「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

【もしも企画】番外編『僕のお姫様』act.2

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 大介の動揺は仕方の無い事だ。
 結婚して十年以上。やっと授かった初めての子供。
 それも、望んだ通りの可愛らしい女の子だ。
 エリが入院中も、美春が可愛くて可愛くて、出来るなら病院に泊まり込みたかったくらいだった。
 これからどんな風に成長してくれるのか楽しみで堪らない娘なのに、生後一カ月で、最早将来を決められてしまったのだ。

(いや……、学君だって、滅多に見ない赤ん坊が可愛い一心で言っているだけだ……)
 大介はそう思い込もうとする。どこの世界に生後一か月の赤ん坊を見て「結婚したい」などと思う男がいるのだ。いくらその子が可愛くても、そんな男はいないだろう。
 言うならば、若気の至り。その場の勢い。
 学はとても頭が良く、礼節を重んじる子供だ。赤ん坊であっても美春を女性として扱い、男性としての心遣いを見せただけだ。いささか早過ぎる「社交辞令」とでも言おうか。
(そうだそうだ。きっとそうだ)
 大介はその考えで納得をする事にした。生後一カ月の娘に結婚話など、今から本気にされてたまるか。一やさくらだって、本気であるはずなど無い。

 ――だが……。大介は口にしようとしていたコーヒーカップをはたと止め、談笑する妻達を笑顔で眺める幼馴染の顔を盗み見る。
 一は、妻のさくらと十歳差だ。
 二人が出会ったのは、一が二十四歳、さくらが十四歳の時。しかも、さくらは自他共に認める童顔で、当時十四歳であってもそれ相応には見えなかった事を大介も知っている。
 それでも一は、彼女の可愛らしさが気に入ったという。

(この親にして……、この子あり……? か……?)

 絶対に口には出せない言葉が頭を駆け巡る中、大介は我娘の未来を案ずる。

 サンルームで大人が入り込めない世界を作る、十二歳の少年と、生後一カ月の赤ん坊。
 その姿を、彼は胃が熱くなる思いで見詰めた。


*****

 ――――六年後。

「で、結納なのだか……」
「まだ早いっっ!」
 一の申し出を、大介は猛然と否定する。この会話をここ一カ月ほど毎日繰り返しているのだ。
 葉山家のリビングで大理石のテーブルをバンバンと叩きながら、大介は主張を曲げない。
「みっ、美春はまだ六歳なんだぞ! なんで今から結納なんだ!」
「学が十八歳になったら結納を交わそうと言ってあっただろう」
「今からそんな早まった事をして、将来何かあって婚約破棄とかになったらどうするんだ。傷付くのは美春だぞ。もう少し大きくなって、物事がハッキリと分かるようになってから、改めてふたりの気持ちを聞いてだな……」
 必死になって抵抗を試みる大介だが、一は無言で隣りのサンルームを指差した。

 そこには、十八歳になった学の膝に六歳の美春が乗って本を見ているという、何とも微笑ましい光景があるのだ。
「凄いな、美春。簡単な漢字が入った本なら読めるんだね」
「学お兄ちゃんが教えてくれたからだよ? 美春ねぇ、年長さんの中で一番御本読むの上手だって言われたんだよ」
 学の膝で誇らしげな笑みを見せる美春は、大きくうねる栗色の長い癖毛を揺らし、赤ん坊の頃と変わらない白い肌に頬を桜色に染め、学の心を和ませる。
 にこりと微笑んで美春の頭を撫でる学。スラリとした長身と、女性のみならず男性も見惚れてしまいそうな容姿を持った彼は、小さな美春から見ると本当に王子様に見えているのかもしれない。
「ねぇ、美春。そろそろ、『学お兄ちゃん』はやめようか」
「どうして?」
 学の提案に、美春は小首を傾げた。小さな時から「学お兄ちゃん」と呼んでいるのだ。今更どう変えろというのだろう。
 不思議そうな顔をする美春の頬に、学は軽く唇を触れさせた。
「だってね、美春は僕のお嫁さんになるんだろう? なのに、『お兄ちゃん』じゃおかしいじゃないか」
 唇が離れると、美春の頬はもっと色濃くなった。照れてモジモジと身体を動かす美春の頭を撫で、学は「ねっ?」と同意を求める。
 美春は学の胸に顔をうずめ、小さな体で抱き付いた。

「……学くん、好き……」

 大人を呼び捨てにしてはいけない。ならばどう呼ぼう。考えがあまりハッキリとまとまらないうちに、美春の口から出たのはその言葉だった。

 そんなふたりを、言葉を失ったままリビングから眺めていた大介は、すかさず一の再質問にあった。
「さて? 結納はいつにしようか?」


*****


 ――――更に四年後。

「やだやだやだやだやだやだやだやだー! 来ないで学君っ!」
 光野家の玄関先で、美春は学の姿を見るなり、顔を真っ赤にして二階へと駆け上がってしまった。
 もちろん学は呆然とする。
 美春が生まれてこの十年、彼女からこんな扱いを受けた事は無い。
 大学の帰り、コンビニで新作スイーツを見付けた学。これは美春と一緒に食べようと購入し、飲み会の誘いも断って美春の元へとやって来たというのに……。
 二十二年間生きて来て、男としての自分がこんなにもショックを受けているのは初めてではないだろうか。

 立ち竦む学を、大介とエリが何とも申し訳なさそうな表情で見詰めている。
 だが、黙っている訳にもいかないのだ。大介はひとつ咳払いをして、父親として学に申し出る。
「あー、なんだ、……学君、……ちょっと、頼みがあるんだが……」
「はい……」
 学は相変わらず呆然としたまま大介へ顔を向ける。こんな時に頼み事とは何だろうと思う前に、学は美春から受けた拒絶が堪らなくショックで平常心が保てない。

「美春とだな、ふたりきりで会うのはやめてくれないか」
「は?」
「だからだな、ふたりで部屋にこもったり、二人で出掛けたり……」
「どうしてですか?」
「いや、つまりだな……」
 言い淀む大介を前に、学の不安は煽られていく。
 いったい、何があったというのだろう……。







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 子供の戯言では終わらなかった婚約話。
 六年後のふたり、そして更に四年後。
 相変わらずべたべたくっついてはいたのですが、十歳の美春ちゃんがいきなり学君を拒否し始めました。
 一体原因は何なのでしょう……。

 十八歳と二十二歳の学君。
 本編の性格とは豪い違いです。(笑)
 思うのですが……。彼は思春期の頃に同い年の美春ちゃんと意地の張り合いをしていなければ、あそこまでワイルドな性格にはならなかったのではないかと思うのです。
 小さなお姫様だけを、ずっと見守って来たのなら、幼少の頃の性格そのままで成長したのではないかと……考えてみたりもしました。
 「こんなの学じゃない!!」って言われちゃいそうですが……。そこはほら、パラレルって事で……。(^^ゞ

 お話を続けさせて下さいね。
 では、次回!!





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Re: いい感じ^^(愛水さんへお返事です8/23)


愛水さん、こんにちは!

 面白いって言って頂けるとやっぱり嬉しいですねぇ~(^^♪

 引き続きお楽しみ頂けるように頑張ります。^^

 有難うございました!

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