年下ですが貴女を好きになってもいいですか

第五章・年下は…大好きです!/5

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「好きです……、大好きです……」
 胸に溜まっていた言葉をすべて吐き出そうとするかのように、琉生は何度もその言葉を繰り返す。
 美涼の唇にふれていた彼の唇は、やがて彼女の鼻の頭に、眉間に、まぶたに、こめかみへと移動していった。
「好きです……」
 より熱い吐息となって耳孔へと流しこまれる喜び。
 甘い戦慄が脳を回り、気が遠くなる。
 それは、恍惚感にも似た感覚だ……
 うっとりする美涼の耳輪を舌でなぞり、琉生の唇は耳の裏から首筋へと移動する。彼女を抱きしめていた両手は頭を撫で、肩の線をたどって、もったいぶるように彼女のスーツの上をさまよった。
 スーツのボタンを外されドキリとする。もしかしてここで……と、不埒な思いが駆け巡るが、そんな戸惑いも一瞬で変わった。
 いつもの感覚で考えるならとんでもないこと。けれど今は、琉生ならいいか……と、美涼の心がふとどきな誘惑に負けている。
 琉生もきっとそのつもりなのだろう。彼は次にブラウスのボタンを外し始めた。
(こんな所で……。堪え性がないなあ……年下は……)
 期待はあるものの、やはり場所的な恥ずかしさがある。そんな葛藤を、美涼は心の強がりで抑えた。
 しかし次の瞬間、琉生はいきなり身体を離したのである。
「駄目だ……。やっぱりここじゃ駄目だよ、美涼さん」
 彼はなにか焦っている様子だ。駄目だと口にするのは本心らしく、外していた途中のボタンを再び留め始めた。
「だ……駄目って……。堂嶋君、あの……」
 迫ってその気にさせたくせに、この変わりようはなんだろう。琉生に腕を引かれ起こされる。美涼はちょっと意地悪をして彼の下半身を指さした。
「駄目……で、いいの?」
 示したズボンの股上は、思った以上に張り詰めている。確認した時点で照れるレベルだ。
 すると、それに気づいた琉生が身体をよじっておどけた。
「なに見てんですかー。美涼さんのエッチぃ」
「え、えっち、とかって、あんたに言われたくないっ。心配してやってんでしょっ。その……つ、辛くないかな、とか……」
「辛いに決まってるじゃないですか。おまけに痛いし狭いし。もうファスナー開いたまま歩きたいくらいですよ」
「変質者になるから、やめなさいっ」
 本当にファスナーを下げかねない琉生を慌てて止め、美涼は彼と目を合わせる。
 もしかしたら琉生は、美涼が会社の中などでいかがわしい行為に及ぶような考えは好きじゃないことを知っているから、気を使ってくれているのだろうか。
「あの、さ……。いいよ……」
 美涼は小声でそう言うと、両手で琉生のスーツを掴む。照れくささを感じ、視線を横にそらした。
「しても……いいよ。ここで……。堂嶋君なら、……イヤじゃないから……」
 その言葉と美涼の仕草に、琉生はなにか感じるものがあったようだ。いきなり、がばっと美涼を抱きしめた。
「美涼さん……、ありがとうございます。俺……すっごく嬉しいです……」
「堂嶋君……」
 声の抑揚や抱きしめる腕の強さで、彼が感動しているのが分かる。それを感じて美涼も嬉しくなった。
 しかし琉生は、この場で自分たちの欲望に従うことを頑なに否定する。
「でも、駄目なんです」
「どうして?」
「持ってきてないんです」
「は?」
「先週買ったやつ……。全部、車のダッシュボードに入れていて……。今、一枚も手元にないんです」
 すぐに、琉生がなんのことを言っているのかが分かる。美涼は思わずぷっと噴き出し、笑い声をあげて彼の背中をバンバン叩いてしまった。
「もー、変なところで真面目だなぁ、堂嶋君は」
「へ、変なところとかっ、そういう問題じゃないですっ。大事なことですっ」
 ちょっとムキになった琉生にキュッと抱きつき、美涼は彼の胸にすり寄る。
「そうだね。……ありがと」
 嬉しい気持ちのまま行動した結果だったが、我ながら自分らしくないくらい控えめな態度をとってしまったような気がする。かわいこぶっているように思われてはいないだろうか。
 そんな心配をしてみるものの、琉生が優しく頭を撫でてくれたことで、照れくささと同時に不安もなくなった。
「……場所変えて、いいですよね? 車の中に間違いなくありますから」
 こんな関係にでもならなければ、感じることはなかっただろう琉生の真面目さ。
 そして、優しさ。
「いいよ……」
 もちろん、美涼に否定をする気などないのである。

 以前、琉生は我慢ができないからと車の中で事に及んだことがある。
 コンドームは車の中だと言っていたこともあり、もしかして今回も……
 彼の車で移動中、美涼はチラリとそんなことを考えた。そうすると、車の中で抱かれたときのおかしな興奮までよみがえってくる。
 しかし琉生は車内で彼女に手を出すことはなく、無事にホテルまで持ちこたえたのである。
 ただし、部屋へ入った瞬間、その我慢はどこかへ行ってしまったようだった。
「こ、こら……、堂嶋くっ……」
 部屋へ入ったときから続く琉生のキス攻撃。やっとのことでそれから顔をそらし、美涼は軽く覆いかぶさる彼のスーツを掴む。
「なんですかーっ。年下は余裕がない、とか言います?」
 琉生はちょっとムッとする。どうやら顔をそらされたのが不満のようだ。美涼は苦笑いで彼の後頭部をぺしっと叩いた。
「そう言ってほしいの?」
「言われてもいいですよ。本当に余裕なんてないから」
 上半身を起こし、ネクタイを引き緩めスーツの上着を脱ぎ、琉生は言葉のままの行動をする。
 ラブホテルの室内に入ってすぐに抱きしめられ、キスの猛攻とともに押し倒された。しかもその場所は、さほど大きくはないラブソファ。もう少し進めばふたりで大の字になって寝ても余るくらいの大きなベッドがあるというのに。なにもここで我慢の限界を迎えなくても、と、美涼は思う。
「もう、美涼さんの顔見てるだけでイきそう」
「それは駄目っ」
 切羽詰まってるんです、分かってください。そういわんばかりの琉生を見て、美涼は笑いだしてしまった。
 馬鹿にしているのではない。彼に求められるのが嬉しくて、こうしてまた冗談のように軽い会話が交わせるようになったのが嬉しくて、笑顔を通りこし笑い声をあげずにはいられないのだ。
「どうして?」
「え……?」
 美涼の笑いが止まる。今まで忙しなく彼女を求めていた琉生が、急に物静かな態度で問いかけてきた。
「どうして、顔を見てるだけでイっちゃ駄目なの?」
 それも彼は、とても綺麗な頬笑みを浮かべている。余裕がないと言ったそのものズバリの態度ばかりを見てきたなかで、いきなり感じるこの落ち着き。これには予想外にドキリとさせられた。
「大好きな美涼さんを見て興奮するのは当たり前でしょう? 駄目なの?」
「だって、ずるいでしょ。そんな……」
「なにが?」
「顔見て、っていうことは、……自分だけ、ってことじゃない……の……」
 思ったままを口にしようとするが、なんとなく恥ずかしいことを言わされかかっているように感じる。美涼は視線を横にそらして言い淀んだ。
「そっかぁ、『一緒にイクんじゃなきゃ、やだぁ』って思ってくれてるんだ? かーわいいなぁ、美涼さんはぁ」
「そうやってからかうっ」
 口調に軽さが混じったせいか、美涼もついムキになって琉生を見る。あんな口をきいたくせに彼の表情は変わっていない。軽く身体を倒し、こっちが恥ずかしくなるくらいの熱っぽい瞳で彼女を見つめている。
「一緒にイきたいっていうのは、つまりはどういう意味?」
「あ、あんた……、意地でも言わせる気……?」
「うん」
 にこりと笑んだ琉生は、チュッと音をたてて美涼の唇にかわいらしいキスをした。
「俺はさ、美涼さんが欲しくて欲しくて堪んなかったし。だから、美涼さんも同じだった、って、思いたい」
 微笑む瞳に、少しだけ不安の色が翳る。美涼は両手を伸ばし、琉生の頬を包んだ。
「……まだ、自信がないの? 堂嶋君は……」
「ありませんよ……。夢みたいで。……今にも美涼さんが『やっぱり冗談』って、笑って逃げていくんじゃないかって、心のどこかで思ってる」
 美涼はクスリと笑い、かすかに背を浮かせて彼にキスをする。自分だけを映してくれている瞳を見つめ、琉生がずっと待っていたのであろう言葉を口にした。
「逃げない……。私も、堂嶋君が欲しいから……」
「美涼さん……」
「好きな人が欲しくなるのは当たり前でしょう? だから、堂嶋君も私が欲しいって言ってくれるんでしょう?」
 一瞬、琉生が泣きそうな顔をしたような気がする。
 これは、彼が待っていた言葉。ずっと、自分は美涼に振り向いてもらえる男ではないと思いこんでいた彼が、心の奥底で望んでいたこと。
 思い起こせば、琉生はかわいそうになるくらい彼女の前でそれを切望していた。
 ――――俺を、欲しがって……と。
「堂嶋君が欲しいの……。だから、ひとりで、とか、……駄目……」
 ぺちぺちと彼の頬を叩く。琉生はふっと微笑み、美涼に唇を寄せた。
「はい……」
 そのまま彼女の鼻にふれ、頬にふれ、目の下からまぶたにふれ、耳へと移動する。
「はい……、はい、美涼さん……」
 何度も了解を呟く唇は、嬉しさに震えているような気がした。
「大好きです……。美涼さんが、欲しいです……」
 再び琉生の顔を手で挟んで正面に引き寄せ、美涼はにこりと笑むと自分から唇を寄せた。
「私も。大好き」
 唇を重ね、表面を擦り、柔らかなキスをする。何度も顔を動かし唇を押し付けながら身体を起こそうとすると、それを察した琉生が背中に腕を回して起こしてくれた。
 美涼は彼の太腿を跨ぎ、向かい合わせになって抱きつく。彼女のキスに応えながらも、琉生は手を動かして美涼のスーツやブラウス、そしてブラジャーまで取り去ってしまった。
「ンッ……ン……」
 切なげに喉が鳴る。あらわになったふくらみを、琉生が両手で円を描くように揉みこみ頂を指で刺激し始めたのだ。
 弾かれるそこは興奮してぷくりと硬くなり、指でつままれくにくにと揉み立てられた。尖り立っていく乳首は従順なほど素直な快感を美涼に与え、彼女を悶えさせる。
「ぁ……ハァ、あっ……んっ」
 キスをしながらも、堪えられず漏れる喘ぎ。腰を焦れ動かすと、跨った足のあいだに琉生の強張りを感じる。
 痛いくらいだと言っていたのを思いだし、美涼は琉生のベルトに手をかけ、手さぐりで外してファスナーを下ろしていった。
 あまりにも張り詰めていて、ファスナーが壊れてしまいそうだと冗談抜きで思う。それほどまでに自分が求められていたのだと実感できることがくすぐったい。
 美涼が下着の前あき部分からその強張りに触れようとすると、琉生は乳房から手を離してズボンと一緒に腰から下ろす。キスを続けたままなので目で確認はできないが、手で触れた琉生はとても熱く、腰の奥がぞくぞくしてくるほどの官能的な硬度を感じさせてくれた。


*次回更新3月21日予定






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