理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第11章9(突然の訪問者)

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「エリが? それは嬉しいな。是非部屋へ通すように言ってくれ」
 驚愕する美春に反して、アランは嬉々とした声を上げた。
「分かりました」
 グレースがフロントにアランの意思を伝える間、美春は言葉なく彼を凝視する。これですぐに帰るわけにはいかなくなったとばかりに、彼はまるで勝者の笑みだ。
(お母さんがどうして……。どうしてこんな所までアランに会いに……)
 せっかく母を信じる気持ちができていたというのに、わざわざアランに会いに来たのだろうかと勘繰ってしまうと、再びおかしな思いに捉われそうになってしまうではないか。
「エリを交えて、ミハルと三人で話ができるなんて嬉しいよ。でも、ちょっとだけ、エリとふたりきりで話をさせてくれるかい?」
「え?」
 それは“席を外せ”という意味なのだろうか。美春が首を傾げると、アランはグレースを呼び寄せる。
「グレース、少しの間、ミハルと一緒に隠れていてくれ。そうだな、クローゼットで良い。……隠れる、というよりは、ミハルが逃げないように見張っていて欲しいんだ」
「アラン……、逃げる、って……」
 言い返そうとした美春の腕をグレースが掴む。「こっちよ」と腕を引かれたが、引き返して立ち止まった。
「待って。母が……どうして来たのかは知らないけれど、何故私が隠れなきゃならないの?」
「ふたりで話をさせてあげなさいよ。気を遣うことも知らないの?」
「気を遣うって、そんな必要……」
(恋人同士でもないのに、ふたりきりだなんて……)
 納得いかない様子の美春に顔を寄せ、グレースはポツリと呟く。
「……大人しくいらっしゃい。今朝のこと、話してあげるから」

 今朝の件といえば、例の“親交”だ。
 美春が知りたかったことのひとつではないか。
 抵抗を止め、頷く代わりに美春は大人しくグレースについて歩き出した。
 壁側に大きくとられたクローゼットの中へ入ると、そこにはスーツや服がかけられ荷物が積まれている。美春もハイ・ラグジュアリースイートには泊まったことがあるので、クローゼットがとても広いのは知っていた。そしてもちろん……、
「……どうしてお母さん、ここへ来たんだろう……」
 呟きながら手を触れたのは、大きなマジックミラーだ。初めて見た時は、この設備に驚かされた。
 ミラーの向こうには、ソファで物思いにくつろぐアランがいる。エリのほうから彼を訪ねてくるなど初めてのことなのだろう。アランには、どこかソワソワと心待ちにしている様子が窺える。

 不安に駆られながらミラーを覗く美春を見つめ、グレースは小さなスツールに腰を下ろした。軽く脚を組み、両手の指を組んで膝に置くと、肩の力を抜いて吐息する。
「ミハルは……、凄いのね……」
「え? あ、……何が……?」
 いつエリが来るのかとアラン以上にソワソワしていたが、グレースが今朝の件について教えてくれると言っていたことを思い出し、彼女へ視線を向けた。
「ナイフを突き付けて、アランを拒むなんて……。驚いたわ……」
「だって、それは……。自分を守るためだもの。それに……」
 続けようとしていた言葉を先に思い浮かべ、美春はふわりと愛しさに捉われる。
「学の、ためだから」
 はにかみ浮かべる表情は、ついさっきアランにナイフを突き付け、柳眉を逆立てた女性と同一人物なのだとは思い難いほどに可憐だ。
 どちらが美春の本質なのだろうと、グレースは怪訝に感じながらも、大切な者のために立ち向かえる彼女を、羨んでいる自分に気付く。

(わたし……、ミハルを羨んでばかり……)

「あなた達には呆れるわ……」
 羨望が妬みに変わらぬうちに、グレースは本題に入った。これから話す内容を思い、美春を見つめてほくそ笑む。
「同じことを言ったのよ。マナブも」
「学が?」
「さっき、あなたが言ったのと同じようなこと。『私の心も、身体中の愛も全て、美春にしか反応しない』って」

 美春は胸がドキリと高鳴った。そんな嬉しい言葉を、彼はいつ口にしたのだろう。それよりも、同じ意味合いの言葉を口にしてくれていたというのは、何とも嬉しい事実だ。
「……今朝の“親交”の時よ」
 グレースは淡々と、美春が知りたかったことを口にし出した。


 “男と女が、もっとも早く分かりあえる親交”、グレースが学に言ったその意味は、もちろんセックスでお互いが内に持つ欲望から気質までを分かり合うという意味だ。
 アランが美春を完全に手に入れるためには、学から心を離さなくてはならない。そのために、学を誘惑するようにとグレースは指示をされていた。
 そして彼女は、それを実行したのだ。
 応接室で学を“その気”にさせるため口淫を行おうとした彼女は、ボトムの前を大きく開いた状態で、張り詰めればかなりの頼もしさを感じさせてくれそうな学自身を、両手でやんわりと揉み込んだ。
 硬度を持つ前に目の前に晒してしまおうとした時、グレースの手に学の手がかかる。
「くすぐったいですね。私は時々、笑いが止まらなくなりそうになることがあるので、やめてもらえますか?」
 クールで精悍な学が、少々男の可愛らしさを感じさせる表情でクスクスと笑うさまは、充分にグレースの母性本能をくすぐる。
 学は嫌がってはいない。そう悟った彼女は、腰を上げるよう言い、彼が微かに浮かした途端に、下着ごとズボンを膝まで下げてしまったのだ。








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Re: お久しぶりです(みきちゃんへお返事です3/18)

こんにちは!

 御申告有難うございます!(≧∇≦)
 そうでしたか、あのコメントはみきちゃんでしたかっ。(よ、よかった、予想圏内……)

 お久し振りですが、日参して頂けていると聞いて嬉しいです。^^
 3月4月は色んな意味で変わり目なので、私も忙しさでヘロヘロしてますが、細々書かせて頂きつつ頑張ってます。
 みきちゃんはお変わりありませんか?

 萌ちゃんは気に入って頂けてホント嬉しいですよ~~。
 とにかく楽しんで書かせて頂いた作品だったので、楽しんで読んで頂けたなら最高です。
 番外編、今ちょっと書き直してます。というか、少しだけ長くしようと思って加筆最中なので、UPした時は、また萌ちゃんに会いに来てあげてくださいね。^^

 『理想~』も、折り返し地点に入ってやっと進めやすくなった気がしています。( ̄ー ̄;
 ちょっとノンビリ更新になってしまっていますが、お付き合いのほどよろしくお願い致します。

 有難うございました!

PS,以前、メール送信が上手くいかなかったのを思い出し、こちらにもお返事させて頂きました。
 メール送信もしてみましたが……、到着しなかったらごめんなさい……。( ̄  ̄;;


 
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