「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

第8章≪永遠の約束≫・1

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「あらぁ、まだ気付いて無かったの?」
 婚約者候補になるという話から発展した、婚約破棄のカラクリ。その裏事情を知り、ふつふつと怒りを湧き立たせる美春にかけられたさくらのひと言は、激しく彼女を脱力させた。

「もうとっくに気付いているのではないかと思っていたのよ? だって、特に皆、何も変わってはいなかったでしょう?」
 コロコロと笑い声を立てはするが、自分だけ騙されていたのだと半泣き状態で悲観する美春を、優しく撫でる事は忘れない。
「そうですけどぉ……。確かに、変だな、って感じる事は有りましたけどぉ……」
「うふふ、ごめんなさいね。でも美春ちゃんは、いくつになっても素直で可愛いわぁ。こんな可愛い子だけを騙す算段を立てるんだから、我が息子ながら、学は酷いわねぇ?」
 同情されると、余計に泣きたくなる。
 一時的にでも、婚約破棄をしなくてはならないと告げられてから今まで、あの切ない気持ちは何だったのだろう。

「お母さん、酷いは無いでしょう。でも、騙されたままの美春が上手く動いてくれたお陰で、賭けは完全勝利ですよ」
 葉山製薬本社ビルの社長室。一とさくらに事の真相を美春に伝えた事を話したところ、冒頭の様な反応が返って来たのだ。
 ソファに並んで座り傷心する美春の肩を抱くと、勢い良く涙目で睨み付けられ、学はちょっとだけ怯んだ。
 学の焦り怯む表情など、あまりお目にかかれるものではない。これはよほどの事だと察した一は、デスクに頬杖をついた体勢で喉を鳴らし笑い出す。笑いが止まらなくなっては大変と、さくらが美春の傍から離れ一の元へ移動すると、美春は学を睨んだまま問い詰めた。
「須賀さんと櫻井さんも、知ってたの?」
「いや、あの二人は知らない。大体、どうして美春が狙われるのかも明確には話していなかったから。ただ『美春を守ってくれ』っていう指示だけをしたんだ」
「じゃぁ……、知ってたのって……」
「ウチの両親、光野の両親、そして一真。田島と、信悟先生。それと椿叔母さんだ」
「……奥様も、知ってたのね……。でも、そんな裏工作をしている事、よく総帥にバレ無かったわね。奥様は、話そうとはしなかったのかしら」
「椿叔母さんに事の真相を話したのは、美春を助けてもらう時だ。最初から彼女は俺を信頼してくれていたし、紗月姫ちゃんの気持ちを分かってくれている人だったからな。まぁ、もし事前に知っていても、あの人は話さなかったと思うよ」

 美春は大きな溜息をついて俯いた。
 怒ってもしょうがない。美春が上手く立ち回って総司と対峙したお陰で、賭けの決着がついた様なものだ。
 本当に婚約を破棄した訳でも無い。学と触れ合ってはならない訳でも無かった。
 何も変わりはしない。
 二人は今まで通り、愛し合っていられる……。

 それでも……。

「学……」
「ん?」
「……もぅ、騙しちゃイヤッ……」

 顔を上げた美春が、潤んだ瞳で哀願する。学がこの目に弱い事は、明確な事実。
 まさしく“胸がキュンっとした”状態である学は、それが両親の目前であるにも拘らず、美春をギュッと強く抱き締めた。
「ごめんな、美春……」
「んもぉ……、悲しかったんだからね……。心配で怖くて堪んなかったんだからね……。今度こんなことしたら、もぅ、どっか行っちゃうからっ」
「しない、しない。もうしないよ。そんな事言われたら、俺の方が悲しくて心配で怖くて堪んないだろ?」
 学は美春を見詰めたまま、彼女の頬を撫でて鼻にチュッとキスをすると、続いて涙が溜まった目尻と頬にも唇を付けた。
「ごめんな。美春」
「まなぶっ……」
 切ない泣き声が胸に飛び込んでくる。学は彼女を隠してしまうほど強く、胸の中へ抱き入れた。

「良かったぁ……。学と別れた訳じゃなくて……」

 例え何も無くたって、一時的に関係が壊れてしまうのは凄く悲しい事だ。
 やっと婚約破棄に関してのわだかまりが取れた二人は、二人の世界宜しく抱き合った。

 二人は幸せいっぱいで宜しいが、こうなると困ってしまうのは一とさくらだ。これでは話しかけようにも、なかなか言葉が出てこない。
 それでも、二人の世界に上手く話を乗せたのは一だった。
「美春ちゃん」
 彼は深い声で穏やかに声をかけ、美春の気を引く。
「今回は、一番の不安を君に与えてしまってすまなかったね。だが相手は辻川の総帥だ、生半可な誤魔化しでは太刀打ち出来ないと腹を括った学の気持ちも、分かってやってくれ」
「はい、それは……」
 美春は素直に返事をする。一の話を聞く為に学から離れようとしたが、学は美春を抱いたまま放そうとはしなかった。

「それで、そのお詫びなのだが、どうだい、二人で旅行でもしておいで。もちろん夏季休暇にだがね。去年は忙し過ぎて、二人で旅行になんて行け無かっただろう? 好きなところへ、私が招待しよう」
「え……、でも、そんな……」
 美春は躊躇する。まさかそんなお詫びを貰えるとは思ってはいなかった。
 しかし、美春の代わりに学が返事をしてしまったのだ。
「有難うございます、お父さん。お心、有り難く頂きます」
「どこが良い? それともこれから相談して決めるか?」
 学は一の質問を、そのまま美春へ流した。
「美春、行きたい所は有るか?」
「急に言われても……」

 一に旅行をプレゼントして貰えるのは二度目だ。以前は大学三年の時、フランスへ行かせてもらった。
 学と一緒なら、どこでも良いというのが本音だ。だが、仕事の為になるような場所を指定しておいた方が無難だろうか。
「美春、俺が指定しても良いか?」
 迷っている美春に代わり、学に何か提案があるようだ。美春がこくりと頷くと、学は笑顔を見せて一に希望を伝える。
「では、D王国で」

 美春は驚いて目と口を開いた。
 そして、D王国を指定した理由を美春に告げる。
「とても雰囲気の良い国だぞ。小さな国だが、首都は観光地でもある。俺も今回はトンボ帰りの様なものだったから、ゆっくりとあの国を見てみたい」

 了解の意味で一が頷く。それを確認して学が美春に笑いかけると、美春も嬉しそうに微笑んだ。
「紗月姫ちゃんも、……神藤さんと一緒に行きたいって言うかもね」

 今は、そうなる事を願わずにはいられない……。







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 第8章≪永遠の約束≫
 スタートです。

 美春はかなり御立腹でしたから、取り敢えずはご機嫌を治して貰うところからですね。
 今度騙したら、どっか行っちゃうそうですよ。そんな事言われたら、学ももう騙せませんね。
 とにかく、一に旅行のお詫びを貰って、学にも甘やかして貰って、美春はご機嫌です。(*^_^*)

 運命の日を前に、仲直りで幸せなカップルもいれば、とある悲しい約束を交わす二人もいます。
 次は、そんな二人を見てみましょう。
 藤棚の下で。

 では、次回!!




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「あらぁ、まだ気付いて無かったの?」 婚約者候補になるという話から発展した、婚約破棄のカラクリ。その裏事情を知り、ふつふつと怒りを湧き立たせる美春にかけられたさくらのひと言は、激しく彼女を脱力させた。「もうとっくに気付いているのではないかと思っていたの...
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