「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

【もしも企画】番外編『僕のお姫様』act.4

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 ――――美春が生まれて、十四年。

 彼女は、とてもとても素直で純粋な少女へと成長した。
 それは、優しい両親や質の良い友達、そして何より、生まれた時から彼女を見守り続けてくれた学のお陰であると言っても決して過言ではない。

 だが、人には成長期という物があり、それは反抗期とも呼ばれ、また十代においては思春期とも称される。
 十四歳の美春は思春期だ。
 周囲や環境の様々な変化に敏感になる年頃ではあるが、彼女は特に酷い感情の起伏などを見せた事が無い。「美春には反抗期が無い」と、大介に言わしめるほどだ。

 だが、両親は知らない。

 たったひとりにだけ、美春が“反抗期”である事を。


「美春」
 呼びかけられるのは数回目。けれど美春は返事をしない。
「美春っ」
 形良く可愛らしいピンク色の唇を尖らせ、眉を寄せて明後日の方向を向いたままだ。
「美春、アイスが融けるよ?」
 アイスの単語に一瞬ピクリと瞳が反応を見せるが、彼女はソファの上に脚を崩して座り、腕組みをしたまま微動だにしない。
 自室のデスクに積まれた仕事の確認をしていた学は、美春の態度を横目で見てクスリと笑い、腕を組みながらゆっくりと彼女に近付いた。
「あれぇ、美春。そうやって腕を組んでいると分かるけど、最近また胸おっきくなった? それともカップが変わったのかな?」
 口調こそ至って明るく爽やかではあるが、言っている内容は美春の感情を煽るのに充分だ。
「まっ、ま……、まなぶくんのエッチ!!」
 美春は慌てて胸の下で組んでいた腕を解き、身体の前で交差させて学の視線から胸を隠す。
「どっ、どこ見てるのぉ! 信じらんないっ!」
「うん。最近の美春、またスタイルが良くなって綺麗になったなぁって、嬉しくなって眺めてたんだよ」
「う、嘘っ! 学君が眺めていたのは書類だもん! 美春じゃないもん! 学君は、美春よりお仕事を眺めてる方が楽しいんだもん!」
「美春?」

 最近、どうもご機嫌斜めらしい美春。
 反抗期の一環だろうかと考え、さほど気にはしていなかった学だが、何となくご機嫌斜めの原因が分かり掛け、赤くなってムスッと脹れる彼女の横に腰を下ろした。

「学君は……、お仕事してる方が楽しいんだもん……。お仕事に行けば、綺麗な女の人もいるし……。美春といるより、美春なんかを見てるより、お仕事に行って、綺麗な女の人達とお酒飲む方が楽しいんでしょう……」
 学が隣に座った途端、ぽろぽろと零れ始まる不満。これは恐らく、ずっと心の中に溜まっていたが口には出せずにいた気持ちなのだろう。

 学も二十六歳だ。家業の葉山製薬では専務の役職に就き、忙しい毎日を送っている。
 ここのところ、忙しさもあって二週間ほど土日の休みが取れず、美春に構ってやる事が出来なかった。
 夜も残業で遅い帰宅が続いていたので、会えない日が続く分、美春は寂しかったのだろう。

「ねぇ、美春。『綺麗な女の人』って何?」
「……秘書さん達とか、会社のOLさんとか、お酒出してくれるお店のお姉さんとか……」
「それが、美春んが言う『綺麗な女の人』なの?」
「……学君は……、大人だし、カッコイイし、……女の人にモテるでしょう? 学君だって、大人の女の人の方がいいでしょ……。美春と一緒にいるより……」
「僕にとっての“世界一綺麗な女の子”は、美春だよ」

 溜めていた言葉を吐き出していた美春の口が止まる。まだ不安で泣きそうな顔を上げると、そこには美春の王子様が微笑んでいた。
「最近、ほったらかしのようになっていてごめんね。……でも、やるべき事はきちんとやっておかないと、もっと美春と一緒にいる時間が作れなくなってしまう。僕はね、出来るなら会社のデスクに美春を飾っておきたいくらい、毎日美春といたいんだよ」
「嘘……」
「嘘じゃないよ? 僕が美春に嘘をついた事があったかい? 美春は、僕を信用してくれないの?」
 学に見詰められ、美春は頬を染めて下唇を噛む。が、すぐに強気の態度で学に要求をした。
「学君、……キスして」

 学はにこりと微笑み、いつものように美春の頬にキスをする。
 希望通りにしたというのに、何故かその瞬間、美春は涙を零し始めた。
「美春? どうしたの?」
 何故泣いてしまったのか、流石に学にも分からない。すると美春は、ヒックとしゃくり上げながら自分の唇に人差し指を当てたのだ。
「どうして……、こっちじゃないの?」
「こっち、って……、唇?」
「学君……、いっつもほっぺばっかりで、……こっちにしてくれた事無い……。そんなのおかしいって、お友達に言われた……」
 美春は俯き、手の甲で涙を拭う。
「好き同士なのに……。学君は大人なのに……。唇のキスをした事が無いのは変だ、って。それ以上の事もしちゃってるお友達もいるのに……、美春は大人の男の人と婚約してるのに、そんな事もないのはおかしいって……」

「お友達と、そう言うお話、するんだ?」
「……うん」
 思春期の女の子達が交わす、興味本位の大人の世界。
 見聞きしたものから得る、憶測と興味と、間違った“大人の常識”。
 大人から見れば、彼女達の見解に失笑を誘われる事もあれど、この年代の彼女達にとってはそれも大切な成長過程のひとつ。
 どんなに大切にされ純泉の中で育った美春とて、避けては通れない感情の道なのだ。







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 14歳と26歳。とうとう美春ちゃんも思春期です。 
 まぁ、年頃になってくれば、考える事が生々しくなって来てもしょうがない事でして……。
 特に好きな人がいれば、こんな悩みが先に立ちますよね。
 おまけに彼氏は大人だし、会社に行けば綺麗な女の人が沢山いるし。自分には手出ししてくれないし。
 嫌でも拗ねちゃう訳です。

 でもね、そこは学君ですから。
 上手く彼女を説得してもらいましょうね。

 では、次回!!





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