「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

第8章≪永遠の約束≫・5

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 学の言葉に、誰もが一驚した。
 これからされる五人目の話が神藤の件であるという事実を知っている総司と椿でさえ、目を瞠ったのだ。
 そんな中、書類ケースから一通りの資料を取り出した美春が、総司の横へ歩み寄った。
「学の、誠意です。御確認下さい、総帥」
 総司は美春を見上げ、彼女の真っ直ぐな瞳にフッと笑みを浮かべる。
 学を信じ抜き、紗月姫の幸せを願い続けて行動してくれた彼女に、今となっては敬意の念さえ覚えるのだ。
「拝見させてもらうよ」
 美春の手から数冊のファイルを受け取る。総司はまず、一番上に乗せられていた布貼りの証書挟みを開いた。

 開いてすぐ、総司の目が大きく見開かれる。
 言葉無く目の前に現れた物を見詰め、そこから視線は動かない。隣に腰を下ろす椿も、彼の手元を覗き込み「まぁ」と呟いたきり絶句した。

「D王国、現女王から頂いた認知証です。これから紹介する青年が、間違いなく王族であるという証になります。女王の嫡子ではありませんが、妹君の子供であることから、王族の一人として認めるという証明です」

 学の説明を聞き、総司は言葉を発しない。認知証を椿へ回し、他の資料ファイルに目を通し始めた。
 そこには、王子が産まれてから行方不明になるまでの経緯、そしてDNA鑑定の結果や、当時事件に関わった側近の証言などが克明に記されていた。

 疑う余地は無い。“彼”の出生は、明らかにされたのだ。

「……何という事だ……」
 眉をひそめ、総司が呟く。
 最良の結果を持ち帰り揃えて見せると言った学。その言葉は、嘘では無かった。彼は、最良過ぎるほどの驚くべき結果を暴き出したではないか。

 見た事も無いほどの狼狽振りを感じさせる総司を目の前に、紗月姫は眉を寄せた。
 何を見せられてそんなに慌てているのかは分からないが、当事者として言いたい事はあるのだ。
「学さん、何故、異国の方なのですか? わざわざ異国の王族を選ぶ必要が何処にあるのです。辻川の事業とD王国の間には、特に大きな繋がりは無い筈です。なのに……」
「紗月姫ちゃん」
 期待を込めて総司を見詰めていた美春は、湧き上がる希望を込めて紗月姫へ向き直り、彼女の傍らへ屈んだ。
「彼は、女王陛下の妹君と、日本の男性との間に生まれた人なの。ハーフだけれど、そんなに日本人離れしている訳でも無いわ。とても綺麗な男性よ」
「ですが……、この為に、D王国から連れて来たのでしょう?」
「違うわ。彼はね、ずっと日本にいたの。自分が王子だって知らないまま」
「……え?」
 紗月姫には訳が分からない。王族だが王子である事を知らない。そんな事があるのだろうか。第一、何故そんな訳有りの青年を選んだのだろう。

 困惑する紗月姫の傍らに、今度は椿が歩み寄って来た。
 嬉笑いを浮かべる母から紗月姫が受け取ったのは、今まで椿が見ていた認知証書だ。
 D王国の自国語で書かれた証書だが、以前神藤がこの国を好きだと言っていた縁があり、紗月姫はD王国の言語をマスターしている。もちろん読める内容ではあったが、内容よりも紗月姫は、証書内に書かれた一つの名前に惹きつけられた。
 それは、王族である旨を女王から証明されている青年の名前だ。

 その名を、紗月姫はよく知っている……。

 幻ではないか。読み違えているのではないか。
 紗月姫は何度もその項目を読み返し、これが女王の認知証書である事も繰り返し確認した。

「……嘘……」

 言葉は震え、驚愕に歪む口元を手で覆うと、戸惑う瞳に涙が浮かんだ。

 ――これは、夢ではないのか、と……。

 紗月姫の反応を、美春と椿は微笑みながら見詰めた。
 今は驚き戸惑っているが、その表情はすぐに笑顔に変わってくれる事だろう。二人はそれを、確信している。

 同じように紗月姫を見詰めていた学だが、総司がファイルを閉じた姿を見て、話を進めた。
「叔父さん、お分かりかと思いますが、彼は今でも自分の出生を知りません。それどころか、自分の出生を卑しんでいる。しかし彼は、ずっと上質な教育を受け、上流の環境で過ごしてきました。もちろん。辻川の名に恥じないだけの教養も身に付けている」
「そうだな……」
「自分の血筋を知らなくとも、彼の物腰と風格は素晴らしいものがあります。それを感じたからこそ、俺は彼を調査しようと思ったのです。――――彼を、五人目の候補として認めて頂けますね?」

 証書を見詰めたまま視線を外せない紗月姫。彼女が見せる笑み混じりの動揺の中に、総司は未来を思う。
 娘の幸せが見えた様な気がして、彼は表情を和めた。
「――認めよう」

 話は着々と進んで行く。
 五人目の候補が決まったのであろう光景を、神藤や章太郎は複雑な思いで見ていた。
「……王族か……」
 章太郎の呟きは、神藤の心を重くする。
 王族が相手では、総司が候補として認めるのも当然だ。北欧王室の血族。紗月姫の婚約者候補として、辻川財閥の未来を担う者として、何の問題も無い。

 紗月姫が学を選ぶ筈は無い。彼女は五人目を選ぶだろう。
 書類に目を通し驚きを見せ続ける紗月姫を、神藤は切ない気持ちで見詰めた。
 すると、そんな神藤に、学が立ち上がりながら声をかけたのだ。
「神藤さん、ドアを開けて下さい。“彼”は、そのドアの向こうにいる」

 神藤は「はい」と無感情な返事をしてドアへと向かう。このドアの向こうに五人目が居るのだと思うと、彼の腕は、刹那開く事を躊躇った。
 しかし神藤は不従順な気持ちを振りきり、両開きのドアをゆっくりと開いたのだ。

 だが、そこに人はいない。人払いをしているせいか、メイドの姿さえ見えなかった。
 ここで待たされていたのなら、何処かへ移動してしまったのではないだろうか。神藤が左右に人の姿を確認しようとした時、彼はいきなり後ろから押され、部屋から出された。
 背後で扉がバタンッと音を立てる。いったい何事かと振り返った瞬間、今閉まったばかりの扉が大きく開き、頬笑みを浮かべた学が現れたのだ。

 こんな時に何の悪戯なのだろう。口を出そうとした神藤だが、学の行動が全てを止める。

 学は微笑んだまま、右手を左胸に当て、神藤に向けて頭を下げるという敬意を示したのだ。

「ようこそ、王子。十八年間、紗月姫嬢が貴方をお待ちしておりました」







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**********

後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 始まった種明かし。告げられる真実。

 神藤の、そして、紗月姫の反応は……。
 多くは語らず行きましょう。

 では、次回!!




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Re: きゃーっ♪───O(≧∇≦)O────♪(みきちゃんさんへお返事です6/14)


 メルアドが記載されていましたので、そちらへお返事させて頂いております。
 未着等有りましたらご連絡下さいね。^^


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Re: (泣)(みきちゃんさんへお返事です6/15)


 こんにちは~~。
 やっぱり届いてないですか!!??(T∇T)

 どうしてだろぉ。(泣)

 別アドレス、試してみましょうか……。

 前回のお返事、ここに入れておきますね。


*****

みきちゃん 様

 おはようございます!玉紀 直です。(*^_^*)

 昨日はサイトにコメントを頂き、有難うございました!

 先が分かっていても、ドキドキしながら読んで頂けて嬉しいです。^^
 またドキドキして頂けるように頑張りますね。

 メルアド記載だったので、こちらにお返事しましたが、不都合は有りませんでしたか?

 有難うございました!!




     玉紀 直


 

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Re: 『運命』か『宿命』?(みきちゃんさんへお返事です6/18)

みきちゃん さんっっ!!!!

 ごめんなさい、何故か今度はこちらでエラーメールになって返って来てしまいます。;;
 うーんうーん、どうしてなんだろう……。
 私もこういう関係には弱いので、よく分からないのですよ。ごめんなさいです。(>_<)

 これにめげずに、またお声かけて下さいね!

 いつも有難うございます!!

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Re: ( i _ i )(みきちゃんへお返事です6/20)

みきちゃん!

 こんにちは!
 お言葉に甘えて「さん」取っちゃいました。(^^ゞ
 メールの件は、こちらこそすみません。私もあまり機械関係に明るくないので、メール設定とかよく分かってないのです。(ダメじゃん)

 毎朝、本当に有難うございます。^^
 今日はちょっと朝の更新が遅かったので、「休み?」って思われちゃったかな?

 また是非お声をかけて下さいね~。(*´∀`*) 

 有難うございました!

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