「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

【もしも企画】番外編『僕のお姫様』act.3

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「何か、あったんですか?」
 学にはそう訊くしか術は無い。
 美春と出掛ける、いわゆるデートや、ふたりで互いの部屋を行き来して過ごす時間は、学にとって、美春にとっても幸せな時間なのだ。それを「やめろ」というのは、厳しい頼みではないのだろうか。
 ふたりは四年前に結納を交わし、既に“婚約者”なのだ。六年後、美春が十六歳になったら挙式をする予定も立っているというのに。

 理由を言い淀む大介を見るに見かね、エリが笑って口を出した。
「あのね、美春、“女の人”になっちゃったのよ」
「……え?」
「初めて生理が来たの。今日」

 学はハァっと安堵の息を吐く。
 初潮に動揺して、美春は学を避けたのだ。身体の異変を初めて経験し、恥ずかしさと不安でどうしたら良いのか分からなくなってしまったのだろう。
 美春の態度がおかしかった原因は分かった。だが、何故大介は「ふたりで会うな」などと言ったのだろう。
 察しの良い学はその理由にもすぐに気付く。彼は大介へと向き直り、キッと眉を吊り上げ宣言をしたのだ。

「お父さん! いくら美春が大人の身体になったからって、僕、少なくともあと四年は何もしません!」

 いきなり思惑を悟られ、大介は躊躇する。
 生理が始まったという事は、美春は女の身体になったという事だ。未熟なりとも、女としての機能を得た事になる。
 ――異常なほど仲の良い、十歳と二十二歳。
 心配をする事こそ笑い話なのかもしれない。だが、もしも、……もしも、間違いでもあったら……。
 おかしいかもしれない。きっと他人に言えば「あり得ない」と笑い飛ばされてしまうかもしれない。しかし、父親が心配をしてしまうほど、ふたりは仲が良過ぎるのだ。

 大介の不安を言い当てた学だが、彼は爽やか過ぎる笑顔で今度は大介の安心を誘った。
「ですから、そんな悲しいお願いをしないでください。僕は最初にお約束しました。結婚する前も、美春を大切にするって」

 ――大介には、学が聖人君子に見える……。
(これは、本音だろうか……)
 つい疑ってしまった自分が凄く悪い人間のように思え、大介は「分かった、すまない」と、コクコク頷いてしまった。

「分かって頂けて良かったです。これ、お父さんにお土産です」
 学は爽やかな笑顔を崩さぬまま、美春の為に買ったスイーツの他に持っていたビールの袋を大介の手に押し付け、足取りも軽やかに美春の部屋がある二階へと上がっていった。 

 学の姿が見えなくなると、大介はビールを片手に溜息をつく。
「僕は……、一生学君にやり込められて終わるのかな……」
 大介は、学を嫌っている訳ではない。賢く気が利く学を、彼だって息子のように可愛がってきた。しかし、溺愛してやまない娘に早々と権利を付けた男が彼なのだと思うと、時々居た堪れない気持ちにもなるのだ。

 消沈する夫の背をポンッと優しく叩き、彼の手からビールの袋を引き取って、エリは穏やかに確信をつく。
「……それでも、学君以外の男の子が、同じ様な事を美春にしたら、大介はきっと物凄く怒るわよね? 産まれたばかりの美春を『お嫁さんに下さい』なんて言われて、『まさかな』で済ませられたのも、学君だったから、なんでしょう?」
 困った顔で眉を落とした大介は、学が消えた二階へ視線を流した。
「……そうだな」
 不安を抱えながらも、今まで大きな不満も起こらなかった。
 それは、彼なら大丈夫だと、十年前のサンルームで大介が学を認めた証拠なのだ。


 大介とエリがリビングへと戻った頃、学は美春の部屋のドアを開けた。
「……美春?」
 声をかけると、小さな肩がピクリと震える。美春はベッドの上で壁に向かって膝を抱え座り込んでいた。
「こっち向いて。美春?」
 優しく声をかけるが、美春は振り向かない。
「美春」
 袋をベッドの上へ置き、学も膝を乗せる。ベッドがギシリと軋み学の気配を感じると、美春は慌てて振り返った。
「イヤっ! 来ないでっ! 今日は学君に会いたくないの!」
 顔を真っ赤にして振り返る美春は涙目だ。脚を崩し、逃げるように壁側へ張り付いてしまった彼女は、両肩を竦め強くスカートを握りながら脚の間を押さえる。

「どうして、僕に会いたくないの?」
「だって……、だって、美春……、変なんだもん……」
「どうして? どこが変なの? いつも通り可愛いよ」
「だって……、だって……、え、……エッチな所から血が出てるんだよ……? 恥ずかしいよ……。治るまで学君に会いたくないよ……。こんな美春、学君だって嫌でしょう?」
 とうとう彼女は涙を流して、めそめそと泣き出してしまった。
 恥ずかしくて堪らない原因をスカートごと押さえているので、涙を隠す事も出来ないまま、紅潮した頬に透明な雫を零し続ける。
 実は「エッチな所」という例え方が可愛らしくて、学はつい噴き出しそうになってしまうが、身体の異変を学に知られるのが恥ずかしくて堪らなかったというその気持ちを思うと、笑う事など出来ない。
 自分の身体がおかしくなってしまった。学に嫌われてしまうのではないか。美春は本気で悩んで、悲しくなってしまったのだろう。

「恥ずかしくないよ……」
 学はゆっくりとベッドへ上がり、彼女の頬を流れる涙を指で払った。
「全然恥ずかしくなんかないのに……。とても良い事なのに、……どうして泣くの?」
「だって……」
「美春の身体は、僕の為に変わってくれようとしているんだよ?」
「……学君の為?」
「うん」
 少し安心したのか、美春の肩が落ちる。学はにこりと笑って、脚の間を押さえていた彼女の両手を取りキュッと握った。
「美春は、僕のお嫁さんになるんだろう?」
「うん……」
「だからね、僕のお嫁さんになる準備を、身体が始めてくれたんだよ。美春の身体に変化が起こったのは僕の為なんだから、僕に知られたら恥ずかしいとか、僕に会いたくないっていうのは間違いなんだよ」

 大きな美春の瞳が更に大きくなり、学の頬笑みに吊られて彼女の口元にも笑みが浮かんだ。
「学君の、為なんだ……?」
「そうだよ。だから恥ずかしがらないで。会いたくないなんて言われたら、僕悲しいよ……」
「悲しい? 学君、泣いちゃう?」
「美春に『学君イヤダ』なんて言われたら、泣いちゃうよ」
 壁に張り付いていた美春は膝を進め、学を見詰めると、彼の頬にチュッとキスをした。
「ごめんね……、学君」

 美春の頬にお返しのキスをして、学は美春の頭を撫でる。えへへ、と恥ずかしそうに笑う美春は、悩みも悲しみも解決して嬉しそうだ。

 この後二人は、甘いスイーツを食べながら、いつもと変わらない幸せな時間を過ごした。







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 美春ちゃんが学君を避けた理由は、こういう事でした……。
 に、したって……、学君、美春ちゃんを手懐けすぎ。(笑)
 美春ちゃん、調教され過ぎ。(その言い方もどうかと……)
 大介さん、心配し過ぎ!(いや、彼も必死なのです)
 まぁ、幸せで堪らない、22歳と10歳なのです。

 さて、色々ありますが……。
 更に、数年後の二人が登場します……。
 そろそろ美春ちゃんもお年頃。またもやちょっとした問題が……。

 では、次回!!




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あきのさんへお返事です8/24

あきのさん、こんにちは!

 第11部、お付き合い頂き有難うございました!

 そしてそして、番外編を気に入って頂けてとても嬉しいです!!
 12歳差のお話は、本当に書いていて楽しかったんですよ。^^
 結婚式の日で終わりでしたが、その後の妄想も膨らんでしまいます。(笑)

 こんなほんわりした歳の差モノなら、別作にして書いてしまいたいとも思いましたが、これはきっと元々の学と美春があるから楽しめたんだろうな、とも思います。

 私も、あきのさんと一緒で、妄想をふくらませて楽しもうと思います。^m^

 また第12部も宜しくお願いします。^^

 有難うございました!

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