「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛 完璧な愛・第11部

【もしも企画】番外編『僕のお姫様』act.5

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「学君は、会社で綺麗な女の人と一緒にいて、色々満足してるから、女の子としての美春になんて、興味無いでしょう……?」

 ネクタイを締め、スーツを着て歩く学。仕事をしている姿を見に行った事もあるが、美春が知っている学ではないのではないかと疑うほどカッコ良くて、凛々しくて、そして、怖いほど大人の男の人だった。

 だから美春は、余計に心配になったのだ。
 学は大人で、周囲にも大人の女性が沢山いて。でも、自分は子供で。――それだから、学は仕事ばかりして美春の傍にいてくれないのではないかと。

「美春」
 呼びかけられて、美春はゆっくりと顔を上げる。
 今まで涙が流れていた両頬に学の手が添えられ、憶測の悲しみに震えていた柔らかな唇に……。――学の、唇が重なった。

「――我慢してるのに……」
 重ねただけの唇をゆっくりと離し、学は苦笑いをする。
「酷いなぁ、美春。煽らないでよ」
「あっ、あ、煽るってっ」
 いきなりのキスに戸惑っていると、学は指でネクタイを緩める。その仕草にドキッとしてしまったのは、“ネクタイを緩め、その後の行動”を想像してしまったからだ。

だが、期待と戸惑いで身体を固めた美春に、学は珍しく意地悪を言う。
「でも、これ以上はしない」
「こっ……、これ以上の事って……、学君のエッチっ!」
「しない、って言ってるんだから、エッチじゃないよ」
「……だ、だってっ……、ナニをするとかしないとか、……そんな事っ……」
「そこまで想像する、美春の方がエッチじゃないか」
「学君っ!」
 ムキになる美春の唇に、もう一度可愛らしいキスを落とし、学は彼女の反抗を止める。

 花恥ずかしげに頬を染める美春を見詰め、学は優しく言い聞かせた。
「僕はね、美春を大切にするって、美春をお嫁さんに貰う約束をした時に皆の前で誓ったんだ。だから、本当にお嫁さんに貰うまで、本当の意味で美春を大切にしたいんだよ」
「……学君……」
「美春にキスしなかったのだって、懸命に耐えていたのに……。でも本当にこの先の事はしないよ。――、まぁ、お嫁さんに貰った暁には、遠慮はしないけど」
「ちょっ……!」
 最後のひと言に言い返そうとした美春を抱き寄せ、学は優しく腕の中に美春を囲う。

「早く美春をお嫁さんにしたいな……。そうしたら、こんな心配をさせる事もないのに」

 学の優しい気持ちを受けて、美春も彼の背に腕を回した。

「美春も、……早く学君のお嫁さんになりたい……」


 ――――ふたりが結ばれる日まで、あと二年。


*****


「人、人、人……、ぱくっ……よしっ」
 掌に“人”の字を書き込み、飲み込む。緊張感を緩和するおまじないとして世間に広く知られてはいるが、それは緊張する場面の直前でやるから効果があるのであって、前日の夜ではあまり意味を為さないのではないだろうか。
 だが成功率の高いおまじないを実行した美春は、飲み込んだ事に握り拳を作り、小さなガッツポーズまでしてしまう。
 彼女的には自信があるようなのだが、その姿は学の笑みを誘った。
「美春、今からやって大丈夫なのかい? それでも効き目は有るの?」
「明日もやるからいいのっ。んもぅ、その気になってるんだからいいでしょうっ」
 学のひと言に反抗を見せるものの、効き目があるのかと訊かれると不安になる。彼女は更に安心要素を上乗せした。
「朝起きてから、ご飯食べてから、着替えてから、式場に行ってから、控室に入ってから……、とにかく結婚式本番まで何回でもやるのぉ!」
 美春の可愛らしい剣幕に、学は「はいはい」と頷く。

 この春、十六歳になった美春。
 彼女は明日、二十八歳の婚約者、学と結婚をする。
 美春の友人関係は高校生がほとんどである為、それに考慮して挙式披露宴は土曜日の昼間に行われるのだ。
 結婚式の前日を、学の部屋で一緒に過ごすふたり。一緒にいられる楽しい時間でありながら、明日の結婚式の緊張で、美春としては落ち着いてなどいられない。

 緊張をしているのは、結婚式だから、という理由だけではない。
 友達の誰よりも早く結婚をするのだ。花嫁姿を同年代の友達にも見られるのかと思うと、ちょっと照れ臭い。しかし美春の王子様を見せびらかしたい気持ちもあるので、優越感も持っていたりする。
 小さな頃から大好きだった学のお嫁さんに、やっとなれるのだ。そう考えるだけで胸の鼓動は跳ね上がり、跳ね上がり過ぎて止まってしまいそう。
 意識して考えないよう努めてはいるが、――披露宴後、初夜なるものの事を考えると……。
 止まってしまいそうを通り越して、心臓が溶けて無くなってしまいそうだ。

「学君は、やっぱり余裕だよね。明日が結婚式なのに……。男の人って、緊張しないのかなぁ……。それとも、やっぱり学君が大人だから?」
 ウロウロと部屋の中を歩き回っていた足を止め、恨みがましい視線を学へと送る。美春がこんなにもソワソワしているのに、もうひとりの主役となるべき花婿は、いつもと変わりなく冷静だ。
 今夜は流石に持ち帰った仕事もなく、ゆったりとソファに座り、英字新聞を片手にコーヒーカップなぞを傾けている。
(学君だけ余裕で……ずるい……)
 ついつい気持ちも我儘になってしまい、美春は拗ねて唇を尖らす。緊張もせずにいられる学が、ちょっと羨ましいのだ……。







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 ファーストキスは14歳でした。(///∇//)
 本編とは似ても似つかない可愛らしいキスですが……。(こらこら)
 美春ちゃんのプチ反抗期も、アッサリ止めてしまった学君です。

 そしてとうとう、学君28歳、美春ちゃん16歳です。
 28歳の学君かぁ……。本編でもまだ24歳ですからねぇ……。ちょっと変な気分ですが……。(でも、以前、番外編で41歳の学パパを書いた事があるのですが、御存知ですか?(笑))
 結婚式を控えて緊張しまくりの美春ちゃん。
 さて二人は、前日をどう過ごすのでしょう……。

 【もしも企画】もあと数話。
 もう少しパラレルにお付き合いくださいね。

 では、次回!!




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