「理想の恋愛 完璧な愛・シリーズ(第7部~第11部)」
理想の恋愛・企画SS集

●『永遠のメリークリスマス』・4(2013クリスマスSS)

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「……当たり前だ」
 美春の切なげな口調を庇うように、学は静かな肯定を示した。
 ムキになって強気の態度に出ても、彼女が照れて恥ずかしがっているのだということが分かる。
 からかって冷やかした時に拗ねた態度を取っても、学自身を拒絶しているわけではないということを、彼は理解しているのだ。
 ――――だから、つい自惚れてしまう。
 美春も自分と同じように、幼馴染以上の感情を抱いてくれているのではないかと。特別な存在として、心の中に置いてくれているのではないかと。
 自信家で、どんな事柄においても確証と確信をもって行動を起こす学。
 それでも、ただひとつだけ、量りかねているものがある。
 心密かに想い続ける最愛の幼馴染が、自分を心のどの位置に置いてくれているのかだ。
 どんなに思わせぶりな態度に出ても、どんなに思わせぶりな言葉を口にしても、美春の心は掴めない。

 だから言ってしまうのだ。
 たとえ、いつも通り冗談だと思われていても。
 美春に。自分の気持ちを。

「十年経ったって、俺はきっと美春と一緒にいる。ずっと、ずっと、クリスマスには美春とケーキ食って、馬鹿なこと言って笑って、アルコール分あるんだかないんだか分かんねーシャンメリーで、美春が酔っぱらうの見るんだ」
「なっ、何よぉ、それぇっ」
 反抗しつつ、美春は笑ってしまう。そのほうが怒るより楽しいのだ。

 こうして学といられることが、楽しくて嬉しくて……。
 自分を女の子の中で一番気にかけてくれているのだと分かることが、幼なじみであるからなのだと考えるのが切なくて……。
 彼を好きになっていく気持ちに、終わりを感じられない自分が悲しいくらいに怖くて……。

「十年経ったら二十四歳か。その頃、何やってんだろうな」
「学はきっと、会社に就職してるよね。何してるんだろう。やっぱり、一おじ様みたいに専務さんとかになってるのかな」
「特に何かない限りそうなんだろうな……。きっと、バリバリ仕事してるぞ」
「学なら本当にそうなりそう。――私は、……何してるのかなぁ……。大学は卒業しているだろうし、……OLとかかなぁ……」
「歳も歳だし、結婚してるかもな」
「だっ、誰とよぉっ」
 予期せぬ言葉に、美春は真っ赤になってしまう。今から結婚の話など、想像もできない。
「そんなこと言ったら、学だってそうでしょう? 歳も歳だし、お嫁さんとかもらってるよ、きっと」
「……だと、いいな」
 自分とは違う冷静な返しに、美春はドキリと胸が苦しくなる。学のことが好きな彼女に、この話題は辛い。
 深読みすれば泣いてしまいそうだ。いつもならそれを抑えるために意地を張るところだが、美春はつい弱気になってしまった。
「……そうなったら、一緒にクリスマスなんて無理だよね……。学の奥さんになる人だって、いつまでも幼馴染の女の子がくっついているなんて嫌だと思うし」
「美春?」
「それでも……、一緒にケーキ食べて、馬鹿な話しながら、笑ってくれる……?」
 刹那、漂う沈黙。すっかり暗くなった室内はファイバーツリーの光だけが煌き、泣きそうに歪む美春の表情を浮かびあがらせる。

 彼女と同じくらい、学は心が泣きそうだ。
 十年後、もしも結婚などしているのなら、その相手は美春であってほしい。そんな願望を込めた返事は、なぜか彼女を悲しませてしまった。
 許されるのなら。十年後、そしてそれからも、ずっとずっと美春とクリスマスをすごしたいと思っているというのに。
 ――その気持ちを、彼女に伝えることは可能だろうか。
 いつか自分が、彼女を完璧に守れる男になれたと思えた時、それは許されるだろうか。
 彼女は、そんな自分を受け入れてくれるだろうか。

「当然だろう……」
 学は両手で美春の髪を梳き、その頭を押さえた。
 熱とは違う理由で潤んでしまった瞳を見つめ、室内を走る彩光の中に自分の想いを映し出す。
「俺は、美春といたい。だから、クリスマスは一緒だ。――美春は?」
「……私も、……学といたい……」
「じゃぁ、迷うことないだろう?」
 クスリと笑って、学は美春と額同士をコツリとくっつける。
「――――メリー・クリスマス、美春。……今年も、お前に言えて嬉しいよ」

 湧き上がった涙は止めることができなかった。頬を流れる雫を拭うこともできないまま、美春は学の気持ちに応える。

「メリー・クリスマス……、学。……来年も、学に同じ言葉が言えますように」

 来年も。
 再来年も。
 こうして同じ言葉を言い合えたなら、どんなに幸せだろう。

 本当なら、このまま美春を抱きしめてしまいたい。
 けれどそれは、まだ許されることではないのだ。
 ふたりは、まだ“幼馴染”なのだから。

 それでもきっと、いつかきっと。
 ふたりで幸せなクリスマスを迎えられますように。

 ――――それは、十年前、まだ幼く互いの気持ちを確かめる術を持っていなかったふたりが、クリスマスに想う、最大の願い事だった……。


 *****


「どうした? 美春」
 抱き締めていた美春が急にくすんとしゃくり上げたので、学は驚いて腕の中にいる彼女を見た。
 今夜の予定を話していて、幸せで堪らないとふたりで言い合ったばかりだというのに、愛しの妻はなぜ泣いてしまったのだろう。
「ん……、ごめん……。十年前とか言ってたら、思い出しちゃって……」
「何を?」
「十年前の自分。……学のこと大好きで大好きで堪らなかったのに、好きとかそういうことが言えなくて意地張って、いつまで一緒にクリスマスケーキを食べられるんだろうって、切なくて泣いていた頃……」
 学の腕に抱かれながら、美春は指先で目頭を押さえる。すると、その瞼に学の唇が下りてきて涙を吸った。
「……俺も、十年前は同じだったよ……。美春が好きで堪らないのに、言葉も伝えないで、ただ、美春に笑われないくらいの大人になりたいって、大人になることばかりを急いで、足掻いていた……」

 十年前の自分に教えてあげたい。
 十年後の今は、こんなにも幸せなのだと。だから、泣く必要などないのだと。

 美春の顎を掬い、学の唇が美春のそれに重なる。
 しっとりとした唇付けを交わしたあと、ふたりは額をコツリとぶつけあった。
「メリー・クリスマス、美春。これから一生、最愛の人に言い続けられることが、とても嬉しいよ」

 夫婦になって初めてのクリスマス。
 これから続く特別な幸せを、毎年、ふたりで与え感じ合っていこう。

「メリー・クリスマス、学。……これからもずっと、学とケーキを食べて笑い合えるのが嬉しいわ」
「美春は、今もシャンメリーで酔っぱらうのかな? 最近飲んでないけど」
「やめてよ、もぅっ」
 ふたり同時に笑い合い、そして抱き合う。

 十年前の切ない想いがあったからこそ、今の幸せが心に沁みる。
 幸せなクリスマスを、永久(とわ)に、君と……。

 永遠の愛を誓う、ふたりのために――――。




     『永遠のメリー・クリスマス』
        *END*






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~ Comment ~

幼馴染

直さま、ご無沙汰のメールです。
久しぶりに幼い2人に出会えました。イジイジするけど幼いながらのラブラブ2人でしたね。楽しかったです。またの更新お待ちしています。

Re: 幼馴染(ペコちゃんさんへお返事です12/27)

ペコちゃんさん、ご記入くださいましたアドレスへお返事させていただきました。
未着であるようでしたらご連絡ください。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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