理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第9章7(特別な愛情)

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「つまりさぁ、“もしも”を避けるなら、簡単にエッチしちゃいけない、ってことなんだよね?」
 学が胡坐をかいた片膝に腕と頭を預けてうつ伏せに寝そべっていた美春は、キレが悪いながらもやっとそれを口にした。
 昼間、斉に説明を受けた時からずっと口に出したかったが、ことがことだけに、なかなか確認ができずにいたのだ。
「ん?」
 学は一瞬、何の話だとでも言いたげに膝の美春を見下ろした。
 就寝前のリラックスタイム。パジャマ姿のふたりは、学の膝に美春が上半身を寄りかけるという、のんびりとした形で映画鑑賞中だったのだ。
 観ていたのはフランスの恋愛映画。想い合う男女が、初デートで盛り上がりかけているところだ。ここで出た感想が「簡単にエッチしちゃいけない」では、映画のふたりが可哀相だが、学はすぐに美春が言いたいことの意味を悟った。
 クスリと笑いを漏らし、手にしていたブランデーのグラスをローテーブルへ置いて、そのまま美春の頭を撫でる。
「そうだな、いつ排卵が起こるか分からない状態らしいからな。いつもみたいに『この期間を避ける』っていう方法がとれないから、生理が来るまでは常に危険日候補期間、ってわけだ」
 やけにあっさりと爽やかに悩みの原因を言い放つ学を、美春は疑惑の目で見上げる。
「学は、それでいいの?」
「ん?」
「……だって、いつもみたいに、『安全日だから大丈夫』って言ってエッチできないんだよ?」

 隙さえあれば美春に触っていたいような男に、いつ来るのか分からない生理を待たせるなどということが可能なのだろうか。
 下手をすれば、ロシュティスの一件が解決するまで美春の精神状態は落ち着かないかもしれない。そうなれば、ホルモンバランスも崩れたままだ。
 美春はてっきり学が、「良いわけがないだろう!」と憤るのではないかと思っていた。だが彼は、余裕でにこりと笑うだけだったのだ。
「しょうがないから、明日にでも我社の最高級高品質コンドームでも仕入れてくるか」

 美春は目を大きく見開き、学を凝視する。自分の台詞を後悔することなく微笑み続ける彼を見て、「ええっ!?」と驚きを表しつつ、ガバッと上半身を起こした。
「何でそんなに驚くんだ?」
「だ……、だって……」
 クスクス笑う学を指差し、美春は驚きのあまり正座をしてしまう。学の口からコンドームなどという言葉を聞くとは思っていなかった。
 生理周期がシッカリとしている美春の危険日管理をしてきたのは主に学であるためか、彼には美春の体調を見極める自信がある。
 一度だけ、ホルモンバランスの崩れから美春の身体に悪戯が起こり、少し切ない経験をしてしまったことはあるが、その後も美春は学の特別であることを望み、ふたりは肌に隔たりを作ることなく愛し合ってきた。
 だからこそ、危険日と思われる期間などのセックスは、しっかりと避けてきたのだが……。

「……良いの? 学は」
 恐る恐る訊ねた美春だったが、反対に訊ね返された。
「美春は? 良いか? 昔、『使っちゃいやだ』って言ったのは美春だったけど」
「あ……」
 己の言動を、今更ながら美春は羞恥する。大学三年の時、あれは、ちょっとした彼女の嫉妬から出た言動でもあったのだ。
 学が、昔付き合った女性達と同じにはなりたくない。そのままの彼を感じることを許された、ただひとり特別な存在であり続けたいという、自己満足欲。

「俺はさ……」
 過去の言動に恥ずかしさを感じてしまった美春は、頬を染め、視線だけを横へ逸らす。そんな彼女に、学はそっと顔を近付け囁いた。
「いつも言うように、本当に俺は『いつでもいい』って思っていたし、今でも思っている。俺が美春を愛した証を、美春がその身体に宿してくれるなんて、そんな幸せなことはないだろう? けど、今の美春がまだその可能性に対して戸惑いがあるって言うなら、無理なことはしたくない」
「……学……」
「どうせそんなに長い期間じゃないし、俺は良いよ。そのまま愛せなくても、我慢する」
 優しく唇が触れ、頬を撫でた手が髪を梳く。愛されているという実感に涙が出そうになった美春に、学はコツンッと額をぶつけた。
「それに……、いつ生理が始まってくれるか分からないのにずっと危険日でオアズケじゃ、俺、我慢する自信ないぞ」
「クスッ……、ぃやぁね……」
「でもさ、体調が戻って周期も定まったら、またそのままで美春を感じさせてくれよ?」
「うん。……学、大好き」
 美春は嬉しくなって学に抱きつく。背中をポンポンと叩いて癒してくれる彼に幸せな気持ちをもらいながらも、つい茶化してしまった。
「でも、学クンは随分と大人になりましたねぇ。昔なら『俺がそうしたいし、俺がそれで良いって言ってるんだから良いんだ』って、押し切っちゃいそう」
「若かったしな、俺も」
「やぁね、ほんの三、四年前でしょう?」

 まだまだ、やることも考えもやんちゃだった学を思い出し、美春はクスクスと笑う。茶化しても一緒になって笑ってくれる学に、いつも以上の頼もしさを感じてしまった美春は、頬を染めはにかんだ。
「じゃぁ、……今日は私が、してあげる……」
「ん?」
 学がその意味を悟る前に、美春は彼の腕をすり抜けて身を屈める。
「ほらほら」
 パジャマのズボンを引っ張り、毟るように脱がすと、両脚の間に入り込み、美春はまだ柔らかな“ちっちゃい学”に唇を寄せた。
「無理しなくて良いんだぞ、美春」
「私がしてあげたいのっ。それとも、私のお口じゃ不満ですか?」
「いいえ、大歓迎です」
 おどける美春に即答して、学は美春の頭に手を添え、髪を撫でる。美春の唇は焦らすように内腿を辿り、脚の付け根に強く吸い付いた。
「っと……こら、痛いだろ、そんなに吸いついたら」
「だって、学だって吸い付くじゃない。『俺のものだって証拠』って言って」
 唇をずらし、もう一度吸い付く。学の優しい咎め口調からは想像もつかないほど鮮明に、彼の内股には赤紫のキスマークがついてしまった。
「……私のものだもん……」

 まだのんびりとその身を伸ばす毬の袋を掌で包みあげ、怒張する前の大人しい学を唇が吸いこむ。
 ふにゃりっとした、柔らかいが張りのある餅のような感触に、美春の目尻が和んだ。
 昂ってしまえば、すぐに口唇には収まらない大きさになってしまうのは分かっているが、張り詰める前のこの小動物を愛でているかのような感触が、何ともいえず好きなのだ。
 口の中で舌を絡め、くなくなと動かすと、どんどん育っていく愛欲。
 自分を感じて興奮しているのだという思いで、堪らなくゾクゾクする。
 
 吸い付き動かす舌がぐちゅぐちゅと音を立て、唾液が唇の端から零れていく。指で涎を拾いながら覗かせるピンク色の舌が何ともいえずエロティックで、学は苦笑いを浮かべて彼女の髪を撫でた。
「……愛してるよ、美春」

 明日出社をしたら、すぐにコンドームの手配をしてしまおう。
 学は深く吐息しながら、彼女の誘惑に負ける準備を始めた。








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