「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

第7章≪北欧の王子≫・15

 ←桜・9『気にしても良いですか?』 →第2話・パシリのお供、させて頂きます


「あっ……、あの、学……?」
 やっと声を掛ける事が出来たのは、抱きかかえられたまま抵抗も出来ず、とうとう専務室まで来てしまった時だ。
「やっ、やっぱり学の腕の中は気持ち良いわぁ、安心するぅ」
 学のスーツを掴み、胸に寄りかかる。顔を擦り付けて甘えて見せるが、頭上からは不機嫌な声が落ちて来た。
「でも、神藤さんの方が上手だったんだろう?」
「まなぶぅぅ~~~~~~~」
 美春は泣きそうだ。しかし寝言半分だったとはいえ、口から出てしまった物は取り返しがつかない。
「大体、ズルいよっ。人が寝惚けているのを良い事に、好きな事してぇっ」
「気持ち好かったろ? またやろうか? 夜這いもどき」
「そっ、それも、更に変なチョコなんか食べさせて、ズルい、ズルいっ」
「さーらーに、気持ち好かったろ? 美春の乱れっぷりったら無かったもんな。記録撮っておきたかったくらいだ。今度撮ってみるか?」
「やーよ! アホっ!!」

 ムキになって抵抗すると、学が喉の奥で笑いを漏らす。
 学が笑ってくれた事に嬉しさを覚えた美春は、ポツリ本音を漏らした。
「大体、神藤さんは確かにお姫様抱っこが上手だったけど、私が“抱っこしてもらって気持ちが良い”のは学なんだからね!」

 学が美春の肩を強く抱く。彼の腕の強さを感じ、美春はずくんと全身が疼いた。
「俺も……、美春を抱っこしてると気持ちイイ……」
「……学……」
 優しく深い声に頬が染まる。はにかむ笑顔を見せてくれた美春に、学は強く唇付けた。

「あの時と同じチョコ、食べさせてやろうか? まだあるんだ」
「いやーよっ、もぅっ」
 恥ずかしそうに肩を焦らす美春が可愛くて堪らない。
「可愛いな、美春は」
 彼の口癖を披露して、学は唇付けながらソファへ移動した。

 唇付けたまま美春を横たわらせ、学は誘いを掛ける。
「もっと、気持ち好くなる?」
「馬鹿ね、駄目だってば」
 美春は両手を学の胸に当てて、軽く押した。
「思い出してね? 忘れている訳じゃないでしょう?今はまだ、こういう事をしちゃいけない期間なのよ? 一時婚約破棄期間は、学は私に触れちゃいけない筈でしょう?」
 真剣な表情で美春は訴える。
 神藤の件が上手くいきそうだから、学はもう解決したつもりでいるのかもしれないが、実際にはまだ話をした訳ではないのだから、問題は解決してはいない。
「学は今、紗月姫ちゃんの婚約者候補でしょう? だから……、本当は昨夜の事だって、もしもお父さんにばれたら、本当に、一時的にじゃなく婚約解消されちゃう……」

 美春は涙が出そうだ。
 本当はいつでも学を感じていたいのに、触れてはいけないという規制がこんなにも悲しい。

(たった数日でこんなに辛いんだもん。紗月姫ちゃんなんて、堪らなく辛いんだろうな……)

 つい紗月姫の気持ちにまで考えは及び、余計に悲しくなってしまった。
 しかし……。

「ああ、それならもう気にしなくていいぞ」
 晴れやかな学の声が、美春の涙を止める。

「俺達、婚約解消してないから」

 美春は目を大きく見開いた。

「は?」
「だから、俺達は婚約破棄なんかしてないんだよ。俺が紗月姫ちゃんの婚約者候補には“なれなかった”から」
「……はぁぁっ?」

 どこまでも訳が分からず奇声を上げる美春だが。彼女の反応が楽しいらしく、学はクスクス笑い出した。
「つまりな、俺が紗月姫ちゃんの婚約者候補になるのは、書類上、『婚約者候補である旨を告げ、紗月姫嬢がそれを承認した日から』って事になってる」
「……だから、D王国に行く前、言いに行ったんでしょう?」
「行ったよ。で、見事にフられたのさ」
「フられた?」
「そう。『学さんなんか絶対に認めない』って」
 美春はキョトンッと瞼をしぱたたかせる。笑いを止めた学は、美春の頬を撫でた。
「紗月姫ちゃんは、俺を承認しなかった。――俺は、彼女の婚約者候補にはなれなかったんだよ。候補になれなかったという事は、俺が婚約者候補になった時点で執行される筈だった、俺達の婚約破棄も成立しなかったという事だ」

 美春はとうとう息が詰まってしまった。
 あまりにも愕然としてしまい、もう瞬きも出来ない。

「考えてみろ。“あの”紗月姫ちゃんが、俺を婚約者候補になんて認めると思うか? 物凄くムキになって怒られたんだぞ。『学さんを選ぶくらいなら、詳細不明の五人目を選ぶ』って」
「……学……」
「ん?」
「……その書類を作ったの、って……確か……」
「田島だぞ。素晴らしい仕事をしてくれたよ、あいつは」
「“そういった内容を含んだ書き方をしろ”って指示したとか……」
「ああ、俺が指示をした。田島に褒められたぞ。『お前は本当に考えがいやらしい』って」

 サラリと婚約破棄事情の裏側を口にする学を呆然と見詰めながらも、美春は頭の中で話を整理した。
 学は最初から、例え一時的にでも婚約を解消するつもりなど無かったのだ。
 彼が婚約者候補になれば、紗月姫がどんな反応を示すかまでを計算に入れ、『婚約者候補である旨を告げ、紗月姫嬢がそれを承認した日から』などという胡散臭い説明を入れた。
(……と、いうとは……よ?)

「学? まさか、葉山の両親も、ウチの両親も、……婚約破棄状態にはならないっていう事を知ってたんじゃ……」

 美春は思い出す。三人の母親が集まった上での、あの異常な和やかさを。
 そして、あれだけ報告の場で学に食い付いたのに、その後何も無かったように今まで通り「学兄さん」と懐いていた一真を。

「一真も……知ってた?」

 学はただニヤリと笑う。

 ――――決定だ。
 知らなかったのは、美春だけだったのだ。

「敵を騙すにはまず……、って奴だな。総司叔父さんの目をくらます為には、恐らく狙って来るであろう美春を、婚約破棄されていると思わせておく必要が有った。まぁ、考えれば分かる話さ。俺が一時的にでも、美春を離す訳が無いだろう?」

 後半の言葉は実に嬉しい。だが前半の言葉は嬉しくない。

 思えば以前もこんな事が無かったか。
 大学三年の時、本社ビルでの事件と、去年のハイタワーマンションでの事件の時。
 あの時も、当事者達をこちらの思惑に嵌める為、美春だけが真実を知らされなかった。

(また、私だけ?)

「だからな、婚約破棄もしてないから、昨夜の事も何の問題も無いんだ。正直、『美春に触れるな』っていうのは大介父さんのアドリブだったんだけど、焦ったなぁ。ちょっと本気で嫌がらせ入ってないか? とか思ったぜ。一真も良いリアクションしたしな。とにかくそういう訳だから。O,K? 美春ちゃんっ」
 美春の鼻先で、学の唇がチュッと可愛らしい音を立てる。いつもならこんな可愛い仕草をされれば、美春は蕩けそうなくらい幸せになってしまうのだが……。

 今日は、違った……。

「みんなっ、嫌いっっ!!」

 
 ――――次にやって来た学の大仕事は……。
 美春の御機嫌を治す事に尽力する事かもしれない。







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**********

後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 第7章≪北欧の王子≫
 今回でラストになります。

 神藤の本当の出生が明らかになり、紗月姫との関係に光明が射し始めました。
 彼は間違いなく、北欧の小王国の王子でした。
 この事実を、神藤と紗月姫が知るのは、翌日の話、第8章になります。
 そして第8章では、二人の間で大切な哀しい約束が取り交わされます。

 ですが、希望の裏で、もうひとつの運命は確実に病み続けています。
 咲月はこれ以上何をしようというのでしょう。

 明かされる出生の秘密。神藤の正体。
 禁戒の愛は、至福の愛へと変貌を遂げる事が出来るでしょうか。
 では次回より
 第8章≪永遠の約束≫
 に、お付き合い下さい。

 宜しくお願いします!

*第8章は6月10日からになります。





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~ Comment ~

NoTitle

美春ちゃんの怒りの前では、読者が(実は美春も)期待している、学のエッチなおしおきはできなくなっちゃったのでしょうか?ざ、残念です~

Re: NoTitleお返事です6/2


 こんにちは~。

 わぁ、やっぱり期待しちゃいますよね。(*ノωノ)
 いや、美春ちゃんも、怒りが先に立って期待どころではなくなってしまったのではないかと。(笑)

 お仕置きは無くなっても、きっと彼は成功の“ご褒美”を強請って来るのではないかと思われます。(*´艸`*)

 美春ちゃんともども、そちらに期待して頂けると嬉しいです。(笑)

 有難うございました!!

直さん、こんにちは(*゜▽゜)ノ
第7章お疲れ様でした&ありがとうございました


しかし…、葉山家め光野家も役者揃いですなぁ。
あたしも騙されたぜ(;゜ロ゜)シテヤラレター


神藤サンが王子様。北欧ってのがまた似合う( ´艸`)
学クン頑張った!やはりここはなんとかご機嫌直してもらって、美春チャンにご褒美貰わなきゃね(笑)

明日から第8章ですね。沙月姫チャンにも幸せになってもらいましょう。
…もう1人の咲月の事は学クンに言わなくて大丈夫か?

みわさんへお返事です6/9


 みわさん、こんにちは!

 第7章、楽しんで頂けて良かったです。こちらこそ有難うございます!

 皆に騙されちゃった美春ちゃんではありますが、大丈夫ですよ、きっと御機嫌は治りますから。(*^_^*)

 第8章は、神藤さんの件が明確になる章ですから、終了する頃には二人が手を取り合っていられると良いですね。^^
 今日、10日からスタートしてます。
 また楽しんで頂けるように頑張ります。^^

 ……咲月のことも、頭に入れといて下さいね。(,,・`ノ。・´)コッソリ

 有難うございました!

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