事な花を咲かせ続ける事は出来ないだろう。
 それ故に、いつの間にかそう呼ばれるようになった。

 この藤棚の下で、紗月姫と神藤は出会った。
 神藤は十二歳。紗月姫はまだ、産まれて一ヶ月。それでも二人は、潜在意識下で深く惹かれ合ったのだ。
 名前も無く、生きる意味さえ知らなかった少年に、紗月姫は傍にいる事を命じ、名前を与え、生きて行く意味を与えた。
 心から守りたいと思える者が有る幸せと共に……。

 そして今、二人はその藤棚に居る。
 藤が見たいと言った、紗月姫の望み通りに。
 いつものように紗月姫は藤棚の下で、藤のさざめきを聞きながら花びらの囁きに耳を傾ける。そして神藤は、藤棚の外からそんな彼女を見守るのだ。
 藤は今日も、優美な姿を揺らめかせ、二人を見守っているかのよう……。

「花を、美しいと思ったのは初めてでした……」
 藤棚を見詰め、神藤は心の片隅に大切に仕舞われた思い出を口にする。
「この藤を見た時に、この空間に有る物全てが清澄(せいちょう)で美しく感じられました。あんな感覚は生まれて初めてだった。以来私は、その感覚を常に感じ続けている……。貴女の周囲に……」

 彼が見詰める藤棚、その視界の中には、重い鎖で繋がれた彼の運命を変えた少女がいる。
 彼の周囲に渦巻く空間を全て浄化させた、彼の“世界”が。

「お嬢様は……、私の天使です……」

 藤がさざめく……。
 強い風にあおられたかのように花びらが舞い、二人の間を漂い抜けた。それはまるで、二人の姿をお互いの視界から隠そうとしているかのようだ。
 それでも神藤は紗月姫へと歩み寄り、そっと彼女を抱き締める。
「神藤……」
 うっとりとした甘い声が、紗月姫の口から漏れた。彼女は彼の腕の中で、いつもとは全く違う感情に襲われている。
 彼の腕で抱き締められる事で、鼓動は高鳴り、体温が上がって陶酔感に支配される。擁護され慣れ、触れ慣れた腕であるはずなのに、今はこの腕が花恥ずかしいほどに愛おしい。

「お嬢様……」
 神藤の愛しげな声が、鼓膜から身体中に沁み渡って行く。
 この声もこの腕も、間違いなく彼女を求めているものだ。

 この声で呼ばれ、この腕で求めてもらう事を、叶わぬ夢としながら、どれだけ紗月姫は望んでいた事だろう。
 そして神藤も、懊悩たる思いで己の心を偽りながら、紗月姫を感情のままに抱き締める事を、どれだけ望んだ事だろう。

「神藤……好きよ……」
 あんなにも苦しめられ続けていた禁句が、スルリと口から出てしまう。
 例え口から出ても、それは許される事ではない。分かってはいても言葉を止める事は出来なかった。
「好き……、神藤が、好きなの……」
 溢れる言葉は、紗月姫を強く神藤に抱き付かせる。だが、口にすればするほど、辛い現実も思い出されるのだ。
 こんなに好きなのに、こんなにも愛しくて堪らないのに……。
 二人は、手を取り合う事は出来ない……。

 決して、結ばれる事は許されないのだ。

 二人は強く強く抱きあった。
 離れたくない。やっと通じ合ったこの想いを、捨てたくは無い。
 しかし、それが叶わぬ夢である事を二人は知っている。
 それでも……。――
「……離さないで……お願い……。私を、離さないで……」
「離したくはありません。このまま、ずっとお嬢様をこの腕で抱いていたい……」
「抱いていて……ずっと……。神藤……」

 口に出さずにはいられない。
 望まずにはいられない。
 やがてその叶わぬ想いは、二人を禁断の扉の前へ導く。

 藤の花びらが狂ったように舞い散る中、二人は唇を合わせ、降り積もった花びらの中へと倒れ込んだのだ。

「……貴方の……ものにして……」

 熱い吐息と共に、紗月姫の唇の端から零れるのは罪の至宝。

「……神藤以外に……触れられるのは嫌……。私は……、貴方以外要らない……」
「私などと一緒に……罪を背負って頂けるのですか……?」
「神藤じゃなくては、嫌よ……」

 唇同士が囁き合い、互いのみを映す瞳が想いを伝え合う。再び唇が愛を交わし始めると、少しずつ紗月姫の衣服は奪われていった。
 藤の花びらの中に、漆黒の黒髪を肌に散らした白い肢体が晒される。奪われたワンピースの上にダークグレーのスーツが重なった時、透き通る肌を隠す様にもうひとつの身体が重なった。
「神……藤……」
 か細い声を発する喉に、神藤の唇が這う。ピクリっと震えた身体をゆっくりと弄りながら、彼は紗月姫に問いかけた。
「怖いですか?」
「怖くは無いわ……」
 紗月姫は即答をすると、胸元に下りた神藤の頭を両腕で抱く。彼の柔らかな癖毛を腕と胸に感じ、幸せに涙が浮かんだ。

「だって……、やっと、神藤のものになれるのだもの……」

 いつもは衣服の下に隠された乳房に手を添え、紗月姫を驚かせないよう、やんわりと揉み込む。柔らかく掌に吸い付いて来る肌に魅了され、神藤はそれを唇でも感じようと、薄桜色の頂を口に含んだ。
「……ハッ、ァ……んっ」
 吐息と共に吐き出された、小さな快感の証。だがそれは、神藤をどんどんと昂らせる。

 大人し目だった突起が口腔内で硬く立ち上がって来るのが分かる。神藤はそれを舌先でくすぐり、唇で吸い付いた。
「あっ、……うンっ!」
 彼の頭を抱いた指が柔らかな癖毛を掴み、上半身は電流を流されたかのように小さく震える。いや、確かに電流は流れた。神藤が唇で吸い付いた場所から、全身に快感の電流が。

「しんど……ごめ、なさい……、私……、んっ、ぁっ……」
 謝りながらも、紗月姫の身体は始終ピクリピクリと跳ね上がる。神藤の指が紗月姫の身体をなぞるたび、唇が吸い付くたび、初めて経験する快感に戸惑う身体が、躊躇いと期待の悲鳴を上げるのだ。
 下唇をキュッと噛み、喉で呻く紗月姫を見て、神藤は謝罪の意味を悟る。少し強めに乳房を握り、指先で乳首を軽く捻ると彼女の唇は堪え切れず開いた。
「やっ、ぁあん……っ」

「我慢しないで下さい。……お嬢様の綺麗な声を、私に聞かせてはくれないのですか?」
「……だって……、恥ずかしいわ……」
「私しか聞いてはいませんよ……」
 神藤は緊張して強張る両脚の間に膝を入れ、程よく開いた中央の薄い茂みに掌を当てる。紗月姫の身体が一層大きく震えたが、彼はそのまま中指だけを渓谷へと落とした。
「あっ……、しんど……っ」
 羞恥に紗月姫が慌てても、彼の指はそのまま沈む。そしてそこに紛れも無い快感の証を見付け、嬉しそうに指先でゆっくりと縦線を擦った。
「あっ……ぁぁあっ……、だ、め……」 
 
「感じて下さったのですね……。嬉しいです……」
 女性の部分で滑らかに動く指。これは、紗月姫が神藤の行為に感じた証拠だ。
 その事実が、神藤にはとても嬉しい。身体と共に心も昂り、もっともっと紗月姫を感じさせてあげたい気持ちに駆られる。
 だが、初めての彼女に煽り過ぎは禁物。神藤はその手でそのまま脚を開かせた。
 次に訪れる行為を察して、紗月姫の手が神藤の腕を掴む。少し不安げに潤む瞳を見詰め、神藤は優しく微笑んだ。
「怖いですか?」
 最初に訪ねた言葉をもう一度繰り返す彼に、紗月姫も同じ言葉を返す。
「怖くないわ……。貴方のものにしてって、言ったでしょう……」

 唇同士が触れ合う。
 それと同時に下半身が触れ合った。
 熱くなった神藤が、紗月姫をゆっくりと満たしていく。しかしその幸せであるはずの行為は、初めての行為であるが故に紗月姫の身体を硬直させた。
 身体に感じるのは幸せの痛み。
 漏れそうになるのは苦痛の声ではなく、悦びの叫び。
 唇から紗月姫の吐息を全て吸い取って、神藤は深く彼女を貫きひとつになる。

「しん……どう……。好き……あっぁ……」

 ゆっくりと揺さぶられながら、紗月姫は何度もその言葉を口にした。
 十八年間、禁句とされていた言葉。口にしたくて堪らなかった想いを。

「愛しています、お嬢様……」
「神藤……」

 藤のさざめきも、花びらの囁きも、二人には聞こえない。
 耳に聞こえるのは、愛しい人の吐息。
 身体に感じるのは、最愛の人の愛情。

 だがそれは、二人の禁戒。

 禁戒を冒し、二人は愛を交わす。

「神藤……愛しているわ……」

 舞い散る花びらは、哀し気に二人の上へ降り積もる。

 罪を犯す二人を、運命から隠そうとするかのように……。――――






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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 第2章≪禁戒の愛≫
 今回の第15話でラストになります。

 第2章は紗月姫ちゃんサイドのお話がほぼメインになりました。
 メインの出番がなかなか回って来なくてスイマセン。
 でも、ここの部分は、これからのお話を進めて行く大切な部分になります。
 紗月姫ちゃんの初体験シーンは、別作の方でもありましたが、結構変えてみたつもりです。^^
 お嬢様なので。(笑) 控え目に、綺麗系を目指してみましたが、如何でしたでしょう。(訊くな(*ノωノ))
 ……え? 足りない?(^_^;) やっぱり?←

 紗月姫ちゃんと神藤さん。
 ついに想いを交わし合ってしまった二人ですが、もちろんこのままではいられません。
 学君と美春ちゃん同様、二人にも試練が待っています。
 誕生日パーティーまでの間に、メインにはもうひとつ、立ち向かってもらわなくてはならない事が有ります。

 では、次回より。
 第3章≪婚約破棄≫
 に、お付き合い下さい。

 宜しくお願いします!

*次回更新は、2月27日からになります。





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chieさんへお返事です2/25

chie さん、こんにちは!

 紗月姫ちゃんと神藤さん、やっと、やっとですよっっ!(///∇///)
 たーくさん、らぶらぶさせてあげたいけど、まだなかなかそういう訳にも行かないんですよね……。;;
 うーん、でも……。
 紗月姫ちゃんの初体験、書くの楽しかった❤(笑)

 紗月姫ちゃんが「煌ぁ……」って言える日まで、まだ長い道程ではありますが、それまで頑張りますので一緒に見守ってやって下さいませ!

 宜しくお願いします。(。╹ω╹。)ノ♥

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