「恋桜~さくら・シリーズ」
恋桜~さくら~・3

桜・6『残念でしたね?』

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 ドキドキして、おかしな気分……。
 なんだか、いけない事をしているみたい……。

「おかしな気分になるものだな。……良からぬ事をしてしまっている様な気分だ」

 あっ、同じ事考えてますね?
 私の素肌を辿る一さんの大きな手が、何となくいつもより荒々しい気がして、余計にドキドキしてしまう。
「は……じめ、さ……」
 両肩を竦めて、彼の腕を押さえる。何? 凄く恥ずかしい。

 している事はいつもと同じ。
 一さんが思うままに、私の中に居る“ふしだらな私”を引き出して、その子が黙ってしまうくらいの愛情を注ぎこんでくれる。
 それなりの花恥ずかしさは感じるけれど、それはとても幸せで、とろけてしまいそうな行為。

 なのに、今は恥ずかしい気持ちが全面に立っている。
 一さんの愛情の軌跡が、気持ち好くとろけるというよりは、緊張に震えてしまうよう。
 これって、制服の様な慣れない物を着ているせいなんだろうか……。

 彼の腕を押さえてしまった私の両手首を、一さんは片手でまとめて掴み、頭の上でベッドへと押さえ付ける。
 こうなると私は、一切手が使えない。
 扇のように広がったプリーツスカートは、とても容易く一さんに捲くり上げられた。

 身体が熱い……。
 いつもより上気してしまっている自分を感じる。
「はじめ……さん……」
「惜しいな」
「何が……」
「私も、制服を取っておけばよかった」

 ――はい?

「男子生徒は、今も昔もブレザーにネクタイだからスーツとあまり変わらんが、それでも気分が違うだろう」
 私は目をぱちくりさせる。
 それは……。あの……。つまり……。

「やっ、やだっ、一さんってばっ。何か、それって……、よく言われるところの、こっ、こすぷっ……」

 やだっ! 恥ずかしくて言えないっ!

「コスチュームプレイ、か? やはり私の歳で着るとソレになってしまうか?」
 私が恥ずかしくて言えなかった台詞を、一さんは笑顔でさらりと言ってのける。
 知識のひとつとして知っているだけだけれど、コスプレという物は、時に男女の行為を盛り上げる為に使われたりもするらしい。
「一さんが制服なんか着たら、間違いなくソレですっ!」

 ちょっと、見てみたい気もするのだけれど。

 一さんの制服姿に心動いた私。今度絶対に高校時代のお写真を見せてもらおうと心に誓う。
 小さな子供の頃のお写真は見せて頂いた事があるけれど、そういえば高校時代のって見た事が無い。
 きっと、今と同じで素敵だったんだろうな……。

 少々妄想に浸っているうちに、スカートから完全に出された両脚を撫でられているのを感じる。微妙なくすぐったさに、開きかかっていた膝を閉じようとすると、「駄目だ」という一さんの制止と共に、彼の膝が脚の間に挟まる。
「ンっ……んっ、いじわるっ……」
 さっきから、私が恥ずかしがって何かしようとすると、一さんがすぐ押さえてしまう。その件に関して私が拗ねた声を出すと、一さんはドキリとする色っぽい表情をして、私を服従させた。
「こういうのも、悪くないな……」

 あ……、なんか……。
 その言い方、いやらしく感じます……。

 脚を撫でていた手が、付け根に進もうとした時……。

「お兄様、さくらさんも、こちらにいらっしゃいますか?」
 ――――ノックの音と共に、椿さんの声。

 ムッと眉を寄せて、一さんは椿さんの声を無視しようとした。けれど、居留守などを使っては何を言われるかと不安になったのだろう、ふっと私に苦笑いを見せ、ベッドから下りたのだ。

 私もベッドから下り、いそいそと下着を直して、脇ファスナーを上げる。
 スカートのヒダが崩れてはいないかと、左右から後ろの様子を窺った。ハッキリと確認出来る訳ではないけれど、椿さんが入って来てから制服姿の私を見て、ヒダスカートにおかしなシワが付いていたりしたら、何かしていたのかと疑われてしまう様な気がして……。
 思うついでにベッドからも離れ、さり気なく窓辺による。
 胸のタイが解けかかっている事に気付き慌てて結んでいると、一さんが開けたドアから、椿さんが姿を現した。

「まぁ、さくらさん」
 椿さんはドンっと一さんを押し退け、室内へと入って来る。
 一直線に私の傍へやって来ると、笑顔で私の両手を取った。
「素敵。とても可愛らしいわ。お兄様の事だから、きっとさくらさんに着せているだろうなと思って、見に来ましたのよ?」
 
 お見通しですか。椿さん。

 椿さんはチラリと一さんを見てから、再び私に笑顔を向ける。
「お兄様が良い剣幕で出ていってしまったから、心配だったのよ。でもきっと、さくらさんのこの姿を見て御機嫌は治ったのでしょうね。それとも、一人占めにしたかった、って、御立腹かしら?」

 お見通し過ぎて、怖いです。椿さん。

「でもね、さくらさん。本当にもし学校へ行きたいという気持ちがあったら、いつでも言って下さいね」
「はい、有難うございます」
 椿さんの心遣いが嬉しくて、笑顔で返事をする私だったけれど、彼女の背後から近付いてきた一さんが無表情になってしまっているのを見て、ドキッとした。

 あー、御機嫌悪くなっちゃった?
 いいところを邪魔されたから?

「椿」
「何ですの? お兄様」
 まさかの兄妹喧嘩勃発の予感に身体を固めていると、とんでもない一言が一さんの口から飛び出した。

「お前、高校の制服は仕舞ってあったな。嫁に行く時は絶対に持って行けよ」

 椿さんは、一さんがいきなり何を言い出すかと、目をぱちくりとさせる。

「おっ……思い出の品ですもの……。持って行きますが……。どうしたのですか? いきなり」
「いや。総司(つかさ)君の為にもな。絶対に持って行った方が良いと思ってな」
 何となくその意味に察しをつけたのか、椿さんの眉が寄る。

 ……一さん? それ以上、言わない方が良いと思います。


 ――――そしてこの夜は、そのまま葉山のお父様とお母様に制服姿のお披露目をさせられ……。
 
 何も無く終わり……。

 翌日、ちょっとだけ、一さんの御機嫌は悪かった。








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