「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

第6章≪嵐の夜≫・13 *R18

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 ――――煌……。

 彼の前でも口にした事の無い呼び方。
 心密かに彼を想う時にだけ、口の中で呟き、ひとり鼓動を高め胸を痛める名前。
 咄嗟にその名を口にしてしまい戸惑う紗月姫ではあったが、神藤の攻めに翻弄される今、そんな事を悩んでいる余裕は無かった。
 そして、紗月姫が名前を口にした事で神藤も高揚する。彼女への愛しさが増し、彼女の全てを欲する我儘な気持ちはどこまでも高まった。
「もう一度、呼んで下さい」
「……あぁ……、煌……っ、好きよ……煌」
 情愛の熱に浮かされ、恍惚とした紗月姫が何度も繰り返し口にする。
 紗月姫が我を忘れて夢中になっている。神藤に抱かれる事で、法悦の快感を得ているのだ。彼女を貫く神藤は、全身でそれを感じる事が出来た。

 神藤は紗月姫の身体を反し、シートに浅く腰かけさせて身体を背凭れに寄り掛けると、彼女の両脚をV字型に持ち上げ大きく開かせた状態で再び繋がった。
「あ……ンっ! あっ……きらぁっ!」
 シートで腰を崩した、だらしのない体勢。だが形などはお構いなしに、紗月姫は激しく貫かれ、大きく揺さぶられた。腰だけを彼に差し出し、大きく開脚した付け根の華苑を目前に晒した姿は「どうぞ挿れて下さい」と言わんばかりだ。
 下げられたブラジャーの上で、白い乳房が大きく弾む。
 愛撫を強請るかのように勃ち上がった乳首に神藤が吸い付くと、紗月姫は彼の柔らかな癖毛に指を絡め、月明かりの中、銀色に変化する髪を握った。

「……紗月姫……」

 胸元で囁かれる、熱っぽい声。癖毛を握る紗月姫の指が震える。

「もう一度、呼んで……」
 強請る紗月姫の願いは、すぐに叶えられた。神藤は顔を上げ、薄闇に輝く銀色の瞳で紗月姫を見詰める。
「紗月姫……」
「もう一度」
「紗月姫……、愛している……」
 紗月姫は神藤に抱き付き、腰を押し付けた。

「……愛しているわ、……煌」

 泣き声が混じる嬌声を上げながら、紗月姫は何度も彼の名を呼び、神藤も同じように、従者が口にしてはいけない言葉で彼女を呼んだ。
 何度も何度も「紗月姫」と。繰り返し、「愛している」と。
 そして紗月姫も、貫かれるごとに「煌」と……。
 与えられた時間の中で、極限までお互いを確かめ合ったのだ。

「煌……煌っ、もぅ、ダメッ……、私っ……」
 強烈なオーガズムの手前で、紗月姫は腰を揺らし、広げられた両脚を戦慄かせる。
 抑え切れないほどの快楽は大きな波になって彼女を襲うが、それをどう扱ったらいいのか、彼女には分からない。
 彼に抱かれ、いつも以上に昂っている自分を感じてしまうのだ。

「もっ……あぁ、あっ! おかしくなっちゃうぅ……!」

 紗月姫らしくない言い回しに愛おしさを覚え、その気持ちを抑え切れないのは、神藤も同じなのだ。
「紗月姫……綺麗だ……。私の前でだけ、おかしくなって見せて……」
「あき、ら……煌ぁっ……、ああっ!」
 深く深く繋がった神藤が、紗月姫の全てを我が物にしようかとするかのように、熱い迸(ほとばし)りを彼女に沁み込ませる。
 大きなオーガズムに呑み込まれそうになりながら、紗月姫は必死に神藤へとしがみ付いた。
「……あきら……、愛してる……」


 無我夢中で愛し合った二人。 
 どうやら時間一杯を使ってしまったらしく、まだまどろみの中に居る途中で、迎えの車がやって来てしまった。
 急いで身支度をした紗月姫ではあったが、漆黒の美しい黒髪は乱れ、ワンピースは所々におかしなシワを作り、頬はまだ微かに上気している。
 こういう事にはなるだろうと予想をしていたので、迎えに来た章太郎も特に余計な口出しはしなかったのだが、ネクタイを曲げた事も無い様な神藤がノーネクタイで運転席へ移動したのを見た時は、流石に表情がほころんだ。

「有難う。水野」
 迎えの車に乗り込む紗月姫が、見た事も無い艶やかな女性の表情で、章太郎への礼を口にする。
 命令とはいえ、彼女を苦しめるであろう企てに従っていた章太郎。
 この三時間を、心から幸せに過ごした紗月姫が向けてくれた感謝の心。それは、痛いくらいの感動を章太郎に与え、彼はしばらく頭を下げたまま上げる事が出来なかった。


*****


「次のコマーシャルまでに帰って来なかったら、お風呂入るっ」
 テレビを睨みつけながら、冴子は何度同じ言葉を口にしたのだろう。
 お風呂くらい先に入ってしまえば良いのだが、もし櫻井が「一緒に入りたかった」と駄々をこねたらと思うと、なかなか一人で入る決心がつかなかったのだ。
「だって、りっくん、強情だから……」
 一人の部屋で、誰とはなしに言い訳をしてみる。だが、お風呂を待っている理由としては、冴子が一緒に入りたいから、というものが大きい。 

 見てはいるが頭には入らないサスペンスドラマは、ヒーローが犯人に追い詰められ絶体絶命だ。
(りっくん……、大丈夫かなぁ)
 そんな不安を持ってしまうと、ゾワリと背筋が冷たくなった。
「ええいっ! そんな事考えないのっ!」
 大きく首を振り、今度は声も高らかに自分へ言い聞かせる。

「で? 何を考えたの?」
 突如背後から聞こえた声。
 自分以外居ない筈の部屋で聞こえた声は、幻聴ではない現実的な響きで冴子の身体に恐怖を落とす。
 これが、怖くない筈が無い。――例えそれが、愛しの夫の声でも。

「きゃぁぁっ!」
 冴子は後ろを振り返る事無く、そのままラブソファから飛び上がり、テレビへ向かって一直線に逃げていった。
 テレビの画面へ手を着くと、丁度ヒロインが壁際へ追い詰められているシーン。ヒロインと共に冴子も振り向いた。
「だっ……誰っ!!」

 テレビと声をだぶらせ同じセリフを叫ぶが、その後延々と喋り続けているのはヒロインだけ。冴子はといえば、目を丸くして言葉を呑み込んでしまった。
「そんなに驚かなくてもいいじゃん」
 そこには、怖がるほどの魑魅魍魎が居た訳ではない。待ち焦がれた夫が立っていたのだ。
「りっくん……」
「冴ちゃん、驚かせようと思ってさ。こっそり入って来たんだ。そしたら冴ちゃんが一人で張り切っててさ……」
 冴子に近付こうとした櫻井は、ローテーブルの上に乗っている見慣れないプレママ雑誌と、務めている会社柄、存在だけは知っている妊娠判定試薬に目を留める。
 スティックを手に取り、マジマジと眺め出した。
「あっ、それね、本当はりっくんが居る時に試そうと思ったんだけど、……気になったから、ちょっと試しにやってみたら……」
 櫻井の表情を窺いながら冴子が口を出す。手に取ったスティックが何であるかは分かったようだが、浮き出ている赤いラインの意味は分かるだろうか。
 色々と説明が必要なのかもしれないと予想をするが、無言のまま冴子に近付いてきた櫻井は、力強く彼女を抱き締めた。

「冴ちゃん……、俺、すげぇ嬉しいよ……」

 冴子はちょっと驚く。彼女の前では、悪ガキがそのまま大人になった様な態度を取る彼の事だ、「スゲー、スゲェー、子供? ぅわっ、冴ちゃん、こーれー出産だし、早目に出来て良かったぁ! 俺の子供だよな!」などと、デリカシーの無い喜び方をするのではないかと思っていたのだ。

 騒がなかったからといって、櫻井が喜んでいない訳ではない。
 それは、冴子を抱き締める腕の強さと、喜びに打ち震える声のトーンが物語っている。

 冴子も櫻井を抱き締め、彼の腕の中で喜びを共有した。

「――お帰り……。お疲れ様……、パパ」







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**********

後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 短い逢瀬が終わりました。
 明日からはまた、触れたくても触れられない日々が待っています。
 ……とはいっても、すぐに何とかなりそうな雰囲気ではありますけどね。(笑)

 櫻井夫妻も幸せそうですね。
 この二人は、引き裂かれていた期間が長いだけ感慨深いです。;;

 あっちもこっちも幸せそう。
 あ、でも、一人だけ、これから不幸になりそうな人が居ます。
 誰だか解りますか?
 愛しい妻が、実家に帰っちゃったらしい旦那さんですが。(笑)

 では、次回!!





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