「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

エピローグ・8≪約束の場所~サンルーム~≫

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「はい、美春。あーん」
 心も身体もほんわりと安らいでいるところへ、目の前に差し出される、一口大に千切ったシフォンケーキ。
 真っ白な生クリームも付いているというのに、口元まで運んでくれるのは学の指。
 パクリと彼の指ごと食んで、ついでに指に付いたクリームもぺろりと舐め取る。魅惑の甘味にほっこりしながら視線を上げれば、背中から美春を胸に抱き入れる学の頬笑みが目に入り、直後唇が落ちてくる。
「……美味しい?」
「うん……」
 キスの後は学の胸に寄り掛かり、すぐにまた同じ事の繰り返しだ。

 目を細めたくなるような眩しい初夏の陽射しをいっぱいに取り込んだ、葉山家のサンルーム。
 中央のフローリングに足を伸ばして座った学の腕には、人形のようにとろりと寄り掛かる美春がいる。
 生クリームが沢山添えられたフワフワのシフォンケーキに、学が淹れてくれたアールグレイ。大好きな彼の腕の中で寛ぐ日曜日。
 美春にとっては、最高の安らぎをもたらしてくれる愛すべき時間だ。
 そしてそれは、学にとっても同じだろう。

「久し振りだよね……」
「ん?」
「こんなにゆっくりする、日曜日」
「そうだな……」
 紗月姫や神藤の件もあるが、大切な仕事も詰まって来たので、ここのところ日曜日でもあまりゆっくりと過ごした記憶が無い。
「とても……、ホッとした気分だわ……。なのに、嬉しくて、楽しくて、……どこか気持ちが高ぶっているの……」
 学の胸の中でうっとりと吐息し、美春は再び、目の前に差し出されたケーキを食んだ。
「とても……、幸せ……」
 何回目かのキスを落とし、美春が残した指のクリームをぺろりと舐めて、学は美春をギュッと抱き締めた。

「俺も……、幸せな気分でいっぱいだ……。何だか、初めて美春に出会った時の事を思い出すよ」

 眩しい光が溢れるサンルーム。
 二人がそこで出会ったのは、二十一年前。
 運命の出会いが、小さな二人を導いた瞬間だった。

「――愛してるよ、結婚しようね」

 美春を胸に、学が二十一年前そのままの言葉を口にする。
 あの頃とは、声も、唇の熱さも、腕の大きさも、何もかも違っているのに。――なのに、全身を包み込む幸せだけは、いつまで経っても変わらない。

「学、私、幸せよ……。泣きたいくらい……」
 涙が滲みかけた瞳を閉じ、美春は学の胸にしがみついた。

 
 いつもは二人きりのサンルーム。
 しかし、今日は違う。
 隣接するリビングでは、一とさくら、そして大介とエリが、揃ってお茶を飲んでいたところだったのだ。
 しかしもちろん、両家の視線は幸せそうに自分達の世界を作る二人に注がれている。
 抱き合う二人を微笑ましげに見詰めて、さくらがクスリと笑った。
「初めて会った時みたいね……。あの時も、二人がサンルームでイチャイチャしているのを、両親四人で眺めていたっけ」
「あの頃とは違うんだから、早く結婚しちゃえばいいのに」
 さくらの言葉に反応したのはエリだ。大介の紅茶に指定以上のティーシュガーを入れ、渋い表情をする彼を見ながらくすくすと笑っている。
「あらぁ、エリちゃん。私てっきり、もしかしたらエリちゃんって、本当は二人を結婚させるのが嫌なのかと思っていたわ」
「どうして?」
「婚約破棄の話し合いで一芝居打った時、エリちゃん怖かったもの。何も言わないで、泣きじゃくる美春ちゃんを絶対学の所にやらなかったでしょ?」
「ああ、あれ?」
 エリはクスッと笑って肩を竦めると、美春を生き映したような笑顔を作った。
「だって、いっつも学君に美春を取られてたから、たまにちょっと意地悪したかったのよ。結構真に迫っていたでしょう? あの後、学君、わざわざケーキ持って挨拶に来たのよ。お手数をお掛けしてすいません、って」
「……エリちゃんってさ……、たまーに意地悪よね……」
「ふふっ、さっさとお嫁に貰ってくれなかったら、本当にあげないんだからね。“娘”の母親は、怒ると怖いんだから」
 物静かで大人しいエリの意外な発言に場が和む。
 ティーカップに口を付け、一がフッと笑みを作った。
「――すぐだろう。……もう、間もなくだよ……」
 そしてその言葉を、希望を込めて大介が継ぐ。
「もうすぐ、……あの子たちの約束が、現実になるさ……」


 光射すサンルーム。
 暖かな陽射し。
 穏やかな空気と、幸せな気持ちに包まれたあの日。
 ――二人は、未来を誓った。

「愛してるよ、美春」

 そして今も、その想いは続く。

「愛してるわ、学……」

 寄り添い、抱き締め合い、共に感じ合う幸せ。
 二十一年間、続く愛。

 この約束の場所から、それは続いて行くのだ。

 ――――未来へ。




       第11部
     ――END――







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 第11部、全168話。今回でラストになります。
 ああ、長かった……、と思う反面、実は今年いっぱいかかるのではないかという思いがあったので、思ったより早く終わったかな? という思いも……。
 章区切りで休み休みではありましたが、約8ヶ月間ですね。
 お付き合い頂きまして、本当に有難うございました。

 所々の後書きにも書きましたが、本作から生まれた悲恋主従カップルが、ついに結ばれました。
 色々な思いがあり、悩んだ末に始めた第11部だったのですが、お礼を兼ねて活報をUPしますので、宜しければそちらもご覧下さいね。

 さて、第12部をもちろん書かせて頂くつもりなのですが、あらすじ諸々の前に、ちょっとお遊び的な番外編にお付き合い頂けますか?
 お話の中で学君が「12歳差」の話をしていたエピソードを覚えて頂けていますでしょうか。
 【紗月姫ちゃん神藤さん、12歳差カップル成就記念】(なんだそりゃ(笑))
『もしも、学と美春の歳の差が12歳差だったら!』 ……というものを数話……。(ああっ、「しょーもないっ」って言わないでくださいっ。(;∇;))

 第12部が始まるまで、どうぞそちらでお楽しみ頂けますと嬉しいです。^^
 その後で、第12部のあらすじ前書きなども公開します。
 ひとまずこちらでは、4日ほど更新のお休みを頂きましてから番外編を公開させて頂きます。(同時公開しております投稿サイトの方では、『恋のエトセトラ』で公開中の「バレンタインSS]と紗月姫ちゃん神藤さんのR18作品を2作公開しますので、一応更新は続きます)

 引き続き、宜しくお願い致します!





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