理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第1章5(幸せな噂話)

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「ホントはさ、ハイ・ラグジュアリー・スイートを取りたかったんだよな」
 唇から頬、頬から唇、唇から鼻先、瞼から唇。顔中に降り注いで来るキスを受け、美春はくすぐったげに肩を竦める。
「そうしたら、今日からの予約が入っていたらしくて、どうしても部屋を代えられない客らしい。総支配人に謝られたよ。……まぁ、しょうがないよな」
「ふぅん、“葉山の御曹司”でも我儘が通らなかったんだ? 珍しい」
 茶化す美春にゴンゴンッと額を打ち付け、学は笑い声を上げる。
「そんなに違う訳じゃないけど、ハイ・ラグジュアリーは設備がワンランク上になってるから、プールにジャグジープールが別に付いてるだろ」
「こっちだって付いてるじゃない。バスタブにだけど」
「バスとプールじゃ何となく違うだろ?」
「そう?」
 笑う美春の唇を塞ぎ、両手が水着の上から胸を弄り掴む。ゆっくりと揉みしだくと、重なった唇の端から熱い吐息が漏れた。

「水の中なのに、身体が熱くなりそう……」

 学の腰に両腕を回して引き寄せる。美春の求めに応じて密着した下半身は、昂り始めた学の気持ちを水着越しに伝えた。
 自分に触れた学がだんだんと熱くなってくるのを感じるのが、美春はとても好きだ。それだけで愛されていると感じる事が出来る。

「それにしても、“葉山の御曹司”の言い分が通らないなんて、よほどの大物さんが泊る予定なのね」
 追求したい訳ではなかったのだが、何となく気になった。学の要求が通らなかった事など、今まであまり聞いた事が無い。
「外国からの客らしい。まぁ、ホテル自体がフランス企業の系列だしな。ごねるほどの事でもない、また次の機会でもいいさ」
「ふふっ、紗月姫ちゃんにでも頼めば何とかなったかもね」
「そうしたいところだが、“婚前旅行中”だしな」
「お邪魔したら怒られるわよ?」
 甘い雰囲気は和み、ふたりは顔を見合わせて嬉しそうに笑い合った。

 学の従妹、辻川財閥ひとり娘、辻川紗月姫は婚約者とふたりで婚前旅行中だ。
 紗月姫の婚約者は、彼女が生まれた時から世話役として着き従っていた、神藤煌。北欧王国の王室出身で、王位継承権こそ与えられてはいないが、現女王も認めた立派な王子だ。
 それを確認出来たのは、二カ月ほど前。昔から惹かれ合っていたふたりは、身分の格差を気にする事無く婚約者同士となり、高校三年生である紗月姫が夏休みに入ってすぐ婚約発表が行われた。

「婚約発表のお披露目で、招待客の誰も『おかしい』って反応をしなかったわよね。当然よね、あんなにお似合いのふたりなんだもの」
 先日行われた紗月姫と神藤の婚約お披露目パーティーを思い出し、美春は口元をほころばせた。
 天下の辻川財閥ひとり娘。逸脱した才能を持つ彼女は、次期総帥として誰からも認知されている。反面、“花のように可憐で天使のように美しい”と称賛を受けるほどの女性だ。その彼女の婚約者が、なんと従者として着き従っていた神藤。
 だが、一瞬のざわめきはあったものの、特に不思議とする者はいなかった。
 そして彼が、実は王族の血筋を引いているという事実に、誰もが納得をしたのだ。
「周囲がすぐに納得の声を上げるほど、神藤さんの立ち居振る舞いには定評があった。彼の品格は作られたものではなく、身体の内に流れる血筋によるものだからな。誰の目から見ても、あのふたりは結ばれるべきふたりだったって事だよ」
 この件に関して、誰よりも何よりも満足をしているのは学だろう。
 神藤の出生の謎を解き明かしたのは、彼なのだから。
「紗月姫ちゃんと神藤さんが幸せになって、本当に嬉しい。学、ありがとうっ」
 可愛いお礼を口にして、美春が強く抱きつく。上半身が密着すると胸が触れなくなり学は少々不満気だが、それでも可愛い美春を感じられるので良いとし、彼女の頭をキュッと抱き締めた。

「まぁ、だけどな、婚前旅行が温泉だぜ? 渋いよな」
「だって、正確には傷の療養だし」
 学の疑問に、美春が訂正を入れる。表向きは一カ月前に怪我をして入院をした神藤の療養、なのだが、ふたりきりで温泉という辺り、「婚前旅行」と冷やかされても文句は言えない。
 なんといっても、紗月姫が高校を卒業したら、ふたりは結婚をする予定なのだから。
「神藤さんは一応三十代だから、しっとり目で温泉、っていうのも分かるけど、紗月姫ちゃんは女子高生なんだからさ、似たようなものでも、何ていうかスパリゾート系とかさ……」
「いいじゃないっ、ふたりきりならどこへ行ったって楽しいわよ。それに、どこに行ったんだっけ? 由布院? 私だって行ってみたいっ」
 兄代わりの学としては、まだ十八歳の紗月姫に合ったセレクトを薦めたかったのが本音なのだろう。だが、美春が言うとおり、ふたりであるならどこへ行っても楽しいのだ。そして学も、そんな気持ちが痛いほどよく分かる。
 納得した学は、一緒ならどこへ行っても楽しい相手である美春を抱き締め、ひとつのプランを提案した。
「じゃぁ、秋になったら同じ所へ行こうか? あそこは、ウチの父さんと母さんもお気に入りの隠れ宿だから間違いが無い。静かで良い所らしいぞ」
「本当? 嬉しいっ、温泉好きーぃ」
「その前に夏季休暇はD王国へ旅行の予定があるし、楽しみな予定がある分、仕事に張りが出るな。気持ち好く行けるように、ロシュティスの件、頑張ろうな」
「うんっ」

 ロシュティスの件が終われば、ふたりは夏季休暇を取り、神藤の出身国であるD王国へ旅行へ行く。
 これは、神藤の件で奔走し、尽力した学と美春に対する一からの御褒美だ。

「確か明日、紗月姫ちゃん達も帰って来るらしい。日曜日に冷やかしに行こうか」
「悪い“お兄様”ねぇ。冷やかすとかそんな事ばっかり言って」
「だけどな、四日間だぞ? あんな、周囲に何もない様な所に四日間。ナニをしていたのか、『お兄様』としては気になるだろう」
「悪趣味っ」
 相変わらず紗月姫を弄りたがる学を見ていると、ホントに兄妹の様に仲の良い二人が微笑ましい。
 クスクス笑っていると、いきなり身体を離され、真剣な表情をした学の顔が迫って来た。

「さて、人の幸せを噂しているより、そろそろ俺も幸せにさせてくれ。焦らされ過ぎて下半身が麻痺しそうだ」
「私も幸せにしてくれる?」
「天国までイかせてやるよ」
 強気の言葉と同時に、唇が重なった。







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後書き

 こんにちは。玉紀 直です。
 そうそう、噂話はほどほどに。(笑)
 噂のふたりが温泉に行ったお話は、『恋のエトセトラ』に入れさせた頂いたSSですね。『濃蜜療養は露天風呂で』です。
 あのお話は、この時期に被ったものになります。
 日曜日は凄いノロケ話が聞けるのかな?
 年下のノロケに負ける訳にはいきませんよ。美春ちゃんには頑張ってもらわなくては。(何を?)
 周囲が幸せだとこっちまで幸せ気分にはなれますが、そろそろ当人達にも幸せ感じてもらいましょうね。

 では、次回!!





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