理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第1章4(プライベートプール)

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「水着なんて、いつの間に持って来ていたの?」
 プールサイドに座ったまま、勢い良く足を振り上げる。バシャリと跳ね上がった水飛沫はプライベートプールを照らす照明に輝き、宝石のような煌めく粒を作って水の中に立つ学に降りかかった。
「家から持って来させたんだよ。ほら、俺の部屋に置いてあっただろう? 今年作った水着」
 ひと泳ぎして既に水に濡れている学は、水をかけられても特に怒る訳ではない。かえって彼女の悪戯に笑い声を上げる様は、仕事中は綺麗に流されている前髪が顔にかかり、どことなく学生時代の彼を思わせる清々しさだ。
 前髪を伝い、学の顔に雫がしたたる。昔から変わらない、眉目秀麗を絵に描いたような凛々しさ。そんな彼を自分のものだと認識している美春は、彼の肌をなぞる雫に僅かばかりの嫉妬を覚えた。
「誰に持って来させたの? メイドさん?」
 水滴に嫉妬をする自分に気恥しさを感じ、水もしたたる良い男の様相で相変わらず惑わせてくれる学に、もうひと蹴り、飛沫をお見舞いする。
「何を言うか。葉山邸のメイドは、男性を交えた複数人と一緒じゃない限り、ひとりで外出仕事をすることは禁じられているんだぞ。部屋から出して用意したのはメイドだけど、持って来てくれたのは警備員だ」
「部屋から……は良いけどさ……、どうせなら会社に持って来てくれるのも女の人の方が……。は、恥ずかしいじゃない……、もし、何が入ってるのかなって覗かれでもしたら……」
「ウチで雇ってる警備員さん、そんな人じゃないって……。それに、父さんの信念だからしょうがない。メイドといえば邸の社員、家人の言い付けで外へひとりで使いになんか出て、何かあったらどうする。ウチのメイドは、皆童顔で可愛いんだぞ。……父さんの趣味で……」
「……学……、最後のひと言、余計……」
 学の母、さくらがまさしくそのタイプ。童顔で可愛らしいタイプのメイドばかりが邸の中をウロウロしていれば、学もそのくらい言いたくなるというものだ。
 苦笑いで更にもうひと蹴り。三度目をスッと水に流れながらかわした学は、蹴り上げた格好で止まった脚線美を掴んで、水の中へと引き込んだ。
「きゃぁっ!」
 抵抗する間などありはしない。美春は滑るように水の中へと沈み、一度深く沈んでから学に抱き上げられた。
「ままっ、ま、学っ! びっくりしたぁぁっ!」
 本気で驚いているというのに、水の中でしっかりと美春の腰を抱いた学は、楽しげに笑っている。
「ばーかっ、水ばっかかけてくるからだ」
「もうっ!」
 髪をまとめていなかったので、水で乱れた髪が顔に貼り付いてしまった。美春は指で寄せながら拗ねて見せる。
 そんな美春にトドメのひと言。
「あ、ちなみに、ホテルまで届けておいてくれたのは、出かける用事があった須賀さんな」
「だからっ、男の人に頼まないでっ」

 
 ホテルリゾート・マニフィーク・ヒル。ラグジュアリー・スイートルームに付属するプライベートプールに、ふたりの楽しげな笑い声が響く。
 深さ一二〇センチ。楕円形のプール。ふたり用の部屋に付いている物とは思えない広さだ。
 プールはメインルームの窓から出入りが出来る。また、バスルームの脱衣所側にも出入り口があり、プールから出てそのままバスルームへの移動も可能だ。
 この春にオープンし、ホテル側からの招待で一度宿泊した事がある。名前を聞いて美春が「豪華ね」と言っただけの事はあり、いつも利用しているホテルのスイートなどと比べても、家具から調度品にまで一流の製品が使われている拘りようだ。
 ホテルの名前にもなっている「magnifique(マニフィーク)」は、フランス語で「豪華なさま・煌びやかなさま」を表す。決して名前負けをしていない施設だ。

「ホテル側でも水着は調達出来るけど、せっかく作ったのにまだ着ていなかっただろう? これを着た美春、見たかったんだ」
 美春の腰を両腕で抱いたまま、少し身体を離して学は美春を眺める。
 彼女の水着は、黒のホルダーネック。豊満なバストを軽く隠す程度に包んで前交差させたデザインは、ギャザーが美しい波を作り黒の光沢を際立たせる。腰の両端に付いた小さなリングを頼りに隠された下半身は、肝心な部分に当たる布の少なさに、思わずプール前のお手入れを気にしてしまいそうだ。
 ワンピースかセパレートが多かった美春にとっては、デザイン的にセクシーさばかりが気になってしまう。「ふたりきりの時にしか着せない」と学が豪語した通り、プライベートプールならばうってつけの場所だ。

「恥ずかしいわよ……。布が少な過ぎて……」
「何も着ていない姿だって見てるのに」
「“全裸”と“露出度が高い”じゃ、意識が違うわよ」
「俺は、どっちの美春も堪んなく好きだけど?」
 学の唇が首筋に触れる。唇で肌の柔らかさを楽しんでから、水着の線ギリギリまで唇でなぞり、舐め上げる。
「や……ン、……まなぶっ……」
「ホルダーネックは胸の大きさが目立つから、わざとそこだけ軽く隠されると、逆にそそるよな……」
「馬鹿っ……」
 お決まりのひと言を口にして、彼の動きに合わせ喉を反り上げる。学もまた美春の動きに合わせ、顎の線を舌でなぞった。
「ちょっと、下も見てくる」
「え?」
 腕が離れると同時に、学が水中へと沈む。一度底で屈み、水面で顔だけを出してにやりと笑った。
「水の中で見ると、上がってる時とはまた違うエロさを感じるものだよな。何だか学生時代を思い出した。プール授業の時さ、よく水に沈んで美春の水着姿眺めたっけ」
「エロ少年」
「思春期の男なんて皆そんなもんだって」
「ふーん、ホントに見てたの私だった? みーんな同じスクール水着だったでしょ。水に沈んだら誰が誰だか分かんないんじゃないの?」
「いやっ、あの高校生とは思えない、メリハリのある完璧なボディラインは美春で間違いが無い。大体俺が、美春の身体を見間違うはずが無いっ」
 確固たる自信が素晴らしい。いや、いかにも学らしい。美春はクスクス笑って、なかなか顔以外を出さない学の頭を撫でた。
「いつまで沈んでるの? 溺れちゃうよ?」
 美春の手を掴み、ゆっくりと引き寄せる。抱き締める前に唇を合わせ、腕を引いたままプールサイドへと誘導した。
「溺れたいな……」
「駄目よ……。学が溺れても、私じゃ助けられないかも……」
「美春に、溺れたいんだよ……」
 美春の身体をプールサイドへと押し付け、唇に吸い付きながら、学は彼女の身体を水の中で弄りだした。







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後書き

 こんにちは。玉紀直です。
 今日はノンビリいちゃいちゃ。
 プライベートプールなんだから、どうせなら裸で泳いじゃえばいいのに。……とか思ったのは、私だけじゃないですよね……。(笑)
 彼女の水着姿の喜んでしまうのは、高校生だろうと社会人だろうと同じですよね。可愛いもんです。←?

 さてさて、せっかくのプライベートプールですから、今までお見せした事が無いようなシチュで、いちゃこらしてもらいましょうね。^^
 では次回!!





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