理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第11章10(高めてくれる人)

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「素直に脱がされてくれるんですね。やっぱり、こういう接待はよく受けるのかしら」
 思うよりスムーズに事が運びそうな気配に、グレースは気を良くした。
「当社はそんなに接待が荒んでませんよ。私は単に、女性に恥をかかせたくないだけです」
「素敵だわ、葉山専務。こんなボスなら、私も務まりそうです」
 女にズボンを下げられ奉仕を受けようとしている前兆を感じるだけでも、普通の男ならば多少なりの興奮を覚え、陰茎に反応が起こるはずだ。
 だが、グレースが再び手を添えたソレは何の反応も示してはいない。妙な感覚に捉われながらも、彼女は学の脚の付け根に残る悪戯の痕を見つけた。
(キスマーク? ミハルって、意外に積極的なのね……)
 外見からは想像のできない美春の意外な姿を知って、グレースは少し嬉しくなる。だが、この積極性をいずれはアランにも発揮するようになるのかと考えると、軽い嫉妬に襲われた。

 学の手が彼女の頭にかかった。アランのように頭を引き寄せて根元まで押し込まれるのかと一瞬警戒したが、その手は、引き寄せるどころかグレースの顔を押し退けたのだ。
「『女性に恥をかかせたくない』というのは、無駄なことはしないほうが良いという警告ですよ。貴女は男を興奮させることに自信がおありのようだ。自信がある分、自分のフェラテクで勃たなかったらショックでしょう?」
「勃たなかったら、って……」
 学を仰いだ形で頭を固定されながら、グレースは不思議そうに顔をしかめた。女に奉仕をされようとして興奮しない男など、何か他の原因や疾患があるのではないかと疑ってしまう。
「だから、やめた方がいい。私はね、美春じゃないと勃たないんですよ」

 驚いて目を丸くしたグレースから手を離し、興奮する様子を見せない下半身から手を外させ、学は下げられていたズボンを上げてしまった。
「今ここで、貴女が全裸で迫ってきても、貴女が望む“親交”はできないでしょう。貴女だけじゃない、例え世界中の美女が束になって迫ってきても無理ですよ」
 ハハハと冗談めかして笑い、ベルトをシッカリと締め終えてから椅子に深く腰掛ける。両膝をついたまま戸惑うグレースに、学はにこりと笑いかけた。
「私の身体は“美春”にしか反応をしない。つまり、相手が美春ではなければセックスもできないような、男としては不甲斐ない奴なんですよ。でもしょうがない。実際、“美春”でなくては身体どころか心も熱くならないのですから」

 見惚れずにはいられない秀麗な笑みを纏っていた表情は、微かに蔑みの陰を覗かせる。
「だから、貴女に触れられても感じるどころかくすぐったいだけだ。この先、仮に貴女が私の秘書になったとしても、アラン社長と同じような関係にはなれません。――私の心は、身体中の愛も全て、美春ではなくては反応をしない」

 グレースに突きつけられたもの。
 それは、作戦の失敗だけではなく、“女”としての敗北だったのだ。


*****


「学……」
 美春は、溢れそうになる涙を息をつめて耐えた。
 何故、疑ってしまったのだろう、彼を。一時の感情に支配されていたとはいえ、何故、彼が他の女を抱いたなどという戯言を本気にしてしまったのだろう。
 学には美春だけなのだと、美春自身が一番良く分かっているはずではなかったのか。
 美春の身体いっぱいに学が染みついているように、学だって、彼の全てに美春を染み込ませてくれているというのに。

「キスマークの件を口にすれば、美春は簡単に学がわたしを抱いたと信じるだろうと思ったのよ。……少しの間は信じてくれたようだけど、あなた達を壊すには至らなかったみたい」
 今にも泣いてしまいそうな美春を見つめ、グレースはフンッと鼻で笑う。しかしその嘲笑は、美春に対してではなく自分に向けてのものだった。
「ひとりの女しか抱けないだなんて。……心に決めた女にしか勃たないだなんて、……どれだけ意思が強いのよ……。病気かと思っちゃった、誘惑する気なんてなくなったわ……。学の信念っていうか、ポリシーにそれ以上手を出したら自滅してしまいそう……」

 涙が流れそうな気配に、美春は上を向いて何度も瞬きを繰り返した。
 溢れそうな涙は止められても、溢れ出てくる学への愛しさが止まらない。今すぐにここを飛び出して、学の元へ走って行きたい気分だ。
 そんな彼女を苦笑いで見つめ、グレースは思いのほか穏やかな声を出した。
「ほらミハル、泣いている場合じゃないわ。お待ちかねの人が来たみたいよ」

 学の元へ帰るのは、まずエリがここへやってきた理由を確かめてから、それからだ。
 美春は指で軽く涙を押さえ、マジックミラーに目を向ける。
 そこには、今やって来たらしいエリが、出迎えたアランに促されてメインルームへと入ってくる姿があった。







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後書き
 こんにちは。玉紀直です。
 第11章、今回でラストになります。

 こ、ここで終わりっていうのが、何とも歯痒いのですが……。
 ひとまず、学の件は解決ということで。
 まぁ、恐らく、学の元へ帰った時点で、この彼の言動については彼女の追及が始まるとは思いますが。(笑)

 第12章は、エリの件に入ります。
 本当は11章に入れたかったのですが、先に学との繋がりを強めておきたかったので、後に回ってしまいました。
 今章は、私としては「強い美春」をお見せできたのが満足です。^^(自己満足)
 アランにナイフを突き付けるシーンのためだけに、櫻井に泣かされながら練習してもらったという経緯はありますが。(笑)
 
 ひと悶着起こりますが、次章では学の元へ帰る予定です。
 久し振りにらぶらぶイチャイチャさせてあげられるかな? という期待を胸に。
 第12章も、どうぞ宜しくお願い致します。

*第11章終了の活報を上げております。宜しければ御一読ください。

*第12章は、4月1日からになります。





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