理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第6章5(ガーターリングの用途)

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「美春のための特注だ」
「きゃっ」
 ガーターリングを太腿まで上げると、学はその様子が見えるようにスカートをショーツラインギリギリまで捲くり上げた。
 ストッキングの上に装着されていると考えると妙な感じではあるが、それでも美春の脚線美を引き立たせるには充分だ。
「でも私、ガーターストッキングは普段穿かないよ? あ、でも、片方だけってことは、お洒落で着けろってこと? もぅ、学ってば、やらしいなぁ。『これ着けてエッチしようぜ』とか言うんでしょう」
 装飾品としてのご褒美だと思っている美春は、弾んだ声で感じたままを口にする。それを聞いて学はクスクスと笑い出した。
「何だ? 今日は美春の方が言っていることがいやらしいぞ」
「やっ、やだっ、そう?」
 ナイフを性玩具と勘違いしたり、“ご褒美”はエッチ関係だと決めつけたり、今日は美春の方がノリの良さを見せている。
「この五日間、俺、そんなに刺激してたっけ? もしかして美春ちゃんは、いつも以上に発情期なのかなぁ? これは、今夜のデートが楽しみだ」
「学っ、やらしいって、その言い方」
 ニヤニヤする学の額をペンっと叩き、美春はこの状況を誤魔化す。言われてみればどことなく気持ちが浮き立っている自分を感じるのだ。身体がほわりと温かい気がするのは、体温が高いからなのだろうか。
(風邪でもひいたかしら……)

 体内に感じる熱に風邪の可能性を巡らせていると、学が美春の手からナイフを取り上げた。
「そうだな。これを着けてスルのも良いかもな。綺麗な脚がより綺麗に見える。まぁ、その用途で使う前に、本来の用途を教えてやるよ」
「本来の用途?」
 ガーターリングの本来の用途といえば、ストッキングを留めることだろう。
 小首を傾げる美春の視線を受けながら、学はガーターリングの外腿部分にデザインされたベルベットのリボンを指で示す。編み上げ風に仕上げられているその部分にナイフを挟み込んだのだ。押し込んでしまうと、まるでナイフ専用に作られているかのようにピタリと止まる。
「ほら、収納場所が出来ただろう。こうしておけば、いつでも身に着けておける」
「太腿にナイフって……、なんだかスパイ映画に出てくるヒロインみたい。ここだけ見たらカッコいいわね」
 美春は少々照れ臭いようだ。カッコいいし可愛いし変わっている。確かに大いに興味をそそるものだ。だが学は、何故こんな物を用意したのか、そこに疑問が残る。
 ガーターリングだけならばデートで使うのかと想像もできたが、どうやら本来の目的はスマートにナイフを持ち歩くためのものらしい。

「スパイ映画か。それはいい」
 ガーターリングから手を滑らせ、学は美春の脚を指先でなぞる。思わせぶりな指の動きは、美春をゾクゾクさせた。
「どんなスパイ映画に出てくるヒロインより、美春が一番綺麗だよ」
「凄い褒め言葉ね」
「褒め言葉じゃないさ、本当のことだ」
 身を屈めガーターリングに唇を付けると、学はレースの先を咥え引っ張る。そのまま視線を美春へ流し、意味有り気に笑んで唇を放した。
「俺の世界で、ヒロインは美春なんだから」

 鼓動がどくんと体温を上げる前に、腰の奥が熱くなる。
 視線で感じてしまった自分に気付き、美春は危険な視線を遮るべく、掌を横にして彼の目を塞いだ。
「今日の学、なんだかキケン……」
「キケンなのは美春だよ」
 塞がれた手を掴み、学は美春からアイスティーのグラスを取ってテーブルに置くと、彼女の横に腰を下ろし、掴んだ手首ごと引き寄せた。
「言葉の端々で誘われているような気がするのは間違いか? 疼いてるの? デート前に一回ここで抱いてやろうか?」
「馬鹿っ、何言ってるの、駄目っ」
「今、ドキッとしただろう? 期待した?」
「しっ、してない」
 肩から抱き寄せられ、学の胸にしっかりと身体を預けながら美春は見え見えの嘘をつく。引き離そうとするどころか、強く抱きつき彼のスーツにしがみつく手、染まった頬と、もう一度キスを強請りたがる濡れた唇が学の言葉を肯定している。
「ご期待に応えてやりたいところだけど、もうそろそろアラン社長が光野室長と会談を終えるころだろう。せめて見送ってからにしないとな」
「……あ、……そうよね」
 ホッとしつつも、少々残念な気持ちが後を引いた。期待してしまったところがあったらしく、内腿が妙に熱い。
‘(やだ、……もぅ、本当に私、発情期みたいじゃない……)

 アランはグレースと共に、開発研究室の室長室で大介と会談中だ。
 室長と専門的な話し合いがしたいという申し出の裏に、同席を断りたい意図を感じた学は、会談中に出るであろう話題を危惧したが、アランの希望を呑んだ。
 そろそろ二時間になる。終了の連絡が来ても良い頃だ。

 捲くられたままのスカートから剥き出しになっている腿を撫で、学は美春を強く抱き寄せた。
「美春……、しばらくの間、俺から離れる時はこれを着けていろ」
 腿を撫でる手は、ガーターリングを摘まみ、ナイフの上で止まる。
「ナイフは小さくて軽い。行動の邪魔にはならないはずだ。スカートに隠れているから、捲くれない限り誰にも気づかれない」
「……どうして?」
「しばらくの間だけだ。せめて、この一件が終わるまでの間だけで良い。俺がもし傍にいられないときがあれば、……お前を、守ってくれる」 

 理由を問うた美春への回答はない。
 しかし、期限を決めてあるうえ、ナイフをお守りに持って歩けなどと珍しいことを口にする学に、美春はそれ以上を追及することは出来なかった。








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ちゃちゃさんへお返事です12/21

ちゃちゃさん、こんにちは!

 鋭い予想にΣ(ノ°▽°)ノハウッ! っと逃げ腰になってしまいました。(笑)
 でも、そんな雰囲気はありますよね。

 後々、それに絡めたお話も出てきますので、お楽しみ頂ければと思います。^^

 有難うございます!
 素敵なクリスマスを!(*^^*)

NoTitle

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。

株の投資さんへお返事です2/14

こんにちは、御来館頂き、有難うございます。(*^^*)

 気に入って頂けたようで嬉しいです。
 ガーターリングお好きですか?

 是非またいらっしゃってくださいね。^^

 有難うございました。

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