理想の恋愛 完璧な愛・第12部(完結編)

第14章5(涙の誓い)*R18

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「煽るな……、馬鹿……」
 雨なのか涙なのか分からない雫を彼女の顔から拭い、学は切なげに苦笑する。
「美春を壊せたら、俺も壊れるよ……」
 美春は鉄柵から手を離し、繋がったまま座位の形をとって学の濡れた胸に強く抱きついた。
「じゃぁ、一緒に壊れよう……。学……」
 彼の上で腰をうねらせ、昂り続ける甘い吐息を吹きかけながら、美春は夢心地で心の奥底に潜む小さな狂気を覗かせる。
「あの鉄柵を突き破って、……このまま学と落ちたいよ……」
 今、ふたりでここから落ちたら……。このままふたりで落ちたら、どうなるだろう。
 そんな危うい思考に支配されかかるが、それを思いとどまらせようとするかのように強く突き上げられ、瞬時に思考が飛んだ。
「んっ! ぁっ、あん、学っ」
「落ちようか……?」
「な、に……、んん、ぁ……」
「ここから落ちるのと同じくらいの修羅場を見る羽目になるかもしれない……」
 意味を理解できないままに身体を揺さぶられる。身体の奥底から全身を包む愉悦が高まりきった頃、彼に跨る両肢が痙攣しオーガズムが訪れると、学も達したらしく静かにその動きを止めた。
 余韻を堪能する美春を抱きしめ、学は軽く失笑する。
「……一応、用意しておいたんだけど、……専務室に置きっぱなしで持ってきていなかったんだ」
「……何を?」
「“今の”美春と、セックスするのに必要なもの」
 とろりとした思考の中で、美春は思い出す。この契約を進めるために、緊張し張り詰めた精神状態で仕事をする中、ホルモンバランスを崩し生理が遅れていること。次の生理が始まるまで、排卵日が確定していないこと。
 それを案じた学が、また周期がちゃんと戻るまで、コンドームを使ってくれると言っていたこと。

 繋がったまま離れない脚の間が熱い。蜜窟でその勢いを落とさない彼の感触を、美春は痛いほどに感じていた。

「本当に、ここから落ちるのと同じくらい、大変なことになるかもね……」
 その意味を悟っても、美春は落胆などしない。学に抱きつき、唇を重ねた。
「そうなったら……、私は幸せ……」
「……アランは怒るぞ? いや、自分の子どもだと言い張るかもな……」
「無理よ、彼は子どもが作れない人だもん……。私の身体だって、学からしか新しい命をもらえないようにできてるんだから……」
「美春……」
 嬉しい苦笑を漏らし、学はそのまま美春を横たえた。硬い床に傷みを与えられないよう、彼女の頭の下に手を添え敷き、身体を重ねる。
「そうなっても、いいのか?」
「そうなったら……、迎えに来て……」
 再び律動しようとしていた学の動きが止まる。涙を溜めた藍色の瞳に引き込まれそうになりながらも、彼はその切願を受け取った。
「あなたの“肩腕”をつれて、あなたの“お傍付き”をつれて、“法の力”で、私を迎えに来て……」

 今の状況を、誰もどうにもできない。
 肩腕である信も、お傍付きである櫻井や須賀も。
 だがもしも、修羅場必至の事態が美春を襲ったとしたら、今度こそ法の力で“親権”というものを振りかざすことができる。

 愚かな考えかもしれない。姑息な手段であるのかもしれない。
 けれど美春は、そして学も、それを切望してしまった。

「それまでに、……この葉山製薬に、ロシュティスと手を切ったって揺るがないほどの大きな力を付けさせて。……今以上に、……あなたの力で躍進させて……」

 それは、学に対する、美春からの叱責と激励だ。
 アランの手から美春を奪い返しても、何の心配もいらないくらい、今以上に葉山製薬を躍進させてくれと……。
 世界トップクラスのロシュティス。どれだけ葉山製薬が国内で力を持っていようと、そこと張り合せるのは一種失笑に値する。
 だが学は、真意に彼女の言葉を受け止めた。
「わかったよ……。美春」
 明らかに目尻から伝っている彼女の涙に唇をあて、その雫に誓う。

「絶対にお前を、取り返しに行くから……」

「絶対、よ……?」
「俺が、美春に嘘をついたことがあるか?」
 絡まる瞳が微笑み合う。見つめ合ったまま、学はゆっくりと抽送を始めた。
「絶対、だから……」
 呟きながら、学は美春を貫く。身体をピッタリと重ねて、突き刺さるほどに強い雨粒から彼女を守り、希望を込めてその愛情を注ぎこまんと互いを高め合った。
「学……、愛してる……」
 美春の高まりと共に、彼女の奥深くで張り詰めた滾りを解放する。荒れる息を共に吐きながら、ふたりは離れようとはしなかった。

 雨音が、学の耳に、美春の願いを反復させる。
 ――――絶対に、迎えに来て……。

「愛してるよ……、美春……」

 学は、美春の涙に、そして自分の瞼の裏を熱くするものに固く誓う。
「約束する……」
 
 雨の中で抱き合うふたりは、いっそこの雨の中で溶けてしまいたいと、思っていたのかもしれない――――。








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