理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第14章4(壊れるくらい愛して)*R18

 ←第14章3(悲しみの波紋) →第14章5(涙の誓い)*R18

「どうすることもできないの……?」
 悲しみの波紋の中に入り込んでしまっているのは、櫻井だけではない。
「“法の力”で、美春を取り返せないの?」
 天井を見つめたまま問いかけた涼香は、信ならば何とかしてくれるのではないかという希望を捨てきれずにいた。
 彼ならばきっと。――それは間違いなく、学のためにもなるのだから。
 だが、返ってきたのは、予想通りといえば予想通りの答えだ。
「こうなってしまっては、不可能だ。美春さんがアラン社長の要求を呑むと答えた件は、常識も自己の発言に対しての責任能力も、充分に備わった成人が、自ら決めたことだからね」
 仮に、契約交渉が決裂したのならば、発症促進剤の件を始めとして、いくらでも攻める策はあった。今だって、アラン側の非を問おうと思えばできるのだ。
 しかし……。
「葉山とロシュティスの契約は成立する。今、アラン社長を責めることは、“これから”の関係に悪影響を及ぼしかねないものだ」
 天井から視線をゆっくりと戻した涼香は、いつもは爽やかな笑顔を見せてくれる彼の表情が、例えようもなく悔しげに歪んでいるのを目にして胸が締め付けられた。
「葉山側の利益を考えるなら、手出しはできない。……動く策がないわけじゃない。“法の力”だけで、美春さんを取り返す算段を組むことは可能だ。けれど、それをすれば……」

 それをすれば、葉山側の立場を著しく悪くする。

 理屈ではないのだ。そこには、複雑に絡み合う人間同士の思惑と駆け引きがある……。

「オレは……、“葉山”を、不利な状態へ導くことはできない」
 信も辛いのだ。それは、彼の表情を見ていればストレートに伝わってくる。
 葉山が不利になったって、美春のためならばきっと学が頑張ってくれるだろう。それを予測して、涼香が「それでも美春を取り返して」と頼めば、あるいは信はその算段を組んでくれるのかもしれない。
 だがそれでは、学を苦しめたくない、葉山製薬を、この葉山グループを守りたいと切なる想いから自らを差し出した、美春の気持ちが無駄になってしまう。そして彼女は、それを望まないだろう。
 美春の気持ちを察することができる涼香だからこそ、彼女はこの希望を信に託しきることはできなかった。

 信も辛い。だが、涼香も辛い。

 悲しみの波紋は大きくなる。どんどんと、雨音と共に……。

 *****

 身体に当たる雨粒が、更に大きくなったような気がする。
 学が腕を通しているシャツも、脱がされないまま美春の肩から下がるブラウスも、まるで身体の一部になってしまったかのように、ピッタリと肌に貼りついている。
 冷たい雨に晒されているはずなのに、ふたりはその冷たさを感じてはいない。内側から湧きあがる熱で、雨など気にはならないのだ。
「はっ……、ああっ、ぁ……」
 声を詰まらせ、震えた吐息を漏らす。鉄柵に背を預け、立ったまま片脚を学の腰に絡めた美春は、熱を放って体温を上げてくれる彼の滾りを蜜窟の奥へと受け入れていた。
「まな……ぶ……、もっと、奥……挿れて……」
 彼女の希望通り、根元まで挿し込まれている滾りを、秘丘同士が擦り合わんばかりに押し付け挿入する。
 学の切っ先が子宮口を強く押し最奥をえぐると、美春は腰を震わせて、悦声とも泣き声ともつかない喘ぎを漏らした。
「……辛いか?」
「あああっ……、ううん、……いいの……」
 美春の腰をシッカリと抱き、彼女に自分自身を埋めた学は、特に抜き挿しを行うわけではなく滾り全体で美春を感じる。
 その温かさ、柔らかさ、収縮性……。
「食い千切られそうだ……」
「身体がね、離したくない、って言ってるんだよ……、学を」
 学を求める強い締め付け感。お互いを感じながら、ふたりは全身で望む。――離したくない。このまま繋がっていたい。
 不可能な、願いを。
「もっと……、挿れて……」
「これ以上無理したら、美春が壊れるよ?」
 学が腰をひねると、ざわめく膣襞を亀頭がこねる。ごりっとめり込む痛みが、美春の膝を震わせた。
「い、いいから……、壊れても、いいから……」
「いつもは『痛い』って怒るくせに」
「いつもは『壊したい』とか言うくせに」
 ああ言えばこう言う。いつも通りの調子が出ると、ふたりは顔を見合わせて微笑み合う。
 ――――こんなセックスができるのも、きっとこれが最後……。
「本当に、壊しちゃおうか……」
 少し引いた腰を再び強く突き挿れる。痛みなのか快感なのか分からない電流が全身を駆け巡り、美春は腰を崩した。だが、崩れる瞬間、学が美春の腰ごと背中を引き寄せ、抱き支えながら一緒に腰を落とす。
「痛かったか?」
 広げた両脚を腕に抱えて、半分抜けかかった滾りを深く挿入し、学はゆっくりと抽送を始めた。
「あっ……はぁ……あんっ」
 擦り上げられる快感が広がり始める。美春は焦れる身体を抑えるために、両脇の鉄柵を掴んだ。
「あっ、……まな、ぶっ……、んっ、ああっ、もっと、オクに……。痛くして、いいからぁ……」
「痛くして良いの?」
「……いいよ……」
 いつもは嫌がる行為だ。なのにどうして今日は良いのかと問いたげな学に、美春は雨粒に溶けてしまいそうなほど弱々しい頬笑みを見せた。
「痛くして……、私の身体に教え込んで……。『絶対に俺を忘れるな』って……」
「美春……」
「学になら、壊されてもいい……」

 そんな言葉を出しながら、美春は涼香を思い出していた。
 何かの話をしていたはずみで聞いた、セックスの時、信にちょっと痛みを伴う恥ずかしい行為をされるのが好きだという話だ。
『恥ずかしいって……、しっ、縛ったり、とか? だって、そんなの痛いじゃない。嫌じゃないの?』
 戸惑ってしまったのは当然なのだ。美春は学に快感と愛情をたっぷりもらうセックスはするが、変質的な行為には及んだことがない。
 それは、美春が嫌がったり痛がったりするのは嫌だから、という学の限りない溺愛心からきている。
 だが涼香は、嬉しそうに彼女の言葉に応えた。
『嫌じゃないわよ。不思議なことにさ、痛いことされても信ちゃんだと思うと感じるんだなぁ。ちょっと変わったことをされるとき、それが刺激的で、信ちゃんの痕跡が強く身体に残ったような気がしちゃったりして。……分からないかな……、美春には……』

(今なら、分かるよ……)
 心の中で親友に応え、美春は学に強請る。
「もっと、愛して……。もっと……、壊れるくらい……」








人気ブログランキングへ




もくじ  3kaku_s_L.png 2017・短編集
もくじ  3kaku_s_L.png 溺愛マリッジ
もくじ  3kaku_s_L.png 恋のエトセトラ
総もくじ  3kaku_s_L.png 迷宮の天使*LS*
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋桜~さくら・シリーズ
総もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【第14章3(悲しみの波紋)】へ  【第14章5(涙の誓い)*R18】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第14章3(悲しみの波紋)】へ
  • 【第14章5(涙の誓い)*R18】へ