「恋桜~さくら・シリーズ」
恋桜~さくら~・3

桜・5『嬉しいですか?』

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「ひゃっ……!」
 我ながらおかしな声を上げ、私は両肩を竦めた。
「はっ……はじめさっ……」
 戸惑いつつ振り向こうとするけれど、それが出来ない。何故かといえば、髪を寄せたうなじに一さんの唇が触れているから。
「動くな」
「……はっ……はいぃ……」
 静かな声で言い渡され、私はつい従ってしまう。
 条件反射というか何というか、一さんに何か言われても絶対に逆らえないのは、幼い頃から実家のお母さまに施された、大和撫子教育の賜物だと、我ながら思ってしまう。

 そう、例え……。両腕を押さえられて、うなじに吸い付かれているのだとしても。

「くすぐったかったか? さくらのうなじが目の前に有ると思うと、つい我慢出来なくてな」
「……い、いいえ……」
 触れていた時は戸惑うだけだったのに、唇が離れるといきなり頬が熱くなる。普通は逆だと思うのだけど……。
 いいえ、と答えてしまったのも、別に遠慮をした訳ではないの。

 くすぐったかった、というよりも……。気持ち良かったから……。

「どうした、さくら。真っ赤だぞ。気持ち良かったのか?」
 いきなり真相を衝かれて、私は更に赤くなる。恥ずかしさも手伝って、肩越しに振り返りつつ、ついムキになってしまった。
「ちっ、ち、ちがいますっっ。恥ずかしいんですっ」
「何が?」
「何が、って……」
「普段しない格好で、気持ちの良い事をされたからなのか?」

 そんなにハッキリと、真面目な顔で本当の事を言わないで下さいっっ!!

 図星だったのが気まずい。私が無言になって前を向くと、乗っている一さんの膝が震える。どうやら笑いを噛み殺しているらしい。
 ふーんだっ。
 そんな大真面目に意地悪を言って困らせるから、笑い上戸のツボにはまるのよっ。止めてあげないんだから!

 意地悪を考え、意地を張って前を向いていると、一さんの両腕が私を抱き締めた。
「可愛いから怒るな。もっと怒らせたくなるだろう」

 そんな事言われたら……。怒れません。

 いつもの事だけど、完敗した気分。
 怒って拗ねても、私は一さんに敵わない。

「さくら。立って見せてくれ」
 要望通り立ち上がり、一さんの前に立つ。
 今まで上から見下ろしていた私の姿。下から見上げたら、どんな感じ? 制服はどういう風に見える?
 何だか私を見ながらとても嬉しそう。そんな一さんを見ていたら、あまり見られ過ぎて恥ずかしいけれど、私まで嬉しくなるの。
 どうしてそんなに素敵な笑顔で見詰めてくれるの?
 そんなに、制服姿が嬉しいのかしら。

「あの……、一さん?」
「何だ?」
「私、やっぱり、学校に行かせてもらおうかな? そうしたらほら、時々こうして制服も着られるし。何だか一さん、制服姿、気に入ってくれたみたいだし……」
「ああ。確かに気に入った」
「じゃぁ……」
 一さんも気に入ってくれているし、喜んでくれるのなら、時々この姿を見せたいとも思える。
 毎日ではないのだし、学校に通ってみるのも良いだろうか……。

 そんな決断が心の中で形を成して来た時、一さんが立ち上がり、私の腰に手を当てて、ひょいっと彼の目線まで持ち上げた。
「もう一度言うが。行かなくて良い」
「でも……」
 そのまま移動し、ベッドの上に私を座らせる。
「見たい時は着てもらう。私の為だけにな」
 一さんも腰を下ろし、私の長い髪を指で梳く。
 綺麗な切れ長の瞳でしっとりと見詰められ、私の頬は染まりっ放しだ。

「時に、さくら」
「はい」
「脱がしても良いか」
「は……」

 ――――はいぃぃぃ?

 返事をする前に、私はゆっくりとベッドに倒された。
 髪を梳いていた長い指が頬を撫で顎を支え、一さんの唇が重なる。
 ほわりとした気持ち良さに身体を任せていると、身体の線をなぞる一さんの手を感じる。手付きの熱っぽさに、私の胸は熱くなった。

 んー、どうしましょう……?
 まだ就寝の時間ではないし……。
 入浴もしていないし。
 制服もちゃんと脱いで、畳むか吊るすかしておかなくちゃ、シワになってしまうわよね?
 このまま“その行為”に及ぶのは、軽率ではないかと思うのですが……。

 どうでしょう? 一さん。

 心の中で問いかけてみるけれど、もちろんそれが聞こえる訳ではなく、脇ファスナーを開き、上衣を胸の上まで捲くったのは良いけれど、その先を脱がせてくれる気配が無い。
 そのまま彼の手は素肌に触れて……。

「あ、の……、一、さん?」

 脱がしてくれる気配は感じられないのだけれど……。
 その行為に及ぶ気配は、とてもとても感じてしまう。

「脱がせて……、くれないの?」

 返事代わりに首を縦に振った一さんの唇が、外された胸当てから覗く鎖骨を這う。
 上衣を肌蹴られた隙間から見えていた下着をずらされ、圧迫感から胸の膨らみが解放されると、次にされるであろう行為を想像して、私の胸は花恥ずかしさにふるりっと震えた。

 予想通り、彼の手は膨らみを全て覆い隠す。いつものコンプレックスがちょっと刺激され、刹那、私は切なさに身が竦んだ。

「さくら、制服が着られて嬉しいか?」
 一さんの顔が胸元へと下がる。私が「嬉しい」と返事をすると、彼はクスリと笑って、覆い隠した膨らみの頂へと唇を寄せた。
「私もこんなさくらを見ていると嬉しいぞ。まさか、制服姿の女の子を襲いたくなるとは夢にも思っていなかったからな」

 襲う、とか、ドキリとする恥ずかしい言葉を使われて、私は身体中が熱くなった。

「さくらが……、もう桜色だ……」

 身体に刺激を貰う前に染まってしまった私の肌を、一さんの熱さが更に染めていく……。――――









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