年下ですが貴女を好きになってもいいですか

第三章・年下はしつこいです!/4

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「美涼さーん、一緒に帰りましょー」
「やだっ」
「いーじゃないですかー。仲良くしましょうよぉ」
「うるさいっ」
「ちゃんと送りますって。ヘンな所に入ったりしませんからー」
「し、つ、こ、いっ」
 言葉のひとつひとつを強調し、美涼はくるりと振り返る。真後ろには、琉生が鞄片手に緩く立つ姿があった。
「私は電車で帰るっ。だいたい、一緒に帰ろう一緒に帰ろうなんて、しつこいわよっ。返事をしてない時点で悟りなさいよ」
「俺の大事な美涼さんが、電車になんか乗ってへんな目に遭ったらどうするんですかー。興奮するじゃないですかー」
「それ、朝も聞いた。ってか、“俺の”ってなによっ。所有物になった覚えはないからね」
「……なんか、……朝より冷たい気がするんですけどー……」
 琉生の言葉にドキリとするも、美涼は前を向いて歩きだす。
 定時後のエントランスは、社員や関係者の姿が多い。琉生と美涼が並んで歩いていようと目立ちはしないが、なんとなく人目が気になり美涼は速足で歩いた。
「そんなに冷たく突き放してー。実は違う男とデートとかじゃないでしょうね?」
「変なこと言わないでよっ。そんなわけあるはずがないでしょう」
「ホントですかぁ?」
「し、つ、こ、いっ。あんたじゃあるまいしっ。あっちこっちにイイ顔してデートの約束なんかしないわよ。馬鹿っ」
「なんですか、それー」
 歩調を合わせ、琉生は美涼の隣に立って歩く。彼に視線をくれることなく、彼女は歩き続けた。
「経理課の人妻とデートなんでしょうっ。今夜は旦那さんがいないとか色々話してたじゃないの」
 勢いで口から出てしまったが、これでは立ち聞きをしていましたと言わんばかりだ。ここまで言わなくてもよかったかと考えたとき、琉生に腕を掴まれ強く引かれた。
「え……ちょ……ちょっとっ」
 そのまま琉生はスタスタと歩いていく。彼の力は強く、美涼が腕を振りほどくことも立ち止まることも許してはくれない。
 駐車場に入った琉生は、有無を言わさず彼女を助手席へ乗せる。逃がさないようにするためか、すぐにシートベルトを引いて美涼を固定した。おまけにドアを閉めると素早く後部座席から乗り込み、鞄をそこに置いて美涼の肩を掴んだまま運転席へと回りこんできたのである。
「ど……どんだけ警戒してんのよ。あんたっ」
「目ぇ離したら逃げるでしょ」
「に……逃げって……。しつっこいなぁ、もうっ!」
「俺、しつこいからって、朝言いましたよーだ」
 シートベルトを引きながらエンジンをかけた琉生は、急ぐように駐車場を出る。ここまでされてしまったら観念するしかない。美涼はおとなしく送られようと決めた。
 車は本社ビルの裏通りに入っていく。この時間帯、表通りは混雑するので渋滞を回避するためなのだろう。
 そう思っていたのだが、彼はしばらく車を走らせ、途中に見えた公園の駐車場に車を停めた。
 日中はそれなりに人の姿を見かけることもあるが、この時間になると人の気配はまったくない。おまけに駐車場は植え込みと建物の陰にあるため、奥の位置だと街灯の灯りさえも届かなかった。
 こんな場所に入ってどうしたのだろう。そう思った直後、琉生がバンッとハンドルを叩き、そこを掴んだまま顔を伏せたのだ。
「駄目だ……」
 苦しそうな声だった。もしや具合でも悪くなって、しようがなくここへ停まったのでは……
 心配になった美涼は、シートベルトを外し琉生の肩を軽くゆすった。
「ど、堂嶋君、どうしたの……。具合悪いの? あの、だったら、無理に車の運転とかしないほうがいいよ。タクシーでも呼んでこようか。私、家までついていってあげるから、それで帰ろう……」
 結局は一緒に帰ることになるが、そんなことを気にしている場合ではない。琉生の具合が悪いということは、例の女性とした逢引の約束もなしになるのだろうか。そんな余計な考えがチラリとよぎった。
 すると琉生が自分のシートベルトを外し、肩に置かれた美涼の手を掴んだ。
「駄目だよ美涼さん。……堪んないよ、それ……」
「は?」
「美涼さん、もしかして、やきもち、妬いたんだよね……」
「……やきもち……」
「俺が……あの経理の波多野さんと会うんだって勘違いして……。だから、なんか朝より冷たいんだ」
「はぁっ!?」
 素っ頓狂な声をあげてしまったが、そう思われても仕方がないのかもしれない。
 琉生が言うとおり、ふたりが今夜会うのではないかという疑いを持ってから、彼に対しておかしな苛立ちを感じていた。
 自覚をした美涼だったが、琉生の前でそれを認めるのはイヤだ。彼女は身体をよじって否定した。
「な、なにが、やきもち、よっ! 自惚れんじゃないの。だいたい、なんで私がやきもちなんか妬かなきゃならないのよ。あんたが誰といやらしいことしようが関係ないわよ!」
「そのイライラしてんのが証拠じゃないですか。『デートなんでしょ』なんて拗ねた顔見せて……わざとですか? 堪んなくなっちゃったじゃないですか」
「わっ、わけ分かんないっ」
 エントランスでいきなり強行に出たのは、どうやら美涼の態度に琉生がなにかを感じたせいらしい。
 確かに苛立った。ふたりが会う約束をしているのかと胸が痛くなった。なぜか悲しくなって、あんなに冷たく突き放していたはずの女性に、自分の目の前でいい顔をする琉生に腹が立った。
(……やきもち……?)
 美涼はこの感情に戸惑う。嫉妬という感情を知らないわけではないが、自分が琉生の行動に対してやきもちを妬いているということを、事実として認められない。
(私が……?)
 驚いて見開く目に、琉生の目が近づく。彼のまぶたが伏せられたことに気づいた次の瞬間、唇が重なった。
「堂嶋……く……」
「美涼さん……俺……」
 軽く重なり言葉を発したあと、唇が強く吸われる。
 言葉ごと吐息さえ奪い、琉生は身を大きく乗り出して美涼をシートに押し付け、リクライニングを最後まで倒した。
 落ちるように身体が沈み、驚いた美涼は思わず琉生の身体にしがみつく。その仕草が嬉しかったらしく、琉生は顔の向きを変えて忙しなく彼女の唇を奪った。
「……我慢なんかできないですよ……。美涼さん……、かわいすぎ……」
 助手席側に身体を移動させ、シートをずらして足元の広さをとる。美涼の膝を跨ぐ形で座面に膝をつくと、琉生はスーツの上着を脱ぎ運転席へ投げた。
「ど、堂嶋く……ん……、なにすっ……」
「だからーぁ、堪んないんですよ……。そんなかわいい美涼さんを見せられたら……」
 両手で美涼の膝を撫で上げ、そのままボディラインをなぞり胸で止める。やんわりとふくらみをひと揉みし、彼は美涼のスーツのボタンを外し始めた。
「ちょっ……、なんもしない、って……」
「なんもしないなんて言ってませんよー。変な所には入らないとは言ったけど」
「なにそれ、ズルイっ!」
 反抗して起き上がろうとしたが、琉生が軽くのしかかってきて身体が起こせない。上着を広げたブラウスの上から胸のふくらみを揉みしだかれ、人差し指が執拗に頂を掻いた。
「ちょっ……や、だぁ……あっ……」
「ここでしょ? 硬くなってくると、ブラウスの上からでも分かるんだよ」
「やっ……、堂……嶋くっ……」
 彼の指の下には、衣服を通して敏感な突起がある。まるで昨日の愛撫を思いだしたかのよう、それは性急に疼きだした。
「やっ、だぁ……あっ……」
「……正直……」
 クスリと笑った唇が喉に吸いつく。首筋で右へ左へと移動させ、琉生は美涼のブラウスのボタンを外して胸を暴いていった。
 ブラジャーごと胸を寄せ上げ、鎖骨の下から大きく盛り上がる隆起を唇で弾く。布地の上から頂に吸いつき、カリカリと歯で掻いた。
「あっ……や、アンッ……」
 布一枚通しているせいだろうか。強く歯をたてられているような気がするのに、布越しに触れられるじれったい疼きだけが上半身に広がっていく。
「ん……んっ、あっ」
 もう片方の突起も指でつままれ、キュッとひねられる。そこが両方とも硬く尖り立ってしまっていることが自分でも分かった。
 ブラジャーのストラップを肩から外し、カップを下げて乳房を零す。乳首に吸いつかれじゅくじゅくと吸い立てられると、腰の奥がビリビリ痺れ美涼は思わず腰を浮かせた。
「堂嶋く……ん、ダメ……こんな、所で……」
「だって、変な所に連れ込まない約束だし……。でも、俺、止まんないし……」
「だからって……。ここも充分変な所じゃ……ぁあっ、ンッ……」
「狭いけど、車の中って興奮するでしょう?」
「し、知らないわよ……そんな……あっぁ……」
 突起の周りを熱い舌がねっとりと舐め回し、頂に大きく吸いつく。口の中で舐められ、しゃぶられて、美涼は琉生の腕を両手で掴んで身体をうねらせた。
「や……やだぁ……アンッ……、恥ずかし……ぃ、ンッ」
「……美涼さん……、もしかして、車の中でセックスしたことないの?」
「す、するような所じゃないでしょうっ。こんなっ……ぁんっ……」
 一瞬の沈黙が走る。顔を上げた琉生と薄闇の中で目が合うが、次の瞬間、彼は嬉しそうに笑った。
「美涼さんのハジメテ、もーらったっ」


*次回更新、1月21日予定。






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