「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

【もしも企画】番外編『僕のお姫様』act.1

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【御注意】
*こちらのお話は【もしも企画】であり、パラレルです。
 本編とは一切関連性は御座いませんのでご了承ください。

**********

「可愛いなぁ……」
 最初に出たのはその言葉。
 他に出すべき言葉の選択肢など、彼には思い付かなかった。
「可愛い……」
 呟く彼の視線は一点に注がれる。サンルームに置かれた大きめのクーファンに寝かされる、小さな人形に。
 いや、人形ではない。
 寝かされているのは、真っ白なドレスオールに包まれた、透き通るほど白い肌の赤ん坊。
 頬は優しい桜色。長いまつげをぱちりぱちりと上下させ、深いアメジストの瞳で彼を見詰めている。髪は柔らかいうねりを作り、明るく綺麗な栗色が陽に透けて眩しい。
「可愛い……」
 三十秒に一度は呟いてしまっているのではないだろうか。
 己の行動を自覚してしまった葉山学は、ちょっと照れ臭くなり、理知的な表情を少年らしいはにかみに変えた。

 学はこの春、小学校六年生になった。
 製薬会社を営む一族の跡取りとして産まれた彼。土曜日だろうと、自己向上の為の勉強に休みはない。この日フランス語のレッスンから戻ると、父の幼馴染が夫婦で訪れていたのだ。
 学の父、一の幼馴染、光野大介は、葉山製薬本社の研究室室長だ。数年前に葉山邸の隣へ引っ越して来たのだが、子供は無く、夫婦二人の生活が続いていた。
 しかしこの春、念願の赤ん坊が産まれたのだ。
 妻のエリに似た可愛い女の子だと良いなと常々口にしていた大介の希望通り、将来必ずや美人になると確約されているかのような可愛らしい女の子だ。
 名前は美春。丁度、生後一カ月になったばかり。
 光野夫妻に挨拶をする為にリビングへ入った学は、今日初めて美春を見た。

 クーファンの中に寝かされた美春は、エリと共にサンルームで日光浴をしていたのだ。
 他の大人達はリビングで話に花を咲かせている。せっかく来たのだからおしゃべりをして寛いで下さいと、学が美春のお守役を買って出た。

 初めて視界に捉えた少年を前に、美春は真ん丸な目をぱちりぱちりと動かす。
 きちんと見えているのかは分からなくても、彼女が持つアメジストのように綺麗な瞳の中に自分が映っているのかと思うと、学は堪らなく嬉しくなった。
 顔の横できっちりと握られた手。指でつついて悪戯をすると、マシュマロのような柔らかい手が学の指を握った。
 その力は意外に強く、学は驚きと共におかしな胸の高鳴りを感じる。指を掴む美春が、必死になって学に傍から離れないでくれと言っているように感じてしまったのだ。

「……美春ちゃん……」
 クーファンの傍らに腰を下ろしていた学は、そのまま美春の上に屈み、触れたら形を崩してしまいそうなほど柔らかい頬に、チュッと唇を付けた。
「……傍に居るからね……」
 笑顔で囁きかけると、美春の表情もほわりと緩み、それが喜びを表しているかのように学へ伝わる。
 学の気持ちは、一気に高まった。

「おじさん」
 学は顔を上げ、リビングへ声をかける。
 両親と共に談笑していた美春の父、大介が、利発な声に呼ばれ振り返った。
「何だい? 学君」
 大介としては、学が話しかけて来た理由を分かっているつもりでいた。
 学には兄弟がいない。近くにいる年下の子供といえば、六歳年下の従妹くらいだろう。それ故、彼は恐らくこう言うのだ。「美春ちゃん、可愛いですね。僕、妹が欲しくなりました」と。
 そして、ひとり息子の希望に、両親は困った笑みを浮かべるに違いない。

「美春ちゃん、可愛いですね」

 笑顔で美春の可愛らしさを口にする学。大介の考えは大当たりだ。
 ――しかし、この後が違った……。

「僕、美春ちゃんをお嫁さんに貰っても良いですか?」

 大介の動きは止まる。笑顔も固まったが息も止まった。それだけ彼は妙なショックを受けたのだ。
 だが、夫がショックを受けているのも知らず、エリは手を叩いて大はしゃぎだった。
「きゃぁっ、凄いっ、美春っ! 学君、カッコ良いし頭は良いし会社の跡取りだし。今からこんな素敵な彼氏が出来ちゃってどうしよう、ねぇ、さくらちゃん。学君がウチの娘貰ってくれるって! 良いのかしら!」
「もぅ、エリちゃんったら。大介さんとエリちゃんの娘さんなら大歓迎よ。これは婚約成立ね」
 学の母親、さくらも上機嫌だ。横に座る夫の一に同意を求めると、一も楽しげな笑顔を見せる。
「そうだな。美春ちゃんが六歳になれば学は十八歳になる。そうしたら結納だけでもしておくか」
「あら素敵。じゃぁ、美春ちゃんが十六歳になったらお嫁に貰いましょう。……どう? 学」
 一の意見に同意したさくらは、当の本人に話を振る。
 もちろん学は眉目秀麗を絵で表したような笑顔で答えた。
「はい。異存は有りません。お嫁に貰う前も、美春ちゃんを大切にします」

 実に誠実で優秀な答えだ。盛り上がる大人達を置いて、学は美春を見詰めた。
「美春ちゃんは、僕のお嫁さんになるんだからね」
 そして彼は、心に思い浮かぶままにその言葉を口にしたのだ。

「愛してるよ。結婚しようね」
 十二歳にもなれば、言葉の意味は重々に分かっている。本来は大人が口にする言葉。少々照れくさくは有っても、その言葉を口にしたくなるほど学は美春が可愛くて堪らなかったのだ。
 小さく囁いた彼の唇は、マシュマロの頬に触れる。
 美春の頬が、色濃い桜色に変わった気がした。

 生後一か月の美春と、十二歳の学との間で作られる世界。
 あまりにも微笑ましいその光景に、大人達は入っていけず眺めるだけだ。
「美春ちゃんは、エリちゃんみたいに可愛くて、大介さんみたいに優しい女の子になるんだろうなぁ。やだわぁ、楽しみ」
「学君は、一さんやさくらちゃんに似て、綺麗だし頭も良いし、ホントに王子様みたいな子よねぇ。美春は幸せだわぁ」
 盛り上がる母親同士。そして、最早未来の妻に目を付けた、息子の洞察力を頼もしく思う一。
 どこを見ても和やかで平和な雰囲気の中……。

 和やかになれない人物が、ひとり……。

 ――――大介だ。






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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 【もしも、学と美春が12歳差だったら】
 番外編『僕のお姫様』数話お付き合いくださいね。

 いや、もうね、何と言うか、同い年だろうと12歳差だろうと、学君は出会った瞬間にプロポーズしてしまうと思うのですよ。
 美春ちゃんの為なら、彼は喜んでロリコンの称号を……(ry
 
 さてさて、将来を決める小さな恋人達を見守る両親達ですが……。
 もちろん、心穏やかになれないのは、大介さんですよねぇ。(笑)
 彼は反論するのでしょうか……。

 では、次回!!





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Re: こんにちは^^(愛水さんへお返事です8/22)

こんにちは。

メルアド記入がありましたので、そちらにお返事させて頂きました。

未着のようでしたら御連絡下さいね。

ツキハラコトセさんへお返事です8/22

コトセさん、こんにちは!

 番外編、楽しんで頂けているようでなによりです!

 っていうか、私が無茶苦茶楽しんで書いてるんですけど。(笑)

 ちょっとした妄想ではありますが、お付き合い頂けますと嬉しいです。(*^^*)
 淀みない美春ちゃん、堪能して下さいね。

 有難うございました!

 ……ところで、コトセさん、サウスポーなんですか?

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