「迷宮の天使*LS*」
迷宮の天使・企画SS集

●『濃蜜療養は露天風呂で』・前編(キリ拍手3000記念リクエスト)

 ←番外編・「桜舞う君へ・・・」 11 →第10部・前書き・あらすじ・登場人物

「ンゥ……ふっ、んんっあっ……」
 艶声が岩場にこだまする。
 ここはそんなに大きなスペースではないし、この場所から他人がいる所までは約百メートルは離れているのだ。誰にもその声を聞かれる事は無い。
 だが、やはりこんなにも静かな場所で自分の悦声が響くのは恥かしい。

「あっ……ンンっ、煌(あきら)ぁ……」
 紗月姫(さつき)は煌の上半身にしがみ付き、肩に唇を当てて声を我慢しようとするが、彼は紗月姫の身体をしっかりと抱き締めたまま、背中へ回した手で彼女の頭を傾け、肩から唇を外させた。
「あんっ……」
「駄目だよ……。感じている声を聞かせて」
「あ……もぅ……、いじわ……る、ね……」
「紗月姫が悦んでいるから、意地悪ではないだろう?」
 煌は、彼の腰に跨り、その熱い滾りを受け入れている紗月姫の腰を後ろから力を入れて押し付け、一度強く彼女を突き上げた。
「あっ、ああっ……んっ!」
 強い刺激に伸び上がり反りかえりそうになる背を押さえ、煌は紗月姫の素肌を彼の素肌に密着させたまま離さない。
 彼の膝から下で揺れている温かな湯は、二人が身動きする度に波立ち、小さく、そして時に大きく飛沫を上げた。

 煌が腰かけている場所は人工的に作られた岩場。“通路”を前提に作られているので起伏に富んだ場所は無いが、やはりこんな硬い所に紗月姫を座らせる訳にはいかないという彼の優しい心遣い(?) から、彼が座り紗月姫が大きく脚を広げて彼の腰を跨ぐ、という彼女にとっては初めて体験する、恥かしささえ感じる体位を取った。
 岩場、といっても海では無い。
 煌が足を入れているのは、水では無くお湯だ。
 人工的に作られた岩場の中に張られたお湯は『単純泉』
 “温泉”なのだ。

 『別府の奥座敷』との別名で名高い、“由布院温泉”
 辻川財閥令嬢である紗月姫と、お世話役であり婚約者でもある神藤煌は、紗月姫の高校が夏休みに入った事を利用し、二人で由布院へやって来た。
 温泉旅行などと、十二歳年上の煌はともかく、まだ十八歳の紗月姫には少々落ち着き過ぎたセレクトであるような感じも受けるが、これには理由があるのだ。

 六月に大きな事故に遭い、そこから回復した煌。
 温泉へ二人でやって来たのは、彼の療養の為なのだ。
 由布院には、母親や伯母が気に入っていて贔屓にしている宿がある。俗に言う“隠れ宿”という物で、貸別荘風の小さな一軒家だ。管理人や使いの者は約百メートルほど離れた母屋に居て、食事の用意やこちらが呼んだ時以外は顔を出す事は無い。
 大きな日本間と寝室があるだけだが、二人で過ごすには大きすぎるくらいだ。さしずめ和風のスイートルームといったところだろう。
 日本間の正面には、小さくとも見事な日本庭園があり、目を楽しませ和ませてくれる。
 そして寝室側からは、これもまた二人で入るには大きすぎるほどの露天風呂が作られているのだ。
 もちろん室内にも檜(ひのき)で作られた温泉質の浴室があり、シャワーなども完備されている。しかしこの設備で露天風呂に入らない者はまずいないだろう。

 今まで、辻川財閥の跡取りとして紗月姫が国内外を移動する時、もちろん煌も“お世話役の神藤”として一緒だった。
 家族で旅行をする、などという滅多に無い機会の時も、“神藤”が居なければ紗月姫の機嫌が悪くなる事を知っている両親は、必ず彼を同行させた。
 だが、親が一緒であろうと無かろうと、二人が婚約者同士になれたのはつい最近。それまでは完全な“お嬢様とお世話役”の関係だったのだ。もちろん部屋も別々だった。
 しかし今回は違う。
 「婚約者である煌の療養の為」という立派な理由の元に、二人きりで来ている。そうなれば部屋だって一緒だ。
 二人きりという事実が嬉しいやら気恥かしいやら、紗月姫はそれだけで気持ちが高まってしまい、部屋へ入った時からまるで仔猫か何かの様に煌に寄り添ったまま離れないのだ。
 もちろん煌は、そんな離れたがらない紗月姫が可愛くて堪らない。
 二人は夕食までの時間を、庭園を眺め花を愛でながら、添水(そうず)の音を耳に、寄り添い幸せを噛み締めて過ごしたのだ。
 しかし、夕食も終わり、庭園の燈篭がほわりと庭を浮かび上がらせる頃、紗月姫が恥ずかしそうに言った。
「……煌……。一緒に、露天風呂、入る?」
 頬を染め恥かしそうな笑顔で遠慮気味に言われ、心が動かないはずも無い。というよりも、紗月姫が誘わなければ煌の方から彼女を抱き抱えて露天風呂へ連れて行ったに違いない。

 高い塀で囲まれた敷地。
 そこはまさに、二人だけの世界だ。
 ぼかしのかかった月が、燈籠の様に夜空を照らす夏の夜。
 露天風呂に照明は特に無く、ぼんやりとした月と寝室から零れてくる灯りだけが頼りだ。だが、それで充分。二人がお互いを見詰める為には充分な明るさではないか。

 最初は普通にお湯へ浸かったものの、婚約したばかりで幸せいっぱいの二人が、それだけで済む訳も無い。
「あっ、煌っ……」
 煌が紗月姫を後ろから抱きすくめ、月明りの下、長く甘い唇付けが始まったのだ。







 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 迷宮の天使*LS*
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋桜~さくら・シリーズ
総もくじ 3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 溺愛マリッジ
もくじ  3kaku_s_L.png 恋のエトセトラ
総もくじ  3kaku_s_L.png 迷宮の天使*LS*
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋桜~さくら・シリーズ
総もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【番外編・「桜舞う君へ・・・」 11】へ  【第10部・前書き・あらすじ・登場人物】へ

~ Comment ~

こんなところに私が来たってことは……(笑)

いっ…いきなり濃密ですね……。さすがツイッターで鼻血モノと話題の作品(笑)。
(--;)
なんか歳の差カップルってことで私の読んでる「恋桜」の二人を連想しました。
普段読んでない作品でもこーゆーSSものは読んでま~す。
(チョット!早くするザマス!)
まーまー抑えて抑えて……では校正担当の登場です(笑)!!


今日2回目の登場のこうせイルカザマス!!
\( ̄^ ̄)/
終わり頃まで間違いが無いのでワタクシの出番はないかと思ったザマスが(カボチャもわざわざコメントしないザマショーし)、最後数行のところでミスがあったザマス!!
◎「幸せいっぱいに二人が」
→「幸せいっぱいの二人が」
たまキツネ、タイピングミスザマスね!!
もっと精進するザマス!!
では、さらばザマス!!


ミスを見つけたイルカが催促したんで連れてきました(笑)。
(別に私が来たくなかった訳じゃありませんから(゜□゜;)
では、また。
m(__)m

Re: こんなところに私が来たってことは……(笑)(どてカボチャさんへお返事です4/29)


 どてカボチャさん、いつもイルカさんの付き添いお疲れ様ですっ。( *´艸`)フフフ

 ここまで来て頂けるとはっっ。
 気を抜けませんなぁ。(←抜いてたんかい!)
 でも嬉しいですねぇ……。ありがとうございます~~~。^^

 「恋桜」 の二人は10歳差なんですが、こっちのカップルは12歳差なんですよ。(*´pq`)クスッ
 ちょっと上手ですね……。でも紗月姫ちゃんの初体験は18歳。(笑)


 ううむ。
 見付けられてしまったかぁ……。
 よし、後編、がんばる!!(ほんとか??)

 ではでは、有難うございました!

 (^-^)ノ”
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【番外編・「桜舞う君へ・・・」 11】へ
  • 【第10部・前書き・あらすじ・登場人物】へ