恋のエトセトラ

*限定番外編*『今宵、甘いハロウィンを』

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*こちらは『甘いトモダチ関係』のハロウィン特別番外編(サイト限定)となっております。

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「ちょっと、訊いて良いか?」
 やっぱりきたか。予想通りの問いかけに、朱莉は「よし、こいっ」と言わんばかりに外したエプロンを握りしめる。
 キッチンへ戻りかけていた足を止め、くるりと振り返った先には、ダイニングテーブルの上を見つめながら眼鏡のブリッジを上げる征司がいた。
「この晩飯のラインナップは、なにゆえだ?」
 まるで会社にいるときのような上司口調。それだけ彼は、この状況に対する説明を真剣に求めているということなのかもしれない。
 しかし、朱莉が言えるのはただひとことだ。
「ハロウィンだから」
 ピクリと征司の眉が寄る。彼も朱莉と同じく「やっぱり、そうきたか」と思ったに違いない。
 この状況で、彼がなにゆえだと問いかけてしまうのも無理はないのだ。
 十月三十一日。結婚を間近に控えた、婚約者同士の幸せな食卓。
 そこに並ぶのは、かぼちゃご飯、かぼちゃの味噌汁、かぼちゃサラダ、かぼちゃの煮つけ、そしておそらくメインの皿に載る丸い揚げ物は、かぼちゃコロッケに違いない。
 征司だって、ひとこと言いたくもなる。
「極端だろう。いくらハロウィンだからって。だいたいハロウィンは、かぼちゃを食う日じゃないぞ」
「いいじゃないの。かぼちゃはビタミンAとカロチンが豊富で、風邪予防にも効果的なのよ」
「冬至かっ」
「なによーっ。征司、かぼちゃは嫌いじゃないでしょう?」
 言い訳が必死になっている朱莉を、征司はジッと見つる。なにかおかしいと勘付いたか、それとも事の真相に気づいたか、わずかに口角を上げた。
「朱莉……。お前、かぼちゃ、何個買った?」
「えっ!」
 ドキリと思わず身を引くが、朱莉にしてみれば「どうして分かったの」と言いたいところだ。
「もしかして、だけど……。かぼちゃをくり抜いて、かぼちゃのお化けとか作ろうとしなかったか?」
 腕を組み、勝ち誇る征司。これはもう間違いないとの確信を持っている。
「お前のことだから、失敗したら困るとか言って、二、三個丸ごと買っただろ」
「……なんで分かるの……」
「十年付き合ってりゃ、お前がやりそうなことは分かるって」
 蛇と蛙の睨み合いがごとく、しばし走る気まずい沈黙。それを打ち破り、朱莉はアハハと笑いだす。
「か……かぼちゃってさぁ、皮が硬いよねぇ。くり抜くのに苦労したわ」
 やっぱりやったのかと言わんばかりに、征司は大きな溜息をつく。くだらないことをするなと言いたげな口をふさぐため、朱莉は言い訳を試みた。
「食後にはさ、かぼちゃのデザートもあるんだよ。ハロウィンは甘いお菓子もなくっちゃね。明日は休みだし、パンプキンパイでも作ろうかな、なんて」
「で? その、くり抜いたかぼちゃのお化けは、どこに置いてあるんだ?」
「……寝室。驚かせてやろうかな……、なんて、悪戯心で……」
「Trick or Treat、“悪戯かお菓子か”ってやつか。両方用意したってわけだ」
「律儀でしょう」
 つい調子にのってしまう。すると、征司が寄ってきて朱莉の手からエプロンを取り、その手を引っ張った。
「じゃあ、“甘いお菓子”にする」
「え……せ、征司……」
 いきなりデザートでも朱莉は構わないのだが、肝心のかぼちゃプリンは冷蔵庫の中だ。なのに、朱莉の手を引いて歩き出した征司が向かった先は、寝室。
 まさか、の予感通り、朱莉はいきなりベッドに押し倒された。
「せっ、征司っ、デザートは?」
「んー? 食べるぞ、今」
 覆いかぶさってきた征司が、チュッとかわいらしいキスを落とす。目を見開いて、何事かと面食らう朱莉の唇に人差し指をあて、彼は優雅に微笑んだ。
「俺のお菓子は、朱莉だから」
「ちょっ……」
 彼の甘ったるい仕草にも結構慣れたと思いつつ、やはり反射的に頬が熱くなる。ドキリと大きく胸が高鳴った瞬間、今度は濃厚な唇付けが与えられた。
(ご飯、食べないの?)
 征司のキスに、身体がとろけていく。心の中の問いかけを口に出しても、おそらく無駄。返ってくる答えは、分かりきっている。
 ――――ご飯より、朱莉が食べたい……
 彼の言葉を予想しながら、朱莉は両腕を征司の背へ回す。唇が離れ、ゆっくりと瞼を開くと、征司がベッドサイドのテーブルへ視線を移していることに気づいた。
「上手にできたでしょう。苦労したのよ、二個作るの」
 自慢する朱莉。そこにあるのは、朱莉の自信作、かぼちゃのお化け。
 目の部分は虹の形。にこりと笑った二個のかぼちゃ。寄り添い合い、赤いリボンで結ばれている。
 仲の良い様子は、まるで征司と朱莉のよう。
 これを用意するために、今夜の食卓はかぼちゃだらけだったらしい。クスリと面映い笑みを浮かべた征司は、朱莉を見つめ頬を撫でる。
「こんな嬉しい“悪戯”、初めてだ」
 愛しい人が喜んでくれている。それを感じた朱莉は、キュッと征司に抱きつき耳元で囁いた。
「甘いお菓子……、どうぞ……」

 Happy Halloween
 今宵、悪戯よりも、甘い夜を――――



     『今宵、甘いハロウィンを』
        *END*





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~ Comment ~

NoTitle

ハロウィーンで一体何組のカップルが「君が至高の甘美なるお菓子だ……」という彼氏に喰われている彼女という設定が地球上に存在するのでしょうw
いや、多分日本だけかなそういうの。
海外では神聖なお祭りなんだしw
でも、やっぱりハロウィンラブタイム小説は鼻の下伸ばして……じゃなかった、思わず飛びついてしまう作品だよね!
大変愉しませて頂きました♪

妃宮咲梗さんへお返事です(10/31)

宮ちゃん、こんにちは!

ハロウィン番外編、お読みくださり、ありがとうございました!(*^ワ^*)

もう、「君が僕のお菓子」は定番ですよ!
美味しくいただいてくださいって感じです。(笑)
べたべた甘々しているカップルって、かわいいなぁと思うのです。そうそう、鼻の下伸びちゃう。(笑)

コメント、ありがとうございました!

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