「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

第8章≪永遠の約束≫・9

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 王族としての身分を認められたとはいえ、神藤がD王国の王室へ入る事は無い。
 王室へ迎えられないとの旨は、女王と交わした証書にも記されている。それは、王位継承権の問題や、三十年前に死んだとされている王子の存在を国民に知らしめる事が、余計な混乱を招く事にもなりかねないという判断からだ。

 それでも、国を訪れた時には是非とも連絡が欲しい。
 女王が神藤へ個人的に宛てた書簡には、そう記されていた。

「残念? 神藤」
 神藤の手元を覗き込んでいた紗月姫が、彼に寄り添ったまま訊ねる。神藤の手には、女王からの書簡が広げられているのだ。
 王室へは迎えられないという件を、残念がっているかと思ったのだろう。
 せっかく王族として認めてもらっても、これでは事実だけを貰った様なものだ。国民自体には、特に公表される様な事は無いのだから。

 紗月姫の部屋へ戻った二人は、ソファに仲良く並び、学が揃えた神藤に関する調査書に目を通していた。
 神藤にとっても、その内容は驚くべき事ばかりだ。父親が暗殺者であり、母親である王女を殺す為に雇われ出会ったのだという件(くだり)は、自分と紗月姫を思わせずにはいられない。

「何故、残念なのです?」
 女王からの書簡を丁寧に折り畳み、神藤は穏やかに訊ねる。
「もし、王族に迎えるなどと書かれてあったなら、私はD王国へ入らなくてはなりません。お嬢様の傍を離れる事になるのですよ。良いのですか?」
「いっ、いやよっ、そんなのっ!」
 紗月姫はムキになって否定する。クスリと笑った神藤が、寄り添う彼女の頭を撫でた。
「充分過ぎるほど素晴らしい地位を頂きました。おまけにお嬢様の婚約者に選んで頂いたのですよ。これ以上の幸せは有りません」
「神藤……」

 紗月姫が伸び上がり、自分から唇を合わせる。嬉しそうな「私も幸せよ」という囁きを感じると、神藤は彼女の頭を片手で支え、強く唇に吸い付いた。

「……お嬢様、愛しています……」

 しっとりと深く囁かれる言葉は、本来、心蕩けるものであるはずだ。しかし何故だろう。囁きの傍に有った紗月姫の唇は、ムッと不快を表す形を作っていたのだ。
「……神藤……、そうじゃなくて……」
「どうしました? お嬢様」
「だから……、そうじゃないのよ……」
「何か、お嬢様の御不快を誘う事をしてしまいましたでしょうか?」
「神藤っ」
 じれったく拗ねた唇が離れると、神藤はにこりと笑んで紗月姫をソファへ倒した。

「こうしたかったのですか? お嬢様」
「そうでは無くて……」
「嫌なのですか? お嬢様」
「い、嫌などでは無いわ……でもっ、そうでは無くて……ああっ、もういいわっ」
 希望を察してもらえない紗月姫は、とうとう焦れてしまった。投げやりに視線を逸らした彼女の耳元に唇を近付け、神藤は希望を叶えてくれる。

「――――紗月姫」

 ピクリっと、紗月姫の身体が震えた。

「……こう呼んで、欲しかったのでしょう?」

 口に出しにくかった希望を叶えてもらったのは良いが、面映ゆい思いに、紗月姫は花恥ずかし気に神藤を見上げた。
「ハッキリと言って下されば良いのですよ? 『名前で呼びなさい』と」
 拗ねてすぼまった唇を指でつつく。すると紗月姫の反抗が始まった。
「だって……、こうなってしまっては、もうそんな命令……。もうっ、神藤が悪いのよ、『お嬢様』『お嬢様』ってしつこく呼ぶから。故意に呼んでいたでしょうっ?」
「はい、お嬢様が可愛らしい反応をなさるので」
「ほら、またっ」
「私は確かにお嬢様の婚約者にしては頂きましたが、すぐに人前で名前を呼び捨てたり、対等の口をきいたりは出来ないのです。私はまだ、表向きお嬢様の“お世話役”なのですから」
「……別に……、名前で呼んでも良いわ……。それに、婚約を披露してしまえば、誰もが知るところになるでしょう?」
「ですが、お嬢様が高校を卒業なさるまで、私はお世話役を続けさせて頂くつもりです」
 つまりは、結婚するまでは堅苦しい主従関係を続けるというのだ。
 紗月姫としては、学と美春の様な、誰が見ても分かる恋人同士の関係を作りたかった。また、それに憧れてもいたのだが、どうやら神藤は違うらしい。 

 仕事熱心なのは良いが、彼の決断には不満が残る。拗ねて視線を逸らす紗月姫を見て、神藤は笑みを漏らし、彼女の頬に唇を付け、左耳を食んだ。
「……ァ、んっ……」

「結婚までお世話役でいた方が、二十四時間、遠慮なく紗月姫と一緒にいる事が出来るだろう?」

 紗月姫の頬がほわりと染まる。神藤の唇が淡いピンクの頬を辿り、紅を差した様に可愛らしい唇に重なった。

 確かに結婚するまでは、婚約者の立場を使うより、お世話役の立場を利用した方が、一緒にいられる時間は多いのかもしれない。

「……煌……」

 優しく情熱的な唇付けを受け、紗月姫は夢心地で提案をする。
「……二人でいる時は、名前で呼んで?」
「勤務時間外なら」
「……真面目すぎるわ……」
 大分話は落ち着いてきたが、紗月姫にはまだ不満が残る。だが、彼女の不服はすぐに解消された。
「お世話役の仕事は、毎日お嬢様の就寝時間である二十二時に一通りを終えます。それ以降の時間は婚約者になるという事で、御機嫌を直して頂けますか?」

「二人きりの時は?」
「では、二人きりの時も」
「それなら良いわ」

 紗月姫が神藤の肩から両腕を回す。
 二人の唇がまた強く引き寄せられる前に、珍しく照れた神藤の声が紗月姫の身体を奮わせた。

「紗月姫……、愛しているよ……」

 ――――二人だけの約束が、またひとつ……。







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**********

後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 せっかく認められたのですから、恋人同士のようになりたいのは当たり前です。
 神藤は真面目ですから。紗月姫はちょっとじれったいでしょうね。
 ですが、歳の差のせいか、紗月姫の我儘になれているせいか、大人の余裕で対応してくれますから安心です。

 幸せなカップルがひとつ、出来上がりました。
 では、その幸せに貢献してくれたカップルは、何をしているのでしょう。

 では、次回!!





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~ Comment ~

なんだか神道さんたちに
結婚で先を越されてしまう
予感です…!

学くんがんばって!
さっさとしないと
私が美春ちゃんを
もらいにいきます!
美春ちゃん愛してます!

Re: タイトルなし(匿名様お返事です6/18)


 こんにちは!

 神藤さんと紗月姫ちゃんの方が、結婚する時期が早いかもしれませんね。(*´艸`*)
 紗月姫ちゃんが高校を卒業したらすぐ、という事は、翌年の三月。
 学君と美春ちゃんは……?

 ふふ……。

 匿名さんに美春ちゃんを持って行かれない様に、学君に発破かけないと駄目ですね!

 美春ちゃんに、熱烈な愛の告白(///∇///)
 有難うございました!!
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