2017・短編集

濡れ雪

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一年に一度。
この季節にだけ情を交わす二人。
その理由は……

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昭和初期 大正 明治 雪 春 禁断の恋 義兄妹 未練 悲しい ちょっとだけホラー ハッピーエンド? バッドエンド? R18
濡れ雪バナー200

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 春の訪れに、心はやわらぐ。
 真綿のように柔らかな陽射しと、暖かくまとわりつくそよ風。
 穏やかな日常を感じずにはいられない季節。
 だがときに、そんな春を忘れさせようと、しんしんとした雪が悪戯に舞い落ちる。
 春を感じたあとに、忘れ物を届けるがごとくやってくる雪。
 それを、忘れ雪、といい……
 その雪の多くは、濡れ雪であるという――――


「あっ……ぅ、んっ……、ンッぁ、あっ……」
 泣き声とともに漏れる喘ぎは切なげだ。
 恥じらいがちに抑えられた声であるのに、寂が大部分を支配したこの日本間の中では、まるで晒し者にされているかのように大きく響く。
「もっ……ぉ、許しっ……んっ……んっ」
 許しを乞い振り向いた雪代(ゆきよ)の顔は、泣き顔であるにもかかわらず豪く妖艶だ。性経験が希薄な娘とは感じにくい。
 長い黒髪が白い肌に貼りつき、赤く火照った頬で乱れる。
 涙で潤んだ瞳はこの仕打ちに対してのものか。それとも快感ゆえか。
 そんな彼女を、達彦(たつひこ)は容赦なく凌辱した。
 寝具もなければ床の間にも手をかけられていないこの部屋は、この武家屋敷の中で、数年前に部屋の主を喪った悲しい思い出のある場所だ。
 一糸まとわぬ雪代に床柱を抱かせ、達彦はその華奢な手首を己の寝間着の帯で強く縛りあげた。羞恥に震える彼女に心を置くことなく、背後から猛る劣情を叩きつけ続けたのである。
「許し……て……くださ……、おねが、い……、やぁぁっ!」
 先程から、何度この言葉を口にしただろう。しかしどんなに哀願しようと達彦の仕打ちは手酷くなるばかり。
「こうしてほしいのだろう? こうやって……、ぐちゃぐちゃにしてほしいから……、おまえは、この部屋に……」
「ちが……違い……ま。あぁ……ああっ! いやぁっ……」
「毎年同じだ。いつもおまえは俺をこの部屋に誘う。何度こうしてやってもまったく満足しないのだな……。なんて淫乱な女なんだ」
「違い……ますっ……、あっ、……ぁ、やぁぁっ……、達彦……義兄様っ……!」
 堪らなく出てしまった言葉に、雪代自身が刹那ハッと躊躇する。直後、達彦は乱れ落ちた前髪の下でカッと双眸を険しくした。
 怒りとも迷いともつかない揺らめきを眼(まなこ)に溜めて、彼はより一層激しい抜き挿しで雪代を貫いた。
「あぁぁっ……! ごめんなさい、ごめんなさい……許して……っ、ぁぁんっ!」
「そうやって弱い女のふりをして、……俺を誘ったのはおまえだろう!」
「義兄……様……あぁっ……、ダメっ……とける……」
 柱を抱く雪代の腕が、身体とともに下がっていく。彼女が脱力し膝をついても、達彦はその勢いを緩めることなく柔らかな雌肉を犯し続けた。
 お尻の双丘を鷲づかみにし、指を柔肉に喰いこませ強く握って広げると、その行為を恥ずかしく思ったのか雪代の下肢に力が入る。
 ピクリピクリと秘蕾がヒクつき、彼女を嬲る肉塊を引きちぎらんばかりに締めつけた。
「今夜は……、最後までつきあってもらうぞ……。逃げるなよ、雪代」
「義兄……さ……あぁっ……! ダメ……そんな、こと、……したら……っ、ぁぁ……」
「――そうしたら……、許してやる」
 なにかを言おうとした雪代の口が、開いたまま止まる。彼女は突き上げられる身体を柱に押しつけ、達彦を振り返った。
「雪代は……この行為の最後を……、知りません……」
「ともに達することだ。……いいな」
「それは……、あっ、ぁぁ……、罪なのでは、ないのですか……ぁあっ……!」
「罪ならすでに犯した」
 その最後に向かうように、達彦は縛りつけていた雪代の手首をほどく。彼女はすぐに身体を崩し、冷たい畳の上にうつ伏せになった。
 紅潮しているはずなのにいつまでも冷たい肌を押さえつけ、達彦はただひたすらに冷たい内部を擦りあげたのである。
「とける……とけてしまいます……、義兄様ぁ……あぁっ……!」
「融けてしまえ……。そのほうが幸せだ……。私も、おまえも……」
「幸せ……」
 ぴくりと、雪代が震える。
 肩越しに白い顔が振り向き、にこりと微笑んだ。
「雪代は……、義兄様と……幸せになれるのですね……」
 色を失った青白い頬に、氷のような光が伝う。その微笑みは、とても嬉しそうで……悲しそうだった。
「ああ、そうだ」
 蒼然とした部屋の中で続けられる情交。雪代の泣き声が響いていたそこに、襖を揺らす風の音が加わった。
「あぁっ……! ああぁんっ、義兄様……義兄様ぁ……イヤぁっ……あっ……!」
 雪代の声が、空気を揺らすような大きな嬌声になって響く。
 今まで何度身体を重ねても、こんな淫らに喜悦の声をあげる娘ではなかった。

 ――この五年、年に一度、この季節にだけ、彼女の部屋であったこの場所で情を交わす、義妹。

 しかし、もう、こんなことを続けてはいけないのだ。

「義兄様ぁ……もう、もぅ……、壊れてしまぅ……あああっ――――!!」
 雪代の限界と同時に、達彦は初めて彼女の蜜窟で熱い飛沫をあげる。
「雪代……」
 息を荒げ彼女の名を呼ぶと、その身を震わせながら雪代が振り向いた。
 なにも言わず浮かべる、儚い微笑み。
 ――その笑みが、徐々に透きとおり……

 光が弾けるように、雪代の姿が弾け消える――――

 突如、障子が大きく開き、外の風と雪が部屋中を駆け巡った。
 室内に雪が舞い、外に放り出されてしまったかのような錯覚を起こす。雪代を組み敷いていた四つん這いのまま、達彦は襲いくる悲哀に嗚咽を漏らし肩を揺らした。
「……すまない……、雪代……、すまない……」

 三つ年下の義妹。
 五年前、密かに想い合っていた二人は情を交わした。
 しかしそれは、道徳的に許されることではなく……
 特に達彦は、縁談がまとまったばかりだったのである。
 罪の意識と、これからの達彦との関係をはかなんだ雪代は、自らその命を絶った――――

 それからずっと……
「雪代……すまない……」
 彼女は、この季節、この雪が降る日に、達彦のもとへやってくる。
「すまない……、許してくれ……」
 ともに幸せになることを許されなかった、愛しい男のもとへ。

 彼女を忘れ、穏やかな日々を送ろうとする達彦に、「忘れないで」と伝えるように……
「雪代……」

 部屋で舞い踊る雪が、まるで雪代を形作るかのよう、達彦の前に積もり上がっていく。
 達彦はその雪を両手で掴み、己が罪を冷まさんと、愚かな切望の中で抱きしめた。

 雪は、しっとりと濡れ潤い、しかし未練のごとき雫を残すことなく、達彦の腕の中で融けていく。


 濡れ雪が、彼の前で吹き荒(すさ)ぶことは、もう、二度とない――――




                  END






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